『幻想と怪奇』7【ウィアード・テールズ 恐怖と冒険の王国】「『ウィアード・テールズ』――ある雑誌の歴史と、表紙画家たちの横顔」 パルプ雑誌のカバーワークの良さはよくわかりません。 「パルプ・ホラーが映しだすもの」牧原勝志 「レッドフック街怪事件…
『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー/井上里訳(創元推理文庫) 『Picnic At Hanging Rock』Joan Lindsay,1967年。 カルト的人気の名作映画の原作、初の邦訳ということですが、映画自体が1975年作で本邦公開が1986年とかなり昔の…
『まどのそと』佐野史郎作/ハダタカヒト絵/東雅夫編(岩崎書店 怪談えほん) 怪談えほん第三期、第一回配本。 かたかたかた……まどがかたかたなっている。かぜがふいているのかな。かーてんあけてみたけれど、そとの葉はゆれていない。「もうおねむのじかん…
『色町のはなし 両国妖恋草紙』長島槇子(メディアファクトリー) 2010年刊。『遊郭のはなし』に続く『幽』怪談文学賞受賞第一作ですが、前作とは段違いに面白くなっています。 恐らく前作は「遊廓に伝わる」「怪談」の「聞き語り」の「連作集」という形式に…
『遊郭《さと》のはなし』長島槇子(メディアファクトリー) 2008年刊。第2回『幽』怪談文学賞長編部門特別賞受賞作。 長篇とはいえ実質的には掌篇のつらなりで、読売屋が遊廓「百燈楼」の元女中から聞いた赤い櫛の怪異を皮切りに、「百燈楼」のその後を知…
『幻想と怪奇』6【夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館】(新紀元社)〈幻想と怪奇〉アートギャラリー ヨハン・ハインリヒ・フュースリー」 『夢魔』のヴァリアントなど。 「A Map of Nowhere 06:「詩と神々」のパルナッソス山」藤原ヨウコウ「詩と神々」H・…
『地球最後の男』リチャード・マシスン/田中小実昌訳(ハヤカワ文庫NV) 『I Am Legend』Richard Matheson,1954年。 自分以外の全人類が吸血鬼と化してしまった世界で、絶望と戦いに明け暮れる男の日々を描いた古典的名作です。今は数年前の映画化に合わせ…
『忘れられた花園』(下)ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Forgotten Garden』Kate Morton,2008年。 デュ・モーリアの名前が出されているのは、せいぜいのところゴシック・ロマンス風なところがあるからだと思っていましたが、下巻はし…
『忘れられた花園』(上)ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Forgotten Garden』Kate Morton,2008年。 オーストラリア、ブリスベン。二十一歳になり結婚を間近に控えたネルは、父親のヒューから衝撃的な事実を知らされます。白いトランク…
『宰相の象の物語』イヴォ・アンドリッチ/栗原成郎訳(松籟社 東欧の想像力14) ボスニア出身のノーベル賞作家による中短篇集。イスラム圏内のボスニアでカトリック教徒でありドイツ大使としてナチス政権を目の当たりにしたという著者の来歴や、あるいはボ…
『紫の雲』M・P・シール/南條竹則訳(アトリエサード/書苑新社 ナイトランド叢書) 『The Purple Cloud』M. P. Shiel,1901年。 シールにしては恐ろしいほどに読みやすい。訳者の苦労がしのばれます。 死んだ友人からの手紙には、霊媒が幻視したという今…
『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる(新潮文庫) 第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 何だかわからないけどすごい。のっけからまったく付いていけません(^^; 鉄塔の説明が事細かに怒濤のごとく書かれてありますが、まったくわかりません。。。 女性型鉄…
『アンメット』1、「かるびのベランダ」オガツカヅオ『ネムキプラス』2021年5月号『アンメット―ある脳外科医の日記―』(1)子鹿ゆずる原作/大槻閑人漫画(講談社モーニングKC) 『ハコヅメ』『スインギンドラゴンタイガーブギ』と同じく『週刊モーニング…
『黒衣の女 ある亡霊の物語』スーザン・ヒル/河野一郎訳(ハヤカワ文庫NV) 『The Woman In Black: A Ghost Story』Susan Hill,1983年。 霧のロンドンを離れ、ドラブロウ夫人の遺産整理に訪れるキップス弁護士。列車に乗り合わせた地元の者によれば、町の…
