『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 夢』東雅夫・編/山科理絵・絵(汐文社)★★★★★

タイトル通り十代向けの文豪怪談アンソロジー。挿絵・総ルビ・註釈つき。「夢十夜」夏目漱石(1908)★★★★★ ――こんな夢を見た。あおむきに寝た女が、もう死にますという。「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って、そうして星の破片を墓標に置…

『処刑人』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Hangsaman』Shirley Jackso,1951年。 空想癖のある少女、新しい環境の洗礼、人に言えない過去、独善的な父親、憧れの教師……道具立ては王道の少女小説ですし、作品を覆っているある種の息苦しさはまさに少女時代特有のものだとも言えます。自分の世界に逃…

『幻想と怪奇』2【人狼伝説 変身と野性のフォークロア】(新紀元社)

表紙イラストは第1号に続きひらいたかこですが、普段の作風とは違い狼がリアルなので気づきませんでした。「A Map of Nowhere 02:「人狼」のハルツ山地」藤原ヨウコウ「人狼映画ポスター・ギャラリー」「人狼」野村芳夫「人狼(『人狼ヴァグナー』第十二章…

『J・G・バラード短編全集1 時の声』柳下毅一郎監修(東京創元社)★★★★☆

アメリカで刊行された短篇全集の邦訳版らしいです。「プリマ・ベラドンナ」「時間都市」「スターズのアトリエ5号」は創元SF文庫『時間都市』(→感想)の宇野利泰訳で読んでいました。 「序文」J・G・バラード「序文」マーティン・エイミス「プリマ・ベ…

『むずかしい年ごろ』アンナ・スタロビネツ/沼野恭子・北川和美訳(河出書房新社)★★★★★

『Переходный возраст』Анна Старобинец,2005/2011年。「むずかしい年ごろ」沼野恭子訳(Переходный возраст)★★★★★ ――いったいいつからだっただろう? 二年? 三年前? 最初のうちは息子がぼんやりするようになっただけだった。それから外に出るのを嫌がり…

『少年十字軍』マルセル・シュオッブ/多田智満子訳(国書刊行会『マルセル・シュオッブ全集』)★★★★☆

『少年十字軍』(La Croisade des enfants,1896) 時を同じうしてあらゆる地域の村々町々より、児どもらが、走りゆきたり。何処へ行くやと問はるれば、イエルサレムへ、とこたへぬ。今日なほ、かれらが何処へたどりつきしやつまびらかならず。かれら、出奔…

『ドン・キホーテの消息』樺山三英(幻戯書房)★★★★☆

樺山三英数年ぶりの作品の題材はドン・キホーテ。人捜しを依頼されたペット捜し専門の私立探偵が、消えた老人を捜す「探偵」パートと、みずからをドン・キホーテだと信じる老人が従者サンチョ・パンサとともに現代に繰り出す「騎士」パートから成ります。 樺…

『オットーと魔術師』山尾悠子(集英社文庫コバルト・シリーズ)★★★☆☆

作品集成未収録のジュヴナイル作品集です。 「オットーと魔術師」 ――ネコの仔が病気になって何も食べなくなってしまった。オットーはマリコさんに言われて魔術師のところにネコを診せに行った。 安易なオノマトペにひねりのないストーリーと、なるほど本来の…

『人形つくり』サーバン/館野浩美訳(国書刊行会 ドーキー・アーカイヴ)★★★☆☆

「リングストーンズ」(Ringstones,Sarban,1951)★★★★☆ ――ダフニから送られてきた小包には、異様な手記が入っていた。ラヴリン博士から家庭教師のような仕事を頼まれたダフニは、ヌアマンという男の子と、マルヴァンとイアンセという双子の女の子、カティ…

『虚構の男』L・P・デイヴィス/矢口誠訳(国書刊行会 ドーキー・アーカイヴ)★★★☆☆

『The Artificial Man』L. P. Davies,1965年。 本書は、まるで書けない作家の物語のように幕を開けます。 小説家のアランが初長篇のアイデアもタイトルも浮かばずにいたところ、友人のリーから「五十年後を舞台にした架空の伝記」というアイデアを示唆され…

