『夢みる宝石』シオドア・スタージョン/永井淳訳(ハヤカワ文庫)★★★★★

ホーティ少年は胸のむかつくような行為の現場を目撃され、こっぴどく叱られた。継父のアーマンドがホーティを衣装戸棚に押し込んとき、少年の指が蝶番に挟まった。ホーティはびっくり箱のジャンキーとともに逃げ、アーマンドは肝に銘じた――指のない男に注意…

『稲生物怪録絵巻集成』(国書刊行会)★☆☆☆☆

本邦初紹介となる絵巻を含め、絵巻絵入写本・絵本あわせて8本を、オールカラーでこの1冊に完全収録。 残念だけれど人を選ぶ作品です。正直、『稲生』のどこが面白いのかわかりませんでした。物語もどうってことないし、絵的にも魅力なし。むしろ付録扱いさ…

『ミステリマガジン』2006年4月号【特集=英国ミステリの現在】★★★★☆

「英国ミステリ最新事情」松下祥子 【1】イギリスといえば階級社会。というわけでミステリ・シーンにもかなりそれが影を落としているようです。【2】古くさい名探偵もの=クリスティというわけではないような気もしますが、いずれにしてもイギリスでは名探偵…

『探偵家族/冬の事件簿』マイクル・Z・リューイン(ポケミス1746)★★☆☆☆(★★★★☆)

親子三代で探偵業を営むルンギー一家は超多忙。今日も美人の依頼人が駆け込んでくる。ポケベルを使って脅迫されているというが、数字しか表示できないポケベルでどうやって? 一家の次男アンジェロ夫婦の名推理が冴える(かも)。お洒落なブティックの店先を…

『エムズワース卿の受難録』ウッドハウス(文藝春秋)★★★★★

「南瓜が人質」(The Custody of the Pumpkin) ――エムズワース伯爵が新しく買った望遠鏡を覗いていると、なんと次男のフレディが女の子と抱き合っていた。女の子は庭師の親戚の娘。すわ一大事と、親戚の娘を追い出すよう庭師に命じるのだが、追い出すくらい…

『ミステリマガジン』2006年3月号 No.601 創刊601号記念特大号 ★★★★★

創刊601号記念特大号とは言っても、1/3は毎年恒例の年度翻訳ミステリ回顧&ベスト3なので、実質的には残り2/3が「クラシックミステリ特集」てな感じでしょうか。 各ジャンルの希少短篇や傑作短篇に、それぞれのジャンルについての解説及び収録作品解…

『闇の底のシルキー』デイヴィッド・アーモンド/山田順子訳(東京創元社)★★★☆☆

寂れた炭鉱町に越してきた僕は、風変わりな少年に誘われ、死と言う名のゲームに加わる。最初はただのゲームだったが、冬が訪れるころ何かが変わった…。死に憑かれた子どもたちの、冥界めぐりの旅。行きつく先にあるのは? 前作『肩胛骨は翼のなごり』には、…

『切られた首』クリスチアナ・ブランド/三戸森毅訳(ポケミス0515) ★★★☆☆

大傑作になり損ねた作品です。というか、“本格ミステリ的な真相”なんてブランドは鼻から考えてませんね。読んだあとにちょっと消化不良が残ります。あるのはただ“本格ミステリ的な解明と展開”のみ。他のブランド作品同様、いくつもの推理がこれでもか!とい…

『われ生きたり』金嬉老(新潮社)★★★★★

「金嬉老元服役囚 女性を脅し逮捕」(北海道新聞 2000年9月4日) 「金嬉老が身元引受人僧侶と『絶縁』していた!」(週刊文春 2000年1月20日新春特別号) 本書を読んで感銘を受けたわたしにとって、この二つのニュースは正直に言ってショックだった。しかし…

