『12人の蒐集家/ティーショップ』ゾラン・ジヴコヴィッチ/山田順子訳(東京創元社)★★★☆☆

『Twelve Collections and Teashop』Zoran Živković。2007年刊行の英訳本からの翻訳。掌篇連作『12人の蒐集家』に短篇「ティーショップ」を併録したものです。誰が最初にボルヘスになぞらえたのかわかりませんが、ボルヘスとは全然ちがう、ファンタジーらし…

『マルセル・シュオッブ全集』「黄金仮面の王」マルセル・シュオッブ(国書刊行会)

第一短篇集『二重の心』に続いて第二短篇集『黄金仮面の王』を読む。『黄金仮面の王』(Le Roi au masque d'or)「黄金仮面の王」多田智満子訳(Le Roi au masque d'or)★★★★☆ ――この都は仮面をつけた歴代の王が支配するようになって久しい。僧侶たちですら…

『聖ペテロの雪』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(国書刊行会)★★★★★

『St. Petri-Schnee』Leo Perutz,1933年。 アムベルクは目覚めると病室のベッドの上だった。あの人は死ななかった。わたしが銃弾の前に立ちはだかったからだ。なのに医師や看護婦は、わたしは車にはねられて五週間前から入院していると嘘をつく……。父の知己…

「鉄のつめ」三橋一夫(盛林堂ミステリアス文庫『三橋一夫作品集成 第1巻 ジュニア小説篇』より)

「鉄のつめ」(1952~1953) ――手術で救った投手からもらったサインボールは、登の父親・井上博士の宝物だった。父親の講演旅行中に、小学校のみんなに自慢したくてこっそり持ち出したサインボールを、悪少年の立次に奪われてしまった。登は奪い返しにいくが…

『地球の中心までトンネルを掘る』ケヴィン・ウィルソン/芹沢恵訳(東京創元社 海外文学セレクション)★★★★☆

『Tunneling to the Center of the Earth』Kevin Wilson,2009年。 シャーリイ・ジャクスン賞&全米図書館協会アレックス賞受賞作。 「替え玉」(Grand Stand-In)★★★★☆ ――この仕事のコツは、自分こそがお祖母ちゃんだと常に思い込むことだ。「祖母募集しま…

『マルセル・シュオッブ全集』「二重の心」マルセル・シュオッブ(国書刊行会)

『Les Œvres completes de Marcel Schwob』 「栞」山尾悠子・西崎憲ほか。蔵書票付き。 まずは『二重の心』を読む。『二重の心』(Cœur double,1891)「I 二重の心」(I. Cœur double)「吸血鬼」大濱甫訳(Les Striges) ――限りある人の生のむなしさを、…

『くうきにんげん』綾辻行人・文/牧野千穂・絵/東雅夫・編(岩崎書店 かいだん絵本8)★★★☆☆

こうした作品に〈仕掛け〉という言葉を使うのは適切ではないとは思うのですが、著者が著者だけに〈仕掛け〉と呼びたくなる造りがほどこされています。けれどその〈仕掛け〉は、「いるんだよ。」「いるんだよ。」、「ひつようなんだ。」「ひつようなんだ。」…

「明治文学はなぜ面白いのか?」高橋源一郎×坪内祐三×水原紫苑(『ダ・ヴィンチ』2000年11月号)

「明治文学はなぜ面白いのか?」高橋源一郎×坪内祐三×水原紫苑 ちょうど坪内祐三編による『明治の文学』全25巻が刊行された時期だったらしく、それが理由による鼎談のようです。一応のところ「明治に最も注目している(と思われる)3人に」と書かれていま…

『大きくなったら なにになる?』大海赫(復刊ドットコム)★★★★☆

『メキメキえんぴつ』収録の作品を、アニメDVD付きでシングルカット(?)したものです。 「大きくなったら、パパみたいな、りっぱなお医者さんになるんだ」――そんなこと、言わなければよかった。夏休みのある日、ぼくは遊び相手がいなかったので、校庭の…

『はこ 怪談えほん10』小野不由美作・nakaban絵・東雅夫編(岩崎書店)★★★★☆

このはこ、なんだっけ? あかない はこ。ふると、コソコソ、おとがする。あめの ふるひ、はこが あいてた。からっぽの はこ。なかみは どこに いったのかな? 箱のなかにモンスターがいる――のかどうか、すらわかりません。あるいは箱自体が怪異なのかもしれ…

