『掌の中の小鳥』加納朋子(創元推理文庫)★★★★☆

『掌の中の小鳥』加納朋子(創元推理文庫) 『Egg Stand』加納朋子,1995年。 二十代のクールで利発的な男と勝気でエキセントリックな女が、バー「EGG STAND」を舞台に、謎解きを通して絆を深めてゆく連作短篇集。えぐるところとハートウォーミングなところ…

『バベル島』若竹七海(光文社文庫)★★★☆☆

『バベル島』若竹七海(光文社文庫) 単行本未収録作品のなかからホラーテイストのものを選んで集めたもの。古典的な怪談からミステリ味のあるものまで、幅広い作風ではあるのですが、小粒なものが多くあまり印象に残りませんでした。 「のぞき梅」(1994)★…

『ひとんち 澤村伊智短篇集』澤村伊智(光文社)★★★★☆

『ひとんち 澤村伊智短篇集』澤村伊智(光文社) 白黒のアパート上でカラーに浮かび上がる窓。横向きや逆さまや裏返しになっている扉や目次の文字。細くうねうねとした気持ちの悪い本文の活字。これでもかというほどアンバランスで不安にさせる造りの本でし…

『あなたの自伝、お書きします』ミュリエル・スパーク/木村政則訳(河出書房新社)★★★★☆

『あなたの自伝、お書きします』ミュリエル・スパーク/木村政則訳(河出書房新社) 『Loitering with Intent』Muriel Spark,1981年。 名誉毀損を恐れずに自らの人生を記録したいという俗物たちが、小説家志望の語り手フラー・トールボットを雇って自伝のサ…

『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』陳浩基・知念実希人・他(講談社)★★★☆☆

『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』陳浩基・知念実希人・他(講談社) 2021年刊。 まるで経済成長に合わせるかのように、乗りに乗っていた中国ミステリ&SF。アジア圏ミステリの紹介では先鞭をつけていた島田荘司氏による日華競演アンソロジーが満…

『中国・アメリカ 謎SF』柴田元幸・小島敬太編訳(白水社)★★★☆☆

『中国・アメリカ 謎SF』柴田元幸・小島敬太編訳(白水社) 『三体』やテッド・チャンやケン・リュウ以外にも、「とにかく面白い作品を書いてる新しい世代のSF作家が大勢いて、まだ日本では全然紹介されていない」ことから、編者がそれぞれ中国とアメリ…

『S-Fマガジン』2024年8月号No.764【クリストファー・プリースト追悼特集/山本弘追悼特集】

『S-Fマガジン』2024年8月号No.764【クリストファー・プリースト追悼特集/山本弘追悼特集】冒頭先行掲載『一億年のテレスコープ』春暮康一 ――「遠くを見たい」という少年の望みは、やがてこの星の電波天文学に革新をもたらす(袖惹句)「われ、腸卜師」ク…

『愛なんてセックスの書き間違い』ハーラン・エリスン/若島正・渡辺佐智江訳(国書刊行会〈未来の文学〉)★★★★☆

SF

『愛なんてセックスの書き間違い』ハーラン・エリスン/若島正・渡辺佐智江訳(国書刊行会〈未来の文学〉) 『Love Ain't Nothing But Sex Misspelled』Harlan Ellison,2019年。 エリスン初期の非SF短篇を集めた、日本オリジナル編集の短篇集。 「第四戒…

『紙魚の手帖』vol.17 2024 JUNE【謎解きの魅力、再発見! 初夏の翻訳ミステリ特集】

『紙魚の手帖』vol.17 2024 JUNE【謎解きの魅力、再発見! 初夏の翻訳ミステリ特集】『白薔薇殺人事件』クリスティン・ペイン/上條ひろみ訳 ――十六歳のとき、殺されると予言された通りに殺害された大叔母。彼女は、予言が的中したときのために、約六十年を…

『死んでも治らない――大道寺圭の事件簿――』若竹七海(光文社カッパ・ノベルス)★★★★☆

『死んでも治らない――大道寺圭の事件簿――』若竹七海(光文社カッパ・ノベルス) 2002年初刊。 退職した元刑事・大道寺圭は、知り合いの編集者にせっつかれて『死んでも治らない』という本を出版します。現役時代に遭遇した間抜けな犯罪者について面白おかし…

