『ハイ・シエラ』W・R・バーネット/菊池光訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1726 ポケミス名画座)★★★☆☆

『ハイ・シエラ』W・R・バーネット/菊池光訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1726 ポケミス名画座) 『High Sierra』W. R. Burnett,1940年。 ハンフリー・ボガードの出世作『ハイ・シエラ』の原作小説。 大物の手筈で刑務所を出所した銀行強盗ディリンジ…

『S-Fマガジン』2024年2月号No.741【特集 ミステリとSFの交差点】

『S-Fマガジン』2024年2月号No.741【特集 ミステリとSFの交差点】「ここはすべての夜明けまえ」間宮改衣 第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。編集後記によれば「どんな物語なのか、ジャンルも、あるいは小説なのかどうかさえも、事前情報が何も…

『探偵ジェスパーソン&レーン 夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件(上・下)』リサ・タトル/金井真弓訳(新紀元社)★★★★☆

『探偵ジェスパーソン&レーン 夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件(上・下)』リサ・タトル/金井真弓訳(新紀元社) 『The Curious Affair of the Somnambulist and the Psychic Thief』Lisa Tuttle,2016年。 『幻想と怪奇1』(→記事を見る)に訳載され…

『アンソロジー 隠す』大崎梢他(文春文庫)★★★☆☆

『アンソロジー 隠す』大崎梢他(文春文庫) 女性作家の集まり〈アミの会(仮)〉による書き下ろしアンソロジー第三弾(の文庫化)。加納朋子『少年少女飛行俱楽部』の前日譚「少年少女秘密基地」目当てで購入。好きな作家と未知の作家を読む。 「理由」柴田…

『紙魚の手帖』vol.14 2023 DECEMBER【読切特集「料理をつくる人」】

『紙魚の手帖』vol.14 2023 DECEMBER【読切特集「料理をつくる人」】「向日葵の少女」西條奈加「白い食卓」千早茜 ★☆☆☆☆ ――水族館で出会った女は、「お腹、すいていませんか」と私に声をかけ、弁当を差し出してきた(扉惹句) 弁当をすすめる初対面の人とそ…

『幻想と怪奇』14【ロンドン怪奇小説傑作選】

『幻想と怪奇』14【ロンドン怪奇小説傑作選】「ロンドン怪奇小説地図」「アッシュ氏の画室」H・R・ウェイクフィールド/渦巻栗訳(Mr. Ash's Studio,H. R. Wakefield,1932)★★★☆☆ ――道路工事が終わるまで、別の仕事場を借りなければ長篇小説を完成させら…

『ミステリマガジン』2024年1月号No.762【ミステリが読みたい!2024年版】

『ミステリマガジン』2024年1月号No.762【ミステリが読みたい!2024年版】 海外編のベストテンには興味のあるものがありませんでした。国内編の1位~3位『可燃物』米澤穂信、『君のクイズ』小川哲、『鵼の碑』京極夏彦はまだ読んでませんがいずれ読むつも…

『怪異雛人形』角田喜久雄(講談社大衆文学館文庫コレクション)★★★★☆

『怪異雛人形』角田喜久雄(講談社大衆文学館文庫コレクション) 戦前戦後に伝奇小説・時代小説・探偵小説をものした作家の、初期捕物帳を集めた作品集。「いろはの左近」もの二篇、「女形同心」もの二篇、その他三篇から成ります。著者が平成6年まで生きて…

『創元推理(10)』1995・秋号(東京創元社)

『創元推理(10)』1995・秋号(東京創元社) 第六回鮎川哲也賞の受賞作発表号であり、大賞受賞者である北森鴻と佳作受賞者である佐々木俊介と村瀬継弥の短篇が掲載されています。また、創元推理評論賞の発表もおこなわれており、受賞者の千街晶之と佳作の田…

『ヤンのいた島』沢村凜(角川文庫)★★★☆☆

『ヤンのいた島』沢村凜(角川文庫) 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。 大西洋の南回帰線近く、ジグソーパズルの一片のような形をした通称「ジグソー島」にある小国イシャナイ。その離島である菱島にようやく調査団の入国が認められた。一介の大学…

『悲劇への特急券 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編Ⅱ〉』佳多山大地編(双葉文庫)★★★☆☆