『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』ジュディ・バドニッツ/岸本佐知子訳(文藝春秋)★★★★☆

『Nice Big American Baby』Judy Budnitz,2005年。 ジュディ・バドニッツの第三作にして最新作品集。「わたしたちの来たところ」(Where We Come From)★★★★☆ ――七人の息子をもつ女が望まぬ娘を生んだ。それでも愛そうとして「プレシャス(たからもの)」と…

『スウェーデンの騎士』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(国書刊行会)★★★★★

『Der schwedische Reiter』Leo Perutz,1936年。 老婦人が経験した少女時代の不思議な思い出。逃亡中の泥坊と脱走中の兵の前に現れる、死者としか思えない粉屋。――幻想と怪奇に彩られて幕を開けた物語は、けれどすぐに、盗っ人と貴族の人物入れ替わりという…

『朱日記』泉鏡花/中川学(国書刊行会)★★★★★

中川学による泉鏡花ビジュアル化の新作です。 さほど有名ではない原作ですが、読んでみれば原作自体もまぎれもない傑作でした。 怪しい夢を見た雑所先生が小使の源助に内容を伝える、「昨日な、……昨夜とは言わん。」という言葉。夜に見た夢ではなく白昼夢で…

『変愛小説集 日本作家編』岸本佐知子編(講談社)★★★★☆

変愛小説集日本編――ですが、既存作品のアンソロジーではなく、書き下ろしなんですね……。文庫版には木下古栗の作品が収録されていません。 「形見」川上弘美 ★★★★★ ――夫は今までに三回結婚している。わたしは二回。今までゆうに五十人は子供を育てたろうか。…

『アンチキリストの誕生』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(エディション・プヒプヒ 〈ビブリオテカ・プヒプヒ〉第1巻)★★★★☆

『Die Geburt des Antichrist』Leo Perutz,1921年。 靴直しのフィリッポは元殺人犯でした。ある夜、夢でヨハネのお告げを聞きます。生まれた子どもはアンチキリストだ。人殺しと脱走した尼僧のあいだに生まれた者は、戦争と擾乱をもたらすであろう。靴直し…

『船長ブラスバオンドの改宗』バアナアド・ショオ/松村みね子訳(盛林堂ミステリアス文庫)

『Captain Brassbound's conversion』George Bernard Shaw,1899年。 バーナード・ショーによる戯曲。もちろんショー自身も著名な劇作家なのですが、本書が2014年になって復刊されたのは、翻訳者が松村みね子(片山廣子)であるという点に負うのでしょう。か…

『最初の舞踏会 ホラー短編集3』平岡敦編訳(岩波少年文庫)★★★☆☆

岩波少年文庫のホラー・アンソロジー、フランス篇。「青ひげ」シャルル・ペロー(La Barbe bleue,Charles Perrault,1697)★★★☆☆ ――昔々あるところに、大金持ちの男がいた。男のひげは不気味な青色をしていたため、女たちは逃げ出さずにいられなかった。そ…

『タイムマシンの旅』エーゴン・フリーデル/垂野創一郎訳(エディション・プヒプヒ 〈ビブリオテカ・プヒプヒ〉第5巻)★★★★☆

『Die Rreise mit der Zeitmashine』Egon Friedell,1946年。 ウェルズの「タイムマシン」後日譚です。 未来から戻り、過去に旅立ったまま戻って来なかったタイムトラベラーは、その後どうなったのか――? そのことが気になった語り手のエーゴン・フリーデル…

『伯林白昼夢』フリードリッヒ・フレクサ/垂野創一郎訳(エディション・プヒプヒ 〈ビブリオテカ・プヒプヒ〉第3巻)★★★☆☆

「Berliner Reiseerlebnis」Friedrich Freksa,1919年。 訳者後記によれば、江戸川乱歩との往復書簡のなかで小酒井不木が「白昼夢」(1925)に関連して言及している『プラシュナの秘密』(1920)の原型短篇です。なるほどそばかすや柔毛のあるマネキンは、乱…

『古書収集家』グスタボ・ファベロン=パトリアウ/高野雅司訳(水声社フィクションの楽しみ)★★★☆☆

『El Anticuario』Gustavo Faverón Patriau,2010年。 入院中の友人ダニエルが犯した(と称する)フリアナ殺しの謎を、友人で語り手でもあるグスタボがダニエルとの対話や古書会メンバーへの聞き込みを通して、真相に迫る(気があるんだかないんだか……)。 …

