『アネモネ探偵団1 香港式ミルクティーの謎』近藤史恵(角川つばさ文庫) 近藤史恵による児童ミステリ。「つばさ文庫」というのは少女向けレーベルのようです。 学長一族の兄弟げんかのせいでお嬢様学校と男子校に分断された私立中学校。仲良し三人組の女優…
『封じられた街(上・下)』沢村鐵(ポプラ文庫ピュアフル) ぼうっとしていて放っておけないけれど、マモルくんは間違いなく絵の天才だった。落ち葉の模様で彩られた動物殺しに興味を持つのはそのせいだろうか。「すっごい絵だった」マモルくんは落ち葉の形…
『おんなのしろいあし 怪談えほん』岩井志麻子・寺門孝之/東雅夫編(岩崎書店) オバケがでると噂の学校の倉庫。ぼくはこわくない。だから一人で入ってやった。倉庫には、おんなのしろいあしが立っていた……。 やっぱりこの本も怖くなる前から絵が怖いです。…
『かがみのなか 怪談えほん』恩田陸・樋口佳絵/東雅夫編(岩崎書店) 怪談絵本シリーズ第二期の第一回配本。 怪異が始まる前から絵がすでに怖いです。わたしは絵本ファンではなく怪談ファンなので、つい文章や小説家の名前の方から入ってしまいますが、これ…
同じ別冊太陽『こわい絵本』の姉妹編で、「奇」「異」「怪」「妖」の各「あやしい」の四部構成になっています。「奇しい」『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』及川賢治・竹内繭子は、こぼした牛乳が海となって広がってゆくという発想と…
『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』荻原規子(角川文庫) イマドキの子ではない、絶滅危惧種の女の子、でもいうような意味であるらしく、三つ編みに眼鏡の引っ込み思案な冴えない神社の娘・泉水子が主人公。 それがあるとき、学校中のパソコン…
岩崎書店と日本SF作家クラブが組んだジュヴナイルシリーズの一作。 地下道ならぬ洞窟好きの少年少女に、「『へむ』へむさん」なる漫画も登場する、ちょっとしたファンサービスも。 妙に細かい蘊蓄を除けば、子どもたちが世界を救うという変哲のないジュヴ…
いろいろな切り口から児童文学が紹介されています。ファッションやお菓子といった女性誌らしい切り口もあれば、「子どもの物語が始まるベッドいろいろ」では、子ども部屋とベッドの場面を、当時の社会状況家庭状況と結びつけるという鋭い切り口もありました…
『ビビを見た!』大海赫=作・え(復刊ドットコム) トラウマという言葉とともに紹介されていたとあっては、ダークファンタジー好きとしては見逃せません。 目の見えない少年「ホタル」はある日突然「よし おまえののぞみを かなえてやろう」という何者かの…
図書館の日常ミステリ、ということで、森谷明子『れんげ野原のまんなかで』のようなものを期待して手に取りますが、北村薫が『ミステリ十二か月』で取り上げていて、『北村薫のミステリー館』に第一話「わたしの本」を採録していたことはまったく覚えていま…
『海へ出るつもりじゃなかった アーサー・ランサム全集7』神宮輝夫訳(岩波書店) 『We Didn't Mean To Go To Sea』Arthur Ransom,1937年。 航海から帰ってくるおとうさんに会いに、ハリッジにやって来たウォーカー一家。そこで若者ジム・ブラディングと知…
「“一生忘れられない”名作童話」という惹句にひかれて購入。挿し絵は「ほのぼの君」の作者です。 ビスクというのはビールににているけれどアルコールではない。リンタがらいむぎばたけで出会った金色のライオンは、ホップを入れたビスクを一杯ほしがった。博…
『アンデルセン童話集 上』ハリー・クラーク絵/荒俣宏訳(文春文庫) ハリー・クラークの挿絵目当てで購入。すべて白黒なんですね。多少値段が高くなってもカラーはカラーのまま掲載してほしかった。 「ほくち箱」 ――魔法使いからほくち箱を手に入れた兵隊…
『南から来た男 ホラー短編集2』金原瑞人編訳(岩波少年文庫)「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」エドガー・アラン・ポー原作/金原瑞人翻案(The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket,Edgar Allan Poe/Kanehara Mizuhito,…
『カイウスはばかだ』ヘンリー・ウィンターフェルト/関楠生訳(岩波少年文庫) 『Caius ist ein Dummkopf』Henry Winterfeld。 カイウスと喧嘩したルーフスは、書字板に「カイウスはばかだ」と落書きしたことから、クサンチップス先生から退学を申し渡され…