『ヴァイゼル・ダヴィデク』パヴェウ・ヒュレ/井上暁子訳(松籟社 東欧の想像力19)★★★★★

『ヴァイゼル・ダヴィデク』パヴェウ・ヒュレ/井上暁子訳(松籟社 東欧の想像力19) 『Weiser Dawidek』Paweł Huelle,1987年。 ポーランドの作家のデビュー作。ポーランドを代表する作家として認識されるきっかけとなった、世界中数ヶ国語に訳された作品と…

『奇商クラブ』G・K・チェスタトン/南條竹則訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『奇商クラブ』G・K・チェスタトン/南條竹則訳(創元推理文庫) 『The Club of Queer Trades』G. K. Chesterton,1905年。 新訳版。チェスタトンの著作としてはかなり初期の作品です。強いて言えばユーモア小説ということになるのでしょうが、ドタバタが…

『日曜は憧れの国』円居挽(創元推理文庫)★★★☆☆

『日曜は憧れの国』円居挽(創元推理文庫) 『Sanday Quartet』Van Madoy,2016年。 カルチャー教室で出会った学校も性格も違う中学二年生4人が遭遇する日常の謎5篇。『10月はたそがれの国』みたいなタイトルですが、「憧れの国」とはカルチャー教室を主宰…

『刑事コロンボ 13の事件簿――黒衣のリハーサル』ウィリアム・リンク/町田暁雄訳(論創社 論創海外ミステリ108)★★★☆☆

『刑事コロンボ 13の事件簿――黒衣のリハーサル』ウィリアム・リンク/町田暁雄訳(論創社 論創海外ミステリ108) 『The Columbo Collection』William Link,2010年。 刑事コロンボの脚本家であるウィリアム・リンクによるコロンボものの短篇集。限定版付属の…

『矢上教授の夏休み』森谷明子(祥伝社文庫)★☆☆☆☆

『矢上教授の夏休み』森谷明子(祥伝社文庫) 2018年初刊。『矢上教授の「十二支考」』改題。 大学のレポートのテーマに十二支を選んだ御牧咲は、十二支にちなんだ十一の神社が町を守るように囲んでいるこぶし野町に来ていました。その町で日常の謎から殺人…

『一の悲劇』法月綸太郎(祥伝社文庫)★★★☆☆

『一の悲劇』法月綸太郎(祥伝社文庫) 1991年初刊。法月綸太郎シリーズの第四作。 誘拐被害者の父親である山倉史郎の一人称で綴られています。タイトルの一とはその一人称およびダイイング・メッセージに由来するようです。 広告代理店部長の山倉史郎の職場…

『ミステリマガジン』2024年7月号No.765【令和の鉄道ミステリ】

『ミステリマガジン』2024年7月号No.765【令和の鉄道ミステリ】「スティームドラゴンの奇走」霞流一「幸運の境界」山本巧次 ★★★☆☆ ――親の遺した不動産収入で不自由なく暮らしている芸術気取りが自宅で殺された。喜瀬川健一、三十九歳、現場にあったブロンズ…

『シャーロック・ホームズの帰還』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『シャーロック・ホームズの帰還』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Return of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1905年。 「空家の冒険」(The Adventure of the Empty House,1903)★★☆☆☆ ――ロナルド・アデヤ卿殺害事件の調書を…

『されば愛しきコールガールよ 私立探偵パーデュー・シリーズ①』ロス・H・スペンサー/田中融二訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★☆☆☆☆

『されば愛しきコールガールよ 私立探偵パーデュー・シリーズ①』ロス・H・スペンサー/田中融二訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『The DADA Caper』Ross H. Spencer,1978年。 何かのミステリ・ベスト本で紹介されていて、短い章のすべてにアンダーウッドじい…

『プラスマイナスゼロ』若竹七海(ポプラ文庫)★★★★☆

『プラスマイナスゼロ』若竹七海(ポプラ文庫) 葉崎市シリーズ第5作。ピュアフル版は2008年ジャイブ版に書き下ろし「卒業旅行」を加えたもの。ポプラ文庫の新装版にはそれに加えてさらに書き下ろし掌篇「潮風にさよなら」が収録されています。 容姿端麗で…