『怪奇文学大山脈III 西洋近代名作選【諸雑誌氾濫篇】』荒俣宏編(東京創元社)★★★☆☆

「第三巻まえがき」荒俣宏 ――今は忘れられた「愚作」も、当時は「時流に迎合した成功作」だった場合があるのだ。たとえば一〇〇年前には、そうした発掘で陽の目を見たのがレ・ファニュである。レ・ファニュほどの宝はもう望めないかもしれないが、まずは掘り…

『ジュリアとバズーカ』アンナ・カヴァン/千葉薫訳(文遊社)★★★★☆

『Julia and the Bazooka』Anna Kavan,1970年。「以前の住所」(The Old Address)★★★★☆ ――退院の荷物をまとめていると、シスターが入って来る。「患者所有物」と書いた封筒をわたしに差し出す。「お返ししなくちゃならない決まりなの」封筒の上から、慣れ…

『魔法はつづく 短篇集』オガツカヅオ(リイドカフェコミックス)★★★★★

オガツカヅオ待望の短篇集。主に『シンカン』に掲載された作品を中心に収録されています。扉をめくれば「これから特別に魔法をかけてやる」というエピグラフと、妖精のイラスト。「はじめましてロビンソン」(2011) ――漫画化のアシスタントをしているケイコ…

『貝の穴に河童の居る事』泉鏡花/石塚公昭(波濤社)★★★☆☆

乱歩人形でおなじみの人形作家による、泉鏡花作品の絵本化。 灯ともしの翁が一人、社の階に立出づる。蒼ざめた小男が、柏手のかわりに痩せた胸を三度打った。「願いまっしゅ。……お晩でしゅ。」「和郎わの。」「国境の、水溜まりのものでございまっしゅ。」「…

『あなたは誰?』アンナ・カヴァン/佐田千織訳(文遊社)★★★★☆

『Who are you ?』Anna Kavan,1963年。 チャバラカッコウの鳴き声が「あなたは誰?《フー・アー・ユー?》」と繰り返される熱帯の地「白人の墓場」で、ドッグヘッドと呼ばれる支配的で乱暴な夫と、決して支配に屈しない若い妻と、情事未満を重ねるスエード…

『寝ても覚めても夢』ミュリエル・スパーク/木村政則訳(河出書房新社)★★★★☆

『Reality and Dreams』Muriel Spark,1996年。 短篇集『バン、バン! はい死んだ』に続く、ミュリエル・スパーク作品です。今回は長篇。 撮影にこだわるあまりにクレーンから落下して大けが、妻は資産家の一族なのでわがままな仕事ぶりも思いのまま、女は芸…

『アフタヌーン』2018年1月号、「かぐやひこ」オガツカヅオ、『レディ&オールドマン』4

『アフタヌーン』2018年1月号(講談社)『大上さんだだ漏れです。』14「オクトパス・ガーデン」吉田丸茂『しったかブリリア』5「ラブホテル」珈琲『おおきく振りかぶって』138「4市大会 9」ひぐちアサ『ヴィンランド・サガ』45「バルト海戦役 27」幸村誠『…

『怪奇文学大山脈2 西洋近代名作選 20世紀革新篇』荒俣宏編(東京創元社)★★★★☆

「第二巻まえがき 二〇世紀怪奇スクール――夢魔の花咲きほこる」荒俣宏 ★★★★★ ――そもそも、いったいだれが怪奇小説という大山脈に登ってみようと言いだしたのか。ラフカディオ・ハーンである。ところで、この「怪奇小説」なる用語はいつからこのジャンルの呼…

『生き屏風』田辺青蛙(角川ホラー文庫)★★☆☆☆

「生き屏風」★★☆☆☆ ――一昨年に亡くなった奥方の霊がその店の屏風に憑いたのか、夏の頃になると屏風が喋るようになった。無理に祓おうとするよりも適当な相手に慰めさせた方がよいと、妖鬼である皐月が呼ばれることになった。皐月は眠っていた馬の首の中から…

『愛の渇き』アンナ・カヴァン/大谷真理子訳(文遊社)★★★★★

『A Scarcity of Love』Anna Kavan,1956年。 王族の血を引く両親のもとに生まれ、女王《リジャイナ》と名づけられた少女は、抑圧的な環境で育ったために、普通なら愛の対象に向けられる感情が自分の肉体に向けられた。自分だけの宝物である肉体を蹂躙した夫…


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