『悲劇への特急券 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編Ⅱ〉』佳多山大地編(双葉文庫) 第一集がトラベル・ミステリーの作者による傑作集だったのに対し、第二集である本書にはトラベル・ミステリー作家に限らない鉄道ミステリが集められていました。 「探偵小説…

『天使と宇宙船』フレドリック・ブラウン/小西宏訳(創元SF文庫)★★★☆☆

SF

『天使と宇宙船』フレドリック・ブラウン/小西宏訳(創元SF文庫) 『Angels and Spaceships』Fredric Brown,1954年。第二短篇集。どこにも書かれていませんが、「Tukasa」とある扉絵は司修によるものなのでしょう。 「序」(Preface)「悪魔と坊や」(Ar…

『完全犯罪の死角 刑事花房京子』香納諒一(光文社文庫)★★★☆☆

『完全犯罪の死角 刑事花房京子』香納諒一(光文社文庫) ハードボイルド作家による倒叙ものです。 沢渡留理は父親から受け継いだ家具会社を守るために、腹違いの兄・要次と秘書である愛人・福田麻衣子を殺し、別れ話のもつれから要次が麻衣子を殺したあと階…

『紙魚の手帖』vol.13 2023 OCTOBER【第33回鮎川哲也賞&第1回創元ミステ短編賞】

『紙魚の手帖』vol.13 2023 OCTOBER【第33回鮎川哲也賞&第1回創元ミステ短編賞】「第33回鮎川哲也賞 選評」辻真先・東川篤哉・麻耶雄嵩 麻耶氏の選評、「状況の深刻さよりも謎解きを優先するスタイルは個人的に好みです」だったり、「キャラクターのリアリ…

『ドラキュラ紀元一九一八 鮮血の撃墜王』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(新紀元社)

『ドラキュラ紀元一九一八 鮮血の撃墜王』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(新紀元社) 『Anno Dracula: The Bloody Red Baron』Kim Newman,1995/2012年。 増補完全版第二弾。『ドラキュラ戦記』からは割愛されていた一章が追加されたほか、書き下ろし中篇や…

『ドラキュラ紀元一八八八』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(アトリエサード)

『ドラキュラ紀元一八八八』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(アトリエサード) 『Anno Dracula』Kim Newman,1992/2011年。 創元推理文庫から出ていた『ドラキュラ紀元』の増補完全版。 『ドラキュラ紀元一八八八』(Anno Dracula,1992) 改訳はされているも…

『モップの精は旅に出る』近藤史恵(実業之日本社文庫)★★★★☆

『モップの精は旅に出る』近藤史恵(実業之日本社文庫) キリコ・シリーズ第五作にして最終巻。以前のイラストレーター(飯田貴子)の描いたキリコの方が作中の描写に忠実だったのですが、別のかたに変わってしまいました。 「CLEAN.1 深夜の歌姫」(2014)★…

『中野のお父さん』北村薫(文春文庫)★★☆☆☆

『中野のお父さん』北村薫(文春文庫) 出版社に勤める女性編集者が、謎解きの得意な高校教師の父親に日常の謎を解いてもらう連作掌篇集です。分量から言っても内容から言ってもとにかく軽い。 円紫さんシリーズの〈私〉はまだ大学生だったので、初めて人間…

『七夜物語(上・中・下)』川上弘美(朝日文庫)★★☆☆☆

『七夜物語(上・中・下)』川上弘美(朝日文庫) 川上弘美による児童文学。 クラスメイトとはうまくつきあっているけれど、本が好きなことは隠している小学四年生の鳴海さよ。エキセントリックで嫌いなものが多い母親にも図書館通いを隠しています。離婚し…

『ミステリマガジン』2023年11月号No.761【ポケミス創刊70周年記念特大号】

『ミステリマガジン』2023年11月号No.761【ポケミス創刊70周年記念特大号】「特別鼎談 ポケミス創刊70周年によせて」平岡敦×杉江松恋×阿津川辰海 そういえば最近ポケミスあんまり読んでないかも。阿津川氏が装丁も内容も褒めていた『アックスマンのジャズ』…