『英国人の血』ジェイムズ・マクルーア(ポケミス1403)★★★☆☆

銃を持った“巨人”がトレッカースブルグを徘徊している! 連続して起きた二件の狙撃事件の犯人は人間の限界を超えた力の持ち主としか考えられなかった。二件の被害者には関係があるのか、それとも無差別殺人か? クレイマー警部補がぶつかった一番の難事件の…

『13のショック 異色作家短篇集4』リチャード・マシスン(早川書房)★★★★☆

「ノアの子孫」(The Children of Noah) ――夜中の三時、田舎道を走らせていたケチャム氏は、スピード違反でパトカーに止められる。警官は罰金を払わせるそぶりも見せずに、ケチャム氏を警察署に連れて行った。のらりくらりとした尋問が続き、解放される気配…

『詩人と狂人たち』チェスタトン(創元推理文庫)★★★★★

「おかしな二人連れ」(The Fantastic Friends, ) ――医者のガースがさびれた宿を立とうとしていたところ、おかしな二人連れの客が訪れた。詩人で画家のガブリエル・ゲイルとマネージャーのハレルだという。ゲイルは宿の看板を描き変える仕事が好きだった。…

『くじ 異色作家短篇集6』シャーリイ・ジャクスン(早川書房)★★★★★

「酔い痴れて」(The Intoxicated) ――彼が酔いを覚ますために台所に行くと、若い娘がコーヒーを淹れるところだった。 どこかしらサリンジャー作品の一こまを読んでいるような、現代っ子の話(あくまで雰囲気だけですが)。思春期の子どもの、大人に対する怒…

『S-Fマガジン』2006年03月号(通巻599号)2005年度英米SF受賞作特集 ★★★☆☆

「My Favorite SF」(第3回)恩田陸 恩田陸氏の心の1冊は手塚治虫『ライオンブックス』。かつては「あかずの教室」「マンションOBA」[bk1・amazon]がお気に入りだったが、今読み返して印象に残るのは「安達が原」「荒野の七ひき」[bk1・amazon]だそ…

『ミステリーズ!』Vol.13 ★★★★☆

北村薫×戸川安宣『ニッポン硬貨の謎』[bk1・amazon]対談が掲載されていたので買いました。ジュンク堂トークショーの一部だそうです。しかしミステリファンのあいだでは確かに戸川さん、有名かもしれませんが、インタビューとかじゃなく対談になっちゃうん…

『蠅(はえ) 異色作家短篇集5』ジョルジュ・ランジュラン(早川書房)★★★★☆

「蠅」(La mouche)――弟の妻から電話がかかってきた。夫を殺したから警察に連絡してほしい――。弟は工場の機械で頭をぺしゃんこに潰されていた。妻は白い頭の蠅を探したりと要領を得ない。いったい何が起こったのか。 キワモノホラー&人間ドラマ映画『ザ・…

『一角獣・多角獣 異色作家短篇集3』シオドア・スタージョン(早川書房)★★★★★

いわずと知れた『異色作家短篇集』の新装版。装丁が凝りまくっていていかにもコンプリートしたくなる。原題『E Pluribus Unicorn』。「一角獣の泉」(The Silken-Swift)――デルはリタに夢中だった。リタにからかわれているとも知らずに。バーバラは一角獣を…

『四人の申し分なき重罪人』チェスタトン(国書刊行会)★★★☆☆

〈誤解された男のクラブ〉をめぐる四つの事件。とはいえ、他のミステリ短編集のようにシリーズを通した探偵役がいるわけでもないし、〈誤解された犯罪者〉という共通点&プロローグとエピローグはあるものの、独立した四つの中篇が収録されていると思ってい…

『2004本格ミステリ・ベスト10』(原書房)★★★★☆

しばらくかかっていなかったミステリ熱に最近またかかりだしたため、今ごろになって2004年版を購入、読んでみる。 目玉は歌野晶午インタビューでしょう。ネタバレしないことよりも、読んでもらえるように気を遣っているという発言に深く納得。『ヴードゥー・…

