『かがみのなか 怪談えほん』恩田陸・樋口佳絵/東雅夫編(岩崎書店) 怪談絵本シリーズ第二期の第一回配本。 怪異が始まる前から絵がすでに怖いです。わたしは絵本ファンではなく怪談ファンなので、つい文章や小説家の名前の方から入ってしまいますが、これ…
同じ別冊太陽『こわい絵本』の姉妹編で、「奇」「異」「怪」「妖」の各「あやしい」の四部構成になっています。「奇しい」『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』及川賢治・竹内繭子は、こぼした牛乳が海となって広がってゆくという発想と…
『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』荻原規子(角川文庫) イマドキの子ではない、絶滅危惧種の女の子、でもいうような意味であるらしく、三つ編みに眼鏡の引っ込み思案な冴えない神社の娘・泉水子が主人公。 それがあるとき、学校中のパソコン…
岩崎書店と日本SF作家クラブが組んだジュヴナイルシリーズの一作。 地下道ならぬ洞窟好きの少年少女に、「『へむ』へむさん」なる漫画も登場する、ちょっとしたファンサービスも。 妙に細かい蘊蓄を除けば、子どもたちが世界を救うという変哲のないジュヴ…
いろいろな切り口から児童文学が紹介されています。ファッションやお菓子といった女性誌らしい切り口もあれば、「子どもの物語が始まるベッドいろいろ」では、子ども部屋とベッドの場面を、当時の社会状況家庭状況と結びつけるという鋭い切り口もありました…
トラウマという言葉とともに紹介されていたとあっては、ダークファンタジー好きとしては見逃せません。 目の見えない少年「ホタル」はある日突然「よし おまえののぞみを かなえてやろう」という何者かの声を聞き、七時間だけ目が見えるようになりますが、ホ…
『We Didn't Mean To Go To Sea』Arthur Ransom,1937年。 航海から帰ってくるおとうさんに会いに、ハリッジにやって来たウォーカー一家。そこで若者ジム・ブラディングと知り合い、ウォーカー兄弟たちはジムの船に泊まって川上りをすることに。だがジムがガ…
松尾由美によるジュヴナイル作品。 改題前の『フリッツと満月の夜』というタイトルの方が好きだったのですが、フリッツの名前がなかなか出てこないので仕方がない。単行本版に加えて書き下ろし短篇つき。 メインとなるのは二年前に地元の名家のおばあさんが…
無実の罪で送られた児童キャンプで、人格形成のためひたすら穴を掘り続けさせられる――という設定こそとっぴなものの、アクの強いクセ者小説ではなく、これは王道の児童文学でした。 〈脇の下〉〈X線〉〈ジグザグ〉〈ゼロ〉といった個性的なあだ名(?)を持…
子ども向けの現代ミステリー作品集。泡坂作品から傑作集を編むとすれば、誰が選んでも亜愛一郎シリーズから一篇採るのは間違いのないところなんだけれど、編者(中村哲雄編集と書いてある)は(おそらくは)敢えて亜シリーズを省いている。 結果的に、いかに…
佐藤亜紀氏の日記に書かれていたので買ってみる。 「ビビビ」という擬音もそのままの漫画の一コマを使用したカバー裏デザイン。帯に宮崎駿氏と版権保持者のコメントがあるだけで、カバーや帯にあらすじはいっさいなし。いっそいさぎよい。下手にあらすじが書…
レオン・ザイセルはニューヨークのクラシック学院に通う四年生の男の子だ。父親を亡くし、母の勤め先の一つ星ホテル・トライモア・タワーで暮らしている。四年生になって新しい担任がやってきた。ハグマイヤー先生。真っ黒でヘルメットみたいな髪に、黒いマ…
『アリス』の新訳、というよりもむしろ、トーベ・ヤンソンが描いた『アリス』がついに刊行されました。“わざわざ新訳”というプレッシャーがないせいでしょう、かなり自由気ままに訳されてます。「寂しげで昏い」「頼りなくて儚げ」というヤンソン・アリスの…
寂れた炭鉱町に越してきた僕は、風変わりな少年に誘われ、死と言う名のゲームに加わる。最初はただのゲームだったが、冬が訪れるころ何かが変わった…。死に憑かれた子どもたちの、冥界めぐりの旅。行きつく先にあるのは? 前作『肩胛骨は翼のなごり』には、…
フランキー・ピアソン、十五歳。ちょうど一年前、あたしの心に、フリーキー・グリーンアイが入りこんできた。どんなときでも、イカれた緑の目《フリーキー・グリーンアイ》が助けてくれる。パパは元フットボール選手でスーパースターだ。兄妹には十歳になる…
晶文社の海外文学シリーズ。ということで期待したのに期待はずれ。 その名のとおり大泥棒と結婚した話なんだけれど、たとえば泥棒にさらわれた純粋な娘が機知によって窮地を乗り切り真心によって泥棒を改心させる、みたいな話では全然ない。O・ヘンリーの「…