『傍聞き(かたえぎき)』長岡弘樹(双葉文庫)★★☆☆☆

『傍聞き(かたえぎき)』長岡弘樹(双葉文庫) 日本推理作家協会賞受賞作を含む純粋な短篇集です。あまりにもわざとらしすぎる構成を、巧みだと取るか大根役者だと取るかで評価は別れそうです。 「迷走」(2008)★★★☆☆ ――消防無線のアラームが鳴り、現場へ…

『心のなかの冷たい何か』若竹七海(創元推理文庫)★★☆☆☆

『心のなかの冷たい何か』若竹七海(創元推理文庫) 『Something Cold in My Heart』1991年。 若竹七海の第二作。『ぼくのミステリな日常』と同じく作者と同名の若竹七海が主人公のシリーズです。 女同士の友情から事件の真相を明らかにしようと奮闘する姿は…

『群青のタンデム』長岡弘樹(ハルキ文庫)★★★☆☆

『群青のタンデム』長岡弘樹(ハルキ文庫)★★★☆☆ 警察学校同期でライバルだった戸柏耕史と陶山史香の二人の、つかず離れず共に歩んだ警察官人生を描いた連作長篇。初出は『月刊ランティエ』2010年4月号〜2012年5月号。 「第一話 声色」★★★☆☆ ――パナマ帽の老…

『線の波紋』長岡弘樹(小学館文庫)★★☆☆☆

『線の波紋』長岡弘樹(小学館文庫) 誘拐事件と殺人事件を巡る四篇を収めた連作長篇です。 「談合」★★☆☆☆ ――県庁に勤める白石千賀は再婚して以来たびたび疑問を抱いてしまう。三つ年下の哲也はこんなくたびれた中年女に本当に愛情を抱いているのだろうか。…

『ハロー、アメリカ』J・G・バラード/南山宏訳(創元SF文庫)★★★★☆

『ハロー、アメリカ』J・G・バラード/南山宏訳(創元SF文庫) 『Hello America』J. G. Ballard,1981年。 気候の大変動により灼熱の砂漠と化して崩壊したアメリカ。放射能漏れの原因究明と残された資源を求めてヨーロッパからニューヨークに上陸した探…

『家蠅とカナリア』ヘレン・マクロイ/深町眞理子訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『家蠅とカナリア』ヘレン・マクロイ/深町眞理子訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆ 『Cue for Murder』Helen McCloy,1942年。 解説にも書かれているようにサスペンス派という印象の強かったマクロイですが、本書は至極まっとうな謎解きものでした。 刃物研磨店に夜…

『紙魚の手帖』vol.12 2023 AUGUST【GENESiS 夏のSF特集】

『紙魚の手帖』vol.12 2023 AUGUST【GENESiS 夏のSF特集】「第14回創元SF短編賞 選評」宮澤伊織・小浜徹也(東京創元社編集部)「竜と沈黙する銀河」阿部登龍(2023)★★☆☆☆ ――遙か宇宙の知的文明から届いた〈レコード〉により食糧問題は解決し、家畜は愛玩…

『殺さずにはいられない 小泉喜美子傑作短篇集』小泉喜美子(中公文庫)★★★☆☆

『殺さずにはいられない 小泉喜美子傑作短篇集』小泉喜美子(中公文庫)★★★☆☆ 同題の短篇集に単行本未収録だったショートショート集を収録して復刊したものです。『痛みかたみ妬み』が好評だったための復刊第二弾とのこと。編者による解説と、山崎まどかによ…

『文学少女対数学少女』陸秋槎/稲村文吾訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★☆☆☆

『文学少女対数学少女』陸秋槎/稲村文吾訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『文学少女对数学少女』陆秋槎,2019年。 これまでの二作と比べて訳が格段に読みやすくなっています。訳者の腕が上がったのか、高校生同士の会話劇だと訳しやすいのか。 ただ内容はこれ…

『あと十五秒で死ぬ』榊林銘(東京創元社 ミステリ・フロンティア)★★★☆☆

『あと十五秒で死ぬ』榊林銘(東京創元社 ミステリ・フロンティア) ミステリーズ!新人賞佳作「十五秒」を筆頭に、何らかの形で「あと十五秒で死ぬ」状況にある作品4篇が収録された短篇集です。そのため「たのしい学習麻雀」は収録されていません。 「十五…


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