『怪異十三』三津田信三編(原書房) 東西の怪奇小説十三篇に編者自身の単行本未収録作を加えたもの。四つの採録基準(一、編者自身がぞっとしたもの。二、有名作以外。三、入手困難作。四、国内7&海外6&編者書き下ろし)を満たせずに、著名作も含まれ編…
「〈幻想と怪奇〉アートギャラリー アーサー・ラッカム」「A Map of Nowhere 05:ダーレス「深夜の邂逅」のプロヴィデンス」藤原ヨウコウ「深夜の邂逅」オーガスト・ダーレス/荒俣宏訳「アメリカン・ゴシックの瞬間」巽孝之 「夢遊病――ある断章」チャールズ…
一応のところは斉鎌《せい・れん》という料理人(厨師)が、李桃源《り・とうげん》という男から腹が空くと自分から餌を食べてしまうという鍋を預かり、次の職場を探しに行くまでの旅路で遭遇したあれこれの顛末――というおおまかな流れが採られています。 と…
倉数茂の第四作にして最新作は、著者を思わせる語り手が幻の作家・沢渡晶の甥と出会い、晶の遺稿と甥の小説と語り手自身の作品をまとめたもの、という体裁が取られています。 語り手自身の来歴が著者とダブり、雑誌『牧神』や中井英夫の名が現れるなど、はじ…
ぼぎわんと呼ばれる化け物がやって来る――。本書を大きく貫いているのは、タイトル通りの物語です。ですがそこにさまざまな工夫が凝らされていました。 読み進めていくと、ある人物がサイコパス(と断言してしまいます)であることがわかるようになっています…
『Jack of Spades』Joyce Carol Oates,2015年。 ジャック・オブ・スペードというのは、さほど売れない作家アンドリュー・J・ラッシュの別名義のペンネームです。隠された暴力性を披瀝したようなノワールな作風が特徴です。 さてラッシュの隠された暴力性が…
架空の歌人の代表作三十一首と生涯を振り返った評伝を丸ごと一冊作中作にした長篇小説です。脚註も入っていて本格的なのですが、短歌と評伝のあいだにつながりはほぼありません。著者がことさらに「歌の解釈自体とは別次元のことだが」等と強調するほどに虚…
『Adios, Scheherazade』Donald E. Westlake,1970年。 スランプに陥ったポルノ作家が、とにかく文章を打とうとして妄想や悩みや雑感を書きつづるという、基本的にはおバカな話です。『さらば、オマ×コ野郎』というタイトルでは編集者の許可が下りないだろう…
奇妙な味を中心としたアンソロジー第2団。『街角の書店』以上に「理屈では割り切れない余韻を残す」作品を重視したとのこと。 「麻酔」クリストファー・ファウラー/鴻巣友季子訳(On Edge,Christopher Fowler,1992)★★★☆☆ ――ナッツを噛んで歯が砕けてしま…
『The Bird's Nest』Shirley Jackson,1954。 2016年に『日時計』『処刑人(絞首人)』と立て続けに未訳長篇が翻訳されたジャクスンの、これまた未訳だった長篇作品とあって読む前から否が応でも期待は高まりますが、期待に違わず一行目から面白い。 「博物…
『Who Made Stevie Crye? : An Novel of the American South』Michael Bishop,1984,2014。 作家の使っているタイプライターが勝手に動き始める……モダン・ホラーのパロディというだけあって、なるほど確かにどこかで見たことのあるような内容です。 エッセイ…
このタイミングで吸血鬼をテーマにしたのは別に『鬼滅の刃』にあやかったわけではなく、たまたまのようです。「A Map of Nowhere 04:ネルダ「吸血鬼」のプリンキポ島」藤原ヨウコウ 河出文庫『東欧怪談集』に邦訳のあるヤン・ネルダ「吸血鬼」より。 「パル…
第4巻はテーマも「呪」というだけあってか、カバーイラストも呪いそのまんまで挿絵もストレートに怖い絵になっています。 「笛塚」岡本綺堂(1925)★★★★☆ ――十一番目の男が語る。僕の国では昔から能狂言が盛んだった。武士のうちにも笛をふく者もあった。十…
双葉社から出版されていた『痛みかたみ妬み』全篇に、『またたかない星』収録作から『殺さずにはいられない』には未収録の2篇と、『小説ジュニア』掲載の単行本未収録作2篇を加えた増補復刊短篇集とのこと(解説より)。 「痛み La Peine」(1978)★★★☆☆ ―…
『The Ebb-Tide』Robert Louis Stevenson&Lloyd Osbourne,1894年。 落ちぶれた三人組が人生の大逆転を狙って船ごと積荷の乗っ取りを企む物語です。 冒頭まず三人の落ちぶれぶりが描かれます。不健康にも祟られ、食べるものにも事欠いて、物乞いをしたり物…
3つの短篇――というよりは、各作品の結びつきが強いので、3章から成る連作長篇という方が適切でしょう。 一話目の「ちいさな焦げた顔」は、組織に家族を惨殺された少年・梗ちゃんが中国奥地に起源を持つ吸血鬼〈バンブー〉ムスタァに救われ、ムスタァの相棒…