『幻想と怪奇』1【ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會】

「新創刊の辞」紀田順一郎・荒俣宏「A Map of Nowhere 01:『吸血鬼ドラキュラ』のウィトビー」藤原ヨウコウ 『ナイトランド』とおんなじだと思ったら、編集が『ナイトランド』の牧原勝志氏なんですね、納得。 「ヴィクトリアン・インフィニティ」北原尚彦 「…

『柳花叢書 山海評判記/オシラ神の話』泉鏡花/柳田國男/東雅夫編(ちくま文庫)★★★★☆

交流のあった「柳」田國男と泉鏡「花」の作品から、互いに「所縁深き作品群」を収録したアンソロジーです。 『山海評判記』泉鏡花(1929)★★★★☆ ――能登の旅館に泊まった小説家の矢野誓は、按摩から「長太居るか」の昔話を聞く。山に住む若者・長太が、化け狸…

『奥の部屋』ロバート・エイクマン/今本渉編訳(ちくま文庫)★★★★★

国書刊行会〈魔法の本棚〉版に「何と冷たい小さな君の手よ」「スタア来臨」の二篇を加えた文庫版。 「学友」(The School Friend,1964)★★★★☆ ――学生時分の友人サリーは大学に進み、私たちは疎遠になりましたが、四十一の年、私は両親の元へ出戻りと相成り…

「擬曲」『モネルの書』(国書刊行会『マルセル・シュオッブ全集』より)★★★★☆

シュオッブ全集より「擬曲」『モネルの書』を読む。 「擬曲《ミーム》」大濱甫訳(Mimes,1893)★★★☆☆ ――「お前を鞭で打たせてやろう。お上が禁じているのに、どうして八目鰻を売っていたんだ?」「御禁制とは知りませんでした」「このあばずれ、裸にひんむ…

『南十字星共和国』ワレリイ・ブリューソフ/草鹿外吉訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚)★★★☆☆

『Земная ось』Валерий Яковлевич Брюсов,1911年。 「地下牢」(В подземной тюрьме,1901-1905) ――征服された軍司令官の娘はスルタンの大宰相になびこうとしなかったため、地下牢に入れられた。牢番に犯され、殴られたが、マルコという青年受刑者と恋に落…

『神の守り人 来訪編・帰還編』上橋菜穂子(新潮文庫)★★★☆☆

守り人シリーズ初めての前・後編です。 バルサがたまたま助けた少女が、体内に「神」を宿す血筋だったことから、刺客に追われることになります。何しろ多勢に無勢、本書のバルサは(特に後半は)押され気味で、これまでのような活躍を期待するとやや消化不良…

『やまびと えほん遠野物語』柳田國男原作/京極夏彦文/中川学絵(汐文社)★★★★☆

京極夏彦による遠野物語えほんシリーズですが、中川学のファンなので、そちら目当てで読みました。遠野物語の第三段と第七段が絵本化されています。 まずは第三段・山女の話です。文章には書かれていませんが、当然ながら猟犬も一緒なんだな、と気づかされま…

『図書館の魔女』3・4 高田大介(講談社文庫)★★★★★

禁書についての議論、戦争回避のための外交戦略、狙われるマツリカ、外交本番……いよいよ興に乗って第三巻は留まるところを知りません。 禁書についてのくだりでは知的好奇心を刺激され、この世界を形作る壮大な絵図を改めて実感しました。マツリカを狙う刺客…

『図書館の魔女』1・2 高田大介(講談社文庫)★★★★☆

鍛冶屋の少年キリヒトのところに、王城からの使いが現れ、「図書館の魔女」マツリカの許に仕えるようになる……これだけ聞けば、何も知らない無垢な少年が、広い世界を知り人と出会いかけがえのない経験をする、サクセスストーリーであり成長物語である――よう…

『ばけねこのおよめさん』大海赫(復刊ドットコム)★★★★☆

風に飛ばされた帽子は、ばけねこの頭の上に乗ってしまいました。帽子を返してほしければ、お嫁さんになれ、と脅すばけねこに、トコは「うまく化けたところを見せてくれたら」と答えました。 傑作『ビビをみた!』の著者による絵本です。ばけねことトコの愛ら…