『カーの復讐』二階堂黎人(講談社ミステリーランド)★★★★☆

古代エジプトに伝わる宝石を盗み出そうとボーバン家に潜入するルパン。だがルパンの雇っていた老婆が謎の言葉を残して怪死し、パーティ会場には呪いを口走るエジプト人が現れた。ボーバン家にはミイラ男が出没し……。ルパンは部下のマルコとともに謎を探るの…

『ミステリマガジン』2006年2月号No.600 特集:ファンタスティック・ミステリ ★★★☆☆

気になる特集タイトルだった。買おうかどうしようか迷ったが、笠井潔と若手作家の座談会が載っていたのでけっきょく買うことにする。大戦間探偵小説論にしろ観念の殺人にしろものすごいインパクトがあったから、笠井氏が現在の本格シーンをどう読み解くのか…

『世界映画名作全史 現代編』猪俣 勝人(現代教養文庫)

「エクソシスト」のページを読んだら、オカルト・ブームについて書かれてあった。 ユリ・ゲラーが流行ったころ、日本全国に「超能力少年、というよりスプーン曲げの巧い少年が現れ」たという評に大爆笑。---------------------------世界映画名作全史 現代編…

『ブラウン神父の知恵』チェスタトン/中村保男訳(創元推理文庫) ★★★★☆

ブラウン神父ものの第二短編集。トリックのインパクトという面から見れば『童心』より劣るのは否めないが、それも比較すればの話。「器械のあやまち」「ペンドラゴン一族の滅亡」「ブラウン神父のお伽噺」はまぎれもない名作だし、ほかに「グラス氏の失踪」…

『水晶のピラミッド』島田荘司 ★★★★☆

エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが5000年の時空を超えて突然蘇り 、空中30メートルの密室で男が溺死を遂げる。アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔…

『明治大正翻訳ワンダーランド』 (新潮新書) 鴻巣友季子

鴻巣氏の翻訳がらみのエッセイ集。ということで読んでみたのですが、翻訳「小説」(史)についての話と「翻訳」そのものについての話が半々といったところです。 「翻訳」そのものについてもっと筆を割いてほしかったなァ。新書という性質上やむを得ないのだ…

『宇宙舟歌』ラファティ/柳下毅一郎(国書刊行会)

船乗りの話ときて面白くないわけがない。『スナーク狩り』しかり『白鯨』しかり。『海底二万里』や『月世界旅行』を加えてもいいかもしれない。 未知への冒険、大いなるものとの戦い。冒険物語の本質がここにあります。トム・ソーヤーだったりガルガンチュア…

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン

アヴラム・デイヴィッドスンの短編集が出ましたね。 むしろ殊能将之の編んだ短編集が出たというべきでしょうね。 待ってください。そりゃあぼくはデイヴィッドスンという名前は聞いたことがなかった。殊能将之編というのに惹かれて購入したのも事実ですよ。…

『エンジェル エンジェル エンジェル』梨木香歩

『裏庭』を読んで以来その理屈っぽさから梨木作品を敬遠してはおりましたが、気になる作家ではありました。というわけで本書を読んでみれば、これは傑作ではありませんか! 本書が傑作になった所以はただ一つ。理屈を「説明する」のではなく、「構成として組…

『首つり判事』ブルース・ハミルトン(ポケミス0497) ★★★★★

一読して見当がつくとおり、本書の内容は『歯と爪』であり『黒衣の花嫁』であります。このサスペンスの名作二篇に劣らぬ面白さでありました。章によって視点人物が変わるのが実に効果的。まずは死刑囚。次に謎の男ティール。ティールが泊る宿屋の主人。ティ…

『我が名はアラム』サローヤン(福武文庫、三浦朱門訳)

サブカル系の雑誌とかではなく、文芸ものの単行本でここまでひどい本は初めてだった。誤字・脱字が多い。訳者が最低(訳文が最低、解説の日本語が最低、解説の論旨が最低)。 文章についちゃ人にどうこう言えるレベルじゃないけどさ。でも本書の訳者はお金も…


防犯カメラ