『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』パオロ・コニェッティ他/関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編(国書刊行会)★★★☆☆

『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』パオロ・コニェッティ他/関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編(国書刊行会) 日本オリジナルの21世紀イタリア文学アンソロジー。 小野正嗣による序文が収録されていますが、内容にがっつり踏み込…

『ふたたび赤い悪夢』法月綸太郎(講談社ノベルス)★★★☆☆

『ふたたび赤い悪夢』法月綸太郎(講談社ノベルス) 著者あとがきによれば、『頼子のために』の続編であり、『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』で三部作を成し、さらには『雪密室』の後日談という話です。 なるほど登場人物とその過去の因縁…

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』(Godzilla x Kong: The New Empire,米,2024)★★★☆☆

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』(Godzilla x Kong: The New Empire,米,2024)★★★☆☆ レベッカ・ホール、ダン・スティーヴンス他出演。 これはこれでよい。 アメコミヒーロー集結映画の怪獣版といったところでした。 どうやら続編らしく、前提となる設定が…

『石の繭 警視庁殺人分析班』麻見和史(講談社文庫)★★★☆☆

『石の繭 警視庁殺人分析班』麻見和史(講談社文庫) シリーズタイトルの「殺人分析班」とは、警視庁捜査一課第十一係のメンバー5人が捜査会議では出来ない推測や議論を、居酒屋で話し合う集まりにつけた名前です。 主人公は新人刑事の如月塔子。病死した警…

『幻想と怪奇』15【霊魂の不滅 心霊小説傑作選】

『幻想と怪奇』15【霊魂の不滅 心霊小説傑作選】「欧米心霊学略年譜」「モレル夫人の最後の降霊会」エドガー・ジェプスン/髙橋まり子訳(Mrs. Morrel's Last Seance,Edgar Jepson,1912)★★★☆☆ ――二年前の冬、わたしはモレル夫人の降霊会にすべて出席した…

『炎の眠り』ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『炎の眠り』ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳(創元推理文庫) 『Sleeping In Flame』Jonathan Carroll,1988年。 一応のところは『月の骨』から続くシリーズ2作目らしいのですが、ウェーバー・グレストンやカレン・ジェイムズと夢の国ロンデュアに言及さ…

『S-Fマガジン』2024年6月号No.763【特別対談 宇多田ヒカル×小川哲】

『S-Fマガジン』2024年6月号No.763【特別対談 宇多田ヒカル×小川哲】「特別対談 宇多田ヒカル×小川哲」 視点の切り替え、実体験なのかよく聞かれる、などの共通点が。 「Netflix独占配信シリーズ『三体』公開記念特集」 「『三体』ドラマ比較レビュー」加…

『ハテラス船長の航海と冒険 ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションⅠ』ジュール・ヴェルヌ/荒原邦博訳(インスクリプト)★★☆☆☆

SF

『ハテラス船長の航海と冒険 ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションⅠ』ジュール・ヴェルヌ/荒原邦博訳(インスクリプト) 『Voyages et aventures du capitaine Hatteras』Jules Verne,1866年。 すでに『気球に乗って五週間』『地底旅行』『地球から…

『猫島ハウスの騒動』若竹七海(光文社文庫)★★☆☆☆

『猫島ハウスの騒動』若竹七海(光文社文庫) 初刊2006年。 猫ばかりの島、通称・猫島。高校生の虎鉄は海岸でナイフを突き立てられた猫の剥製を見つける。たまたま観光で島を訪れていた葉崎署の刑事・駒持は、猫アレルギーに苦しみながらも事件の背後に何か…

『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集』ルゴーネス/大西亮訳(光文社古典新訳文庫)★☆☆☆☆

『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集』ルゴーネス/大西亮訳(光文社古典新訳文庫) 『El vaso de alabastro/Los ojos de la reina』Leopoldo Lugones。 日本オリジナルの傑作選。河出文庫『ラテンアメリカ怪談集』にルゴネスの表記で「火の…


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