『邪眼』ジョイス・キャロル・オーツ/栩木玲子訳(河出書房新社)★★★★☆

『Evil Eye: Four Novellas of Love Gone Wrong』Joyce Carol Oates,2013年。 「邪眼」(Evil Eye)★★★★★ ――それは最初の妻のものだ、と彼は言う。ナザールと言って、邪眼を払うお守りだ。彼女はその男の四番目の妻だった。結婚して数週間後、レセプション…

『闇の守り人』上橋菜穂子(新潮文庫)★★★★☆

故郷に帰ってきたバルサが、ジグロと自分が故郷を離れなくてはならなくなった原因と、ついに対峙します。 『ネムキ』で連載されている結布による漫画化を何回か読んでいましたが、ほぼ原作通りのようです。……というか、一回読んでいるはずなのに完全に忘れて…

『日時計』シャーリイ・ジャクスン/渡辺庸子訳(文遊社)★★★★☆

『The Sundial』Shirley Jackson,1958年。 ハロラン家の長男ライオネルが死んだ。これで一家の実権は現当主の妻オリアナが握ることになった。当主のリチャード・ハロランは足も萎え痴呆が始まっている。オリアナが殺したのだ、とライオネルの妻メリージェー…

『12人の蒐集家/ティーショップ』ゾラン・ジヴコヴィッチ/山田順子訳(東京創元社)★★★☆☆

『Twelve Collections and Teashop』Zoran Živković。2007年刊行の英訳本からの翻訳。掌篇連作『12人の蒐集家』に短篇「ティーショップ」を併録したものです。誰が最初にボルヘスになぞらえたのかわかりませんが、ボルヘスとは全然ちがう、ファンタジーらし…

『マルセル・シュオッブ全集』「黄金仮面の王」マルセル・シュオッブ(国書刊行会)

第一短篇集『二重の心』に続いて第二短篇集『黄金仮面の王』を読む。『黄金仮面の王』(Le Roi au masque d'or)「黄金仮面の王」多田智満子訳(Le Roi au masque d'or)★★★★☆ ――この都は仮面をつけた歴代の王が支配するようになって久しい。僧侶たちですら…

『聖ペテロの雪』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(国書刊行会)★★★★★

『St. Petri-Schnee』Leo Perutz,1933年。 アムベルクは目覚めると病室のベッドの上だった。あの人は死ななかった。わたしが銃弾の前に立ちはだかったからだ。なのに医師や看護婦は、わたしは車にはねられて五週間前から入院していると嘘をつく……。父の知己…

「鉄のつめ」三橋一夫(盛林堂ミステリアス文庫『三橋一夫作品集成 第1巻 ジュニア小説篇』より)

「鉄のつめ」(1952~1953) ――手術で救った投手からもらったサインボールは、登の父親・井上博士の宝物だった。父親の講演旅行中に、小学校のみんなに自慢したくてこっそり持ち出したサインボールを、悪少年の立次に奪われてしまった。登は奪い返しにいくが…

『地球の中心までトンネルを掘る』ケヴィン・ウィルソン/芹沢恵訳(東京創元社 海外文学セレクション)★★★★☆

『Tunneling to the Center of the Earth』Kevin Wilson,2009年。 シャーリイ・ジャクスン賞&全米図書館協会アレックス賞受賞作。 「替え玉」(Grand Stand-In)★★★★☆ ――この仕事のコツは、自分こそがお祖母ちゃんだと常に思い込むことだ。「祖母募集しま…

『マルセル・シュオッブ全集』「二重の心」マルセル・シュオッブ(国書刊行会)

『Les Œvres completes de Marcel Schwob』 「栞」山尾悠子・西崎憲ほか。蔵書票付き。 まずは『二重の心』を読む。『二重の心』(Cœur double,1891)「I 二重の心」(I. Cœur double)「吸血鬼」大濱甫訳(Les Striges) ――限りある人の生のむなしさを、…

『くうきにんげん』綾辻行人・文/牧野千穂・絵/東雅夫・編(岩崎書店 かいだん絵本8)★★★☆☆

こうした作品に〈仕掛け〉という言葉を使うのは適切ではないとは思うのですが、著者が著者だけに〈仕掛け〉と呼びたくなる造りがほどこされています。けれどその〈仕掛け〉は、「いるんだよ。」「いるんだよ。」、「ひつようなんだ。」「ひつようなんだ。」…


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