『幻想と怪奇』6【夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館】(新紀元社)

『幻想と怪奇』6【夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館】(新紀元社)〈幻想と怪奇〉アートギャラリー ヨハン・ハインリヒ・フュースリー」 『夢魔』のヴァリアントなど。 「A Map of Nowhere 06:「詩と神々」のパルナッソス山」藤原ヨウコウ「詩と神々」H・…

『地球最後の男』リチャード・マシスン/田中小実昌訳(ハヤカワ文庫NV)★★★★☆

『地球最後の男』リチャード・マシスン/田中小実昌訳(ハヤカワ文庫NV) 『I Am Legend』Richard Matheson,1954年。 自分以外の全人類が吸血鬼と化してしまった世界で、絶望と戦いに明け暮れる男の日々を描いた古典的名作です。今は数年前の映画化に合わせ…

『忘れられた花園』(下)ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫)★★★★☆

『忘れられた花園』(下)ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Forgotten Garden』Kate Morton,2008年。 デュ・モーリアの名前が出されているのは、せいぜいのところゴシック・ロマンス風なところがあるからだと思っていましたが、下巻はし…

『忘れられた花園』(上)ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫)★★★★★

『忘れられた花園』(上)ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Forgotten Garden』Kate Morton,2008年。 オーストラリア、ブリスベン。二十一歳になり結婚を間近に控えたネルは、父親のヒューから衝撃的な事実を知らされます。白いトランク…

『宰相の象の物語』イヴォ・アンドリッチ/栗原成郎訳(松籟社 東欧の想像力14)★★★★☆

『宰相の象の物語』イヴォ・アンドリッチ/栗原成郎訳(松籟社 東欧の想像力14) ボスニア出身のノーベル賞作家による中短篇集。イスラム圏内のボスニアでカトリック教徒でありドイツ大使としてナチス政権を目の当たりにしたという著者の来歴や、あるいはボ…

『紫の雲』M・P・シール/南條竹則訳(アトリエサード/書苑新社 ナイトランド叢書)★★★★★

『紫の雲』M・P・シール/南條竹則訳(アトリエサード/書苑新社 ナイトランド叢書) 『The Purple Cloud』M. P. Shiel,1901年。 シールにしては恐ろしいほどに読みやすい。訳者の苦労がしのばれます。 死んだ友人からの手紙には、霊媒が幻視したという今…

『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる(新潮文庫)★★★★☆

『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる(新潮文庫) 第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 何だかわからないけどすごい。のっけからまったく付いていけません(^^; 鉄塔の説明が事細かに怒濤のごとく書かれてありますが、まったくわかりません。。。 女性型鉄…

『アンメット』1、「かるびのベランダ」オガツカヅオ『ネムキプラス』2021年5月号

『アンメット』1、「かるびのベランダ」オガツカヅオ『ネムキプラス』2021年5月号『アンメット―ある脳外科医の日記―』(1)子鹿ゆずる原作/大槻閑人漫画(講談社モーニングKC) 『ハコヅメ』『スインギンドラゴンタイガーブギ』と同じく『週刊モーニング…

『黒衣の女 ある亡霊の物語』スーザン・ヒル/河野一郎訳(ハヤカワ文庫NV)★★★★☆

『黒衣の女 ある亡霊の物語』スーザン・ヒル/河野一郎訳(ハヤカワ文庫NV) 『The Woman In Black: A Ghost Story』Susan Hill,1983年。 霧のロンドンを離れ、ドラブロウ夫人の遺産整理に訪れるキップス弁護士。列車に乗り合わせた地元の者によれば、町の…

『怪異十三』三津田信三編(原書房)★★★★☆

『怪異十三』三津田信三編(原書房) 東西の怪奇小説十三篇に編者自身の単行本未収録作を加えたもの。四つの採録基準(一、編者自身がぞっとしたもの。二、有名作以外。三、入手困難作。四、国内7&海外6&編者書き下ろし)を満たせずに、著名作も含まれ編…

『幻想と怪奇』5【アメリカン・ゴシック E・A・ポーをめぐる二百年】(新紀元社)