松尾由美によるジュヴナイル作品。 改題前の『フリッツと満月の夜』というタイトルの方が好きだったのですが、フリッツの名前がなかなか出てこないので仕方がない。単行本版に加えて書き下ろし短篇つき。 メインとなるのは二年前に地元の名家のおばあさんが…
『八月の暑さのなかで ホラー短編集』金原瑞人編訳(岩波少年文庫) 金原瑞人による編集ももちろんのこと、外国の児童文学の挿絵を模したと思しき佐竹美保の扉絵も素晴らしい。 「こまっちゃった」エドガー・アラン・ポー原作/金原瑞人翻案(The Scythe of …
『黄金蝶ひとり』太田忠司/絵:網中いづる(講談社ミステリーランド) 両親が五度目の新婚旅行に出かけているあいだ、洸はおじいちゃんの家に預けられることになった。生きるための「万能学」を標榜し、村人から一目置かれているおじいちゃんは、村の開発の…
『虹果て村の秘密』有栖川有栖/絵:矢吹申彦(講談社ミステリーランド) ロスナー『虹の果てには』の次に本書『虹果て村』を読むことになったのはまったくの偶然。積ん読だったミステリーランドを片づけようとしたときに、いちばん古い未読作品がたまたまこ…
『野球の国のアリス』北村薫/絵:謡口早苗(講談社ミステリーランド) まえがきが挑発的(とよりは啓蒙的?)です。 初めのうちは『アリス』文体の模倣は、著者の器用なところがマイナスになっちゃったかなと思いましたが、読んでいるうちに慣れてきて気に…
無実の罪で送られた児童キャンプで、人格形成のためひたすら穴を掘り続けさせられる――という設定こそとっぴなものの、アクの強いクセ者小説ではなく、これは王道の児童文学でした。 〈脇の下〉〈X線〉〈ジグザグ〉〈ゼロ〉といった個性的なあだ名(?)を持…
『ステーションの奥の奥』山口雅也/絵:磯良一(講談社ミステリーランド) 山口雅也というと、創元推理文庫のおじさんマークをパンク・マークにあしらった文庫版『キッド・ピストルズの慢心』を思い出した(というかあれは山口雅也ではなく装丁の京極夏彦wi…
子ども向けの現代ミステリー作品集。泡坂作品から傑作集を編むとすれば、誰が選んでも亜愛一郎シリーズから一篇採るのは間違いのないところなんだけれど、編者(中村哲雄編集と書いてある)は(おそらくは)敢えて亜シリーズを省いている。 結果的に、いかに…
佐藤亜紀氏の日記に書かれていたので買ってみる。 「ビビビ」という擬音もそのままの漫画の一コマを使用したカバー裏デザイン。帯に宮崎駿氏と版権保持者のコメントがあるだけで、カバーや帯にあらすじはいっさいなし。いっそいさぎよい。下手にあらすじが書…
『銃とチョコレート』乙一/絵:平田秀一(講談社ミステリーランド) そういえば、子どものころ夢中で読んだ本は外国のものばかりだったかもしれない。ケストナー、アーサー・ランサム、ヴェルヌ、ホームズ、ルパン、トム・ソーヤー……。山中恒、あまんきみこ…
レオン・ザイセルはニューヨークのクラシック学院に通う四年生の男の子だ。父親を亡くし、母の勤め先の一つ星ホテル・トライモア・タワーで暮らしている。四年生になって新しい担任がやってきた。ハグマイヤー先生。真っ黒でヘルメットみたいな髪に、黒いマ…
『アリス』の新訳、というよりもむしろ、トーベ・ヤンソンが描いた『アリス』がついに刊行されました。“わざわざ新訳”というプレッシャーがないせいでしょう、かなり自由気ままに訳されてます。「寂しげで昏い」「頼りなくて儚げ」というヤンソン・アリスの…
『びっくり館の殺人』綾辻行人/絵:七戸優(ミステリーランド) クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、「リリカの部屋」で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に! あれから10年以上がすぎた今もなお、事件の犯人はつかまっていない…
寂れた炭鉱町に越してきた僕は、風変わりな少年に誘われ、死と言う名のゲームに加わる。最初はただのゲームだったが、冬が訪れるころ何かが変わった…。死に憑かれた子どもたちの、冥界めぐりの旅。行きつく先にあるのは? 前作『肩胛骨は翼のなごり』には、…
フランキー・ピアソン、十五歳。ちょうど一年前、あたしの心に、フリーキー・グリーンアイが入りこんできた。どんなときでも、イカれた緑の目《フリーキー・グリーンアイ》が助けてくれる。パパは元フットボール選手でスーパースターだ。兄妹には十歳になる…