『Leviathan』Scott Westerfeld,2009年。 オーストリア皇太子夫妻が「毒殺」された世界――遺伝子操作によって機械ではなく生物を発達させたイギリス等と、蒸気機関を発達させたドイツ諸国。 命を狙われ逃亡する皇太子夫妻の息子アレクサンダー(アレック)と…
第一回創元SF短編賞受賞作「あがり」を含むデビュー作品集。一時期の新本格ミステリは学生ミステリばかりだったけれど、キャンパスSFというのは意外と未開拓かも。「あがり」のインパクトが大きいので同じようなSFオチのある話を期待してしまいました…
SFはともかくファンタスチカとはなんぞや?ということになりますが、SF・ファンタジー・幻想小説その他いろいろすべて引っくるめた非リアリズム系の作品だと思えば、当たらずとも遠からず、でしょうか? 編者は例としてレム、エリアーデ、カフカ、チャペ…
「ニンゲンがロボットに見えるという」少女――というと、『火の鳥』復活編を連想してしまいましたが、実は全然違いました。単に見え方が違うというレベルの話ではなく、認識とはどういうことかという根本的なところにまで踏み込まれた、SFでしかありえない…
帯の紹介文に書かれた「ハードSF」という言葉に初めはピンと来ませんでしたが、改めて思い返してみれば、なるほど確かにすべてが理詰めです。例えば、かめはめ波を押し戻されて、それを「波〜!」の気合いだけで押し返すというような、強引なシーンはあり…
角川文庫の背表紙デザインがまた変わった。誰も望んでないのにね。昔のみたいにヘボくなって懐かしい。 アンソロジーなのに各篇扉に著者名がなくタイトルだけというデザインが斬新。映画原作ものだから、原作者ではなく映画化名をアピールしたのかと思ったの…
『S-Fマガジン』で序章を読んだかぎりでは、ヒロインのために寄り集まった男たちが奮闘する冒険ものだと思ったのだけれど、メインは別のところにありました。 カバーあらすじにも書かれているからバラしてしまうけれど、この小説の肝は「軌道エレベーター…
原作者も漫画家もお互いに思い入れがあるだけあって、初めからこの原作は本書のためだけに存在していたかのような完成度です。 「女性がタバコを吸うのはよくないと思うよ(中略)第一 あまり見た目がよくないよ…」という台詞はありながら、ほれぼれするくら…
『Dogwalker』Authur Bradford,2001年。 『SFマガジン』ではケリー・リンクやジュディ・バドニッツやミルハウザーの名が引き合いに出されていたが、もっとヘンテコでシュールでアホである。「キャットフェイス」(Catface)★★★★☆ ――ぼくは部屋をシェアし…
フィクションという形でだからこそ最大限効果的に現実を描き出すという当たり前のことを、デビュー作で軽々とやってしまいました。 執拗なほど事細かな迫真の戦闘描写、カフカやゴドーになぞらえられる不条理なスパイ活動、くだらないジョーク、超管理社会と…
『S-Fマガジン』で「A to Z Theory」→「Boy's Surface」→「Your Heads Only」→「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」と読んでから本書を読んでみると、驚くほどにまともで親切でわかりやすい(^_^;。 というか、わたしにはこ…
日本SF新人賞受賞作。というだけなら手に取らなかったんですが。日本ファンタジーノベル大賞落選後に日本SF新人賞受賞なのだとか。 ものすごく乱暴に要約するならば、ジャン=ジャック・ルソーの理想に絡め取られたマッド・サイエンティストが夢見た実験…
『Brothers of the Head』Brian W. Aldiss,1977年。 まあこうなるしかないわなあ。第三の頭があるあたりがユニークといえばユニークだけど。比喩的な話(それも双子という形に限らなければ)、それこそ星の数ほど書かれてきた物語ではある。 あとは、本人た…
『Fiasko』Stanislaw Lem,1987年。 訳文が半端じゃなく読みづらい。註釈やあとがきからわかるとおり、この本の訳者はどうも翻訳者タイプではなく研究者タイプのようだ。直訳というか、律儀訳なのである。まあ慣れれば問題ない。 内容的にはどうなんだろう。…
メインは飛浩隆と浅倉久志のインタビュウ。そのほか「文芸ノンフィクション」「科学ノンフィクション」ベスト10がよかった。小説と比べるとどうしてもノンフィクションは手薄になるので。特に『幻想文学、近代の魔界へ』『あったかもしれない日本』『クマ…
綾辻編と比べてみても、半分近くが未読作品なのがありがたい。編者によるエッセイもくどいほど充実している。「夏の葬列」山川方夫★★★★☆ ――あれは戦争の末期だった。あれ以来、おれは一度もこの町をたずねたことがない。ひろい芋畑の向うに、一列になって、…
「数の勝利」ゲイリー・アラン・ルース/五十嵐加奈子訳(The Holmes Team Advantage,Gary Alan Ruse)★★★☆☆ ――盗まれた品物が、なぜか間もなく返ってくるという事件があちこちで発生していた。犯行現場に残されていたのは、証拠物件として警察に保管されて…
ショージキ言って、今になってわざわざ全訳刊行するほどのものじゃない。誰にでも楽しめるパロディというよりはマニア向けである。「序――死ぬことを拒否した探偵」マイク・レズニック/日暮雅通訳(Introduction:The Detective Who Refused to Die,Mike Re…
SF翻訳家・浅倉久志のエッセイ集。とはいっても大半を文庫解説(訳者あとがき)が占める。 後半はSF入門として読めるので万人向け。前半のディックとヴォネガットの文庫解説は著者のファン向けかな。ディックとヴォネガットに特に思い入れのない人間にと…
カンブリア紀の大爆発はなぜ起きたのか? この生命進化史の謎に迫るのが本書である。原題『In the Blink of an Eye』Andrew Parker,2003年。読みやすい科学読み物。ノンフィク系って文芸にくらべるとまだまだ訳文が硬いイメージがあったのだけれど、本書は…
むか〜し『SFマガジン』に連載されていたコラムを一冊にまとめたもの。著者のまとめ方がうまいのかわたしが前評判を真に受けすぎたのか、思っていた以上に翻訳に関わる話が多かったです。 素人翻訳やってる身としては、視点を固定して代名詞を省略するとい…
さして都会に住んでいるわけでもないので、大手の文庫や雑誌ならともかく、単行本が発売日とともに書店店頭に並ぶということは少ない。そんなわけだから、購入をためらっているものなら大型書店で確認するのだけれど、初めから買うと100%決めているものにつ…
長篇二つのカップリングだというから、短めの長篇二作かと思っていたら、細かい字でみっちり二段組みでした。特に『天の声』。読んでも読んでもページが先に進まない……。めげそうになりました。 つまらなくはないんですけどね。何て言うんでしょうか。すごく…