「〈幻想と怪奇〉アートギャラリー アーサー・ラッカム」「A Map of Nowhere 05:ダーレス「深夜の邂逅」のプロヴィデンス」藤原ヨウコウ「深夜の邂逅」オーガスト・ダーレス/荒俣宏訳「アメリカン・ゴシックの瞬間」巽孝之 「夢遊病――ある断章」チャールズ…

『厨師、怪しい鍋と旅をする』勝山海百合(東京創元社)★★★☆☆

一応のところは斉鎌《せい・れん》という料理人(厨師)が、李桃源《り・とうげん》という男から腹が空くと自分から餌を食べてしまうという鍋を預かり、次の職場を探しに行くまでの旅路で遭遇したあれこれの顛末――というおおまかな流れが採られています。 と…

『名もなき王国』倉数茂(ポプラ社)★★★★☆

倉数茂の第四作にして最新作は、著者を思わせる語り手が幻の作家・沢渡晶の甥と出会い、晶の遺稿と甥の小説と語り手自身の作品をまとめたもの、という体裁が取られています。 語り手自身の来歴が著者とダブり、雑誌『牧神』や中井英夫の名が現れるなど、はじ…

『ぼぎわんが、来る』澤村伊智(角川ホラー文庫)★★★★★

ぼぎわんと呼ばれる化け物がやって来る――。本書を大きく貫いているのは、タイトル通りの物語です。ですがそこにさまざまな工夫が凝らされていました。 読み進めていくと、ある人物がサイコパス(と断言してしまいます)であることがわかるようになっています…

『ジャック・オブ・スペード』ジョイス・キャロル・オーツ/栩木玲子訳(河出書房新社)★★★★☆

『Jack of Spades』Joyce Carol Oates,2015年。 ジャック・オブ・スペードというのは、さほど売れない作家アンドリュー・J・ラッシュの別名義のペンネームです。隠された暴力性を披瀝したようなノワールな作風が特徴です。 さてラッシュの隠された暴力性が…

『歌人紫宮透の短くはるかな生涯』高原英理(立東舎 リットーミュージック)★★★☆☆

架空の歌人の代表作三十一首と生涯を振り返った評伝を丸ごと一冊作中作にした長篇小説です。脚註も入っていて本格的なのですが、短歌と評伝のあいだにつながりはほぼありません。著者がことさらに「歌の解釈自体とは別次元のことだが」等と強調するほどに虚…

『さらば、シェヘラザード』ドナルド・E・ウェストレイク/矢口誠訳(国書刊行会〈ドーキー・アーカイヴ〉)★★★☆☆

『Adios, Scheherazade』Donald E. Westlake,1970年。 スランプに陥ったポルノ作家が、とにかく文章を打とうとして妄想や悩みや雑感を書きつづるという、基本的にはおバカな話です。『さらば、オマ×コ野郎』というタイトルでは編集者の許可が下りないだろう…

『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』中村融編(創元推理文庫)★★★★☆

奇妙な味を中心としたアンソロジー第2団。『街角の書店』以上に「理屈では割り切れない余韻を残す」作品を重視したとのこと。 「麻酔」クリストファー・ファウラー/鴻巣友季子訳(On Edge,Christopher Fowler,1992)★★★☆☆ ――ナッツを噛んで歯が砕けてしま…

『鳥の巣』シャーリイ・ジャクスン/北川依子訳(国書刊行会 ドーキー・アーカイヴ)★★★★☆

『The Bird's Nest』Shirley Jackson,1954。 2016年に『日時計』『処刑人(絞首人)』と立て続けに未訳長篇が翻訳されたジャクスンの、これまた未訳だった長篇作品とあって読む前から否が応でも期待は高まりますが、期待に違わず一行目から面白い。 「博物…

『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』マイクル・ビショップ/小野田和子訳(国書刊行会 ドーキー・アーカイヴ)★★★★☆

『Who Made Stevie Crye? : An Novel of the American South』Michael Bishop,1984,2014。 作家の使っているタイプライターが勝手に動き始める……モダン・ホラーのパロディというだけあって、なるほど確かにどこかで見たことのあるような内容です。 エッセイ…

『幻想と怪奇』4【吸血鬼の系譜 スラヴの不死者から夜の貴族へ】(新紀元社)

このタイミングで吸血鬼をテーマにしたのは別に『鬼滅の刃』にあやかったわけではなく、たまたまのようです。「A Map of Nowhere 04:ネルダ「吸血鬼」のプリンキポ島」藤原ヨウコウ 河出文庫『東欧怪談集』に邦訳のあるヤン・ネルダ「吸血鬼」より。 「パル…

『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 呪』東雅夫編(汐文社)★★★★☆

第4巻はテーマも「呪」というだけあってか、カバーイラストも呪いそのまんまで挿絵もストレートに怖い絵になっています。 「笛塚」岡本綺堂(1925)★★★★☆ ――十一番目の男が語る。僕の国では昔から能狂言が盛んだった。武士のうちにも笛をふく者もあった。十…

『痛みかたみ妬み 小泉喜美子傑作短篇集』小泉喜美子(中公文庫)★★★☆☆

双葉社から出版されていた『痛みかたみ妬み』全篇に、『またたかない星』収録作から『殺さずにはいられない』には未収録の2篇と、『小説ジュニア』掲載の単行本未収録作2篇を加えた増補復刊短篇集とのこと(解説より)。 「痛み La Peine」(1978)★★★☆☆ ―…

『引き潮』ロバート・ルイス・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン/駒月雅子訳(国書刊行会)★★★★☆

『The Ebb-Tide』Robert Louis Stevenson&Lloyd Osbourne,1894年。 落ちぶれた三人組が人生の大逆転を狙って船ごと積荷の乗っ取りを企む物語です。 冒頭まず三人の落ちぶれぶりが描かれます。不健康にも祟られ、食べるものにも事欠いて、物乞いをしたり物…

『ほんとうの花を見せにきた』桜庭一樹(文春文庫)★★★★☆

3つの短篇――というよりは、各作品の結びつきが強いので、3章から成る連作長篇という方が適切でしょう。 一話目の「ちいさな焦げた顔」は、組織に家族を惨殺された少年・梗ちゃんが中国奥地に起源を持つ吸血鬼〈バンブー〉ムスタァに救われ、ムスタァの相棒…

『精霊たちの家』イサベル・アジェンデ/木村榮一訳(国書刊行会 文学の冒険)★★★★★

『La Casa de Los Espiritus』Isabel Allende,1982年。 語り自体が予言的だ、というのはあります。例えば第一章の冒頭でまず犬が来たことが書かれ、しかるのち「以後」「九年間」と将来のことが語られます。こうした語られ方が、あらかじめすべてが定められ…

『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』木犀あこ(角川ホラー文庫)★★☆☆☆

第24回日本ホラー小説大賞の優秀賞受賞作「幽霊のコンテクスト」と書き下ろし「逆さ霊の怪」を収録。 ホラーというよりは、怪異(都市伝説)を狩猟してゆくキャラクター小説です。怪異を渡り歩くのは、ゴーストハントではなく飽くまで取材のためです。取材の…

『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』黒史郎(角川ホラー文庫)★☆☆☆☆

存在しない幽霊を退治するのではなく、実際に害を及ぼしている怪談を撲滅する――こうしたあらすじとタイトルだけ見たなら、怪談を自然現象として解体したり科学的に解明したりする話だと思ってしまいますが……。 実際のところは違います。 幽霊は「幻覚」だそ…

『幻想と怪奇』3【平井呈一と西洋怪談の愉しみ】(新紀元社)

「夢と嵐の海 平井呈一訳に導かれて」佐野史郎「A Map of Nowhere 03:マッケン「眩しい光」のカルディ島」藤原ヨウコウ「平井呈一のマッケン」南條竹則 「消えた心臓」M・R・ジェイムズ/平井呈一訳(Lost Hearts,M. R. James,1904)★★★☆☆ ――スティーヴ…

『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 恋』東雅夫編/谷川千佳絵(汐文社)★★★☆☆

「幼い頃の記憶」泉鏡花(1912)★★★☆☆ ――五つくらいの時と思う。船に乗って、母の乳房を摘み摘みしていたように覚えている。そばに一人の美しい若い女のいたことを、私はふと見出した。今思ってみると、十七ぐらいであったと思う。いかにも色の白い、瓜実顔…


防犯カメラ