『S-Fマガジン』2021年12月号【スタニスワフ・レム生誕100周年/ハヤカワ文庫JA総解説PART3[1001〜1500]】

「原子の町」スタニスワフ・レム/芝田文乃訳(Miasto Atomowe,Stanisław Lem,1947/2005)★★★☆☆ ――テムズ川の水位が例を見ないほど下がっていた八月、私は上司から呼ばれた。「君はアメリカに三年いたことがあったな? 英語以外ではドイツ語を話せるな?」…

『ずうのめ人形』澤村伊智(角川ホラー文庫)★★★★★

2016年初刊。 『ぼぎわんが、来る』に続く、比嘉姉妹もの第二作です。 本書は『リング』を意識したものになっており、『リング』が映画化されて貞子が市民権を得ている、現実と変わらない世界が舞台になっていました。 オカルト雑誌のライター湯水が目を抉ら…

『虹のような黒』連城三紀彦(幻戯書房)★★★★☆

2002年から2003年に雑誌連載されたまま単行本化されていなかった長篇作品が、連載時の著者の挿絵入りで刊行されたものです。帯に“最後の未刊長篇”とあるように、これですべての長篇は単行本化されたことになります。 商業誌に連載されていた以上は未定稿とい…

『クドリャフカの順番』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

『Welcome to KANYA FESTA!』2005年。 ついに部誌の文集『氷菓』が完成し、初期三部作も文化祭とともに幕を閉じました。 古典部員は「カンヤ祭」の名称を使わないことにしているはずですが、英題が「KANYA FESTA」となっているところからすると、『氷菓』販…

『SFショートストーリー傑作セレクション 時間篇 人の心はタイムマシン/時の渦』日下三蔵編/456絵(汐文社)★★☆☆☆

東雅夫編〈文豪ノ怪談ジュニア・セレクション〉の汐文社から、日下三蔵編によるSFセレクションが刊行されています。日本SF黎明~黄金期の作品はほぼ読んだことがないし、こういう機会がなければ読む気もなかったので良い機会でした。 「御先祖様万歳」小…

『愚者のエンドロール』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『Why didn't she ask EBA?』2002年。 古典部シリーズ第二作。 二年F組が文化祭の演し物で作ることになったミステリー映画は、脚本家の本郷真由が急病になってしまい結末が不明のまま。そこで白羽の矢を立てられたのが、映画プロジェクトの代表者・入須冬美…

『氷菓』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『氷菓』米澤穂信(角川文庫) 『You can't escape』2001年。 古典部シリーズをまとめて読もうと思ったものの、設定を忘れていたので第一作を読み直しました。 現在は英題が『The niece of time』に変更されているそうです。「時の娘」ならぬ「時の姪」、真…

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ)★★☆☆☆

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ) 『The Rising of the Moon』Gladys Mitchell,1945年。 サイモンとキースの兄弟が町に来たサーカスを楽しみにしていたとき、サーカスの女芸人がメッタ刺しにして殺されるという事件が…

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫)★★☆☆☆

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫) 昭和! 青春の甘酸っぱさよりも、昭和のおっさん臭さを感じてしまいました。実際、三十代の男が十五年前を回想しているという設定なので、おっさん臭いのも仕方ありません。 入院中に窓の外の家を覗き見ると…

『チェコSF短編小説集』ヤロスラフ・オオルシャ・jr.編/平野清美編訳(平凡社ライブラリー)★★☆☆☆

『チェコSF短編小説集』ヤロスラフ・オオルシャ・jr.編/平野清美編訳(平凡社ライブラリー) 英米以外のSFの翻訳は少ないうえに、訳されたものの多くはSFというよりも幻想小説や風刺小説だったりするのですが、懸念は的中し、本書収録作も前半はそん…

『ミステリマガジン』2021年11月号No.749【機龍警察 白骨街道/ハヤカワ文庫JA総解説PART2】

『ミステリマガジン』2021年11月号No.749【機龍警察 白骨街道/ハヤカワ文庫JA総解説PART2】 予告されていた古畑任三郎特集は延期され、代わりに『機龍警察 白骨街道』特集に。予定変更が急だったためなのかどうか、本人のほかは作家や評論家ではなく書店…

『不在の騎士』イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚)★★★★★

『不在の騎士』イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚) 『Il cavaliere inesistente』Italo Calvino,1959年。 鎧のなかに肉体は存在せず意思の力によって存在している――という観念的な設定からは思いも寄らないユーモア小…

『月の文学館 月の人の一人とならむ』和田博文編(ちくま文庫)★★★☆☆

『月の文学館 月の人の一人とならむ』和田博文編(ちくま文庫) 月がテーマの日本文学アンソロジー。ヒグチユウコによるカバーイラストに味があります。月の形を巻き貝という生き物で表現する発想と目の表情。姉妹編に『星の文学館』も。学者さんが編纂して…

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫)★★★★☆

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫) 1978年初刊。 「クライム&ミステリー」「走れ、ウィリー」ヘンリー・スレッサー/矢野浩三郎訳(Run, Willie Run,Henry Slesar,1959)★★★★★ ――ウィリーは監房の寝床に腰かけて、足を前後に動か…

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳(ハヤカワepi文庫)★★★★★

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳(ハヤカワepi文庫) 『The Road』Cormac McCarthy,2006年。 荒廃した世界で旅を続けながら生きてゆく父と息子の物語です。 いわゆる終末ものの多くで描かれるのが、変容してしまった世界であったりサバ…

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 霊』東雅夫編/金井田英津子絵(汐文社)★★★☆☆

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 霊』東雅夫編/金井田英津子絵(汐文社)「あれ」星新一(1975)★★★★☆ ――あるホテルの一室で、出張中の男が眠っていた。静かな真夜中。男はふと寒気を感じて目をさました。そばに人のけはいを感じる。一メートルほどはな…

『図書館の魔女 烏の伝言(上・下)』高田大介(講談社文庫)★★★★★

『図書館の魔女 烏の伝言(上・下)』高田大介(講談社文庫)★★★★★ 『図書館の魔女』の続編は、マツリカもキリヒトも出てこない場面からスタートします。前作での混乱によりニザマ国の一姫君と近衛兵たちが山の民・剛力の力を借りて亡命行の真っ最中でした。…

『緋の堕胎 ミステリ短篇傑作選』戸川昌子/日下三蔵編(ちくま文庫)★★★☆☆

『緋の堕胎 ミステリ短篇傑作選』戸川昌子/日下三蔵編(ちくま文庫)★★★☆☆ 創元・中公の小泉喜美子やちくまの仁木悦子に続いて刊行された、同じ日下三蔵編による戸川昌子の傑作選です。戸川昌子は『大いなる幻影』『火の接吻』『蜃気楼の帯』を読んだことが…

『幻想と怪奇』7【ウィアード・テールズ 恐怖と冒険の王国】

『幻想と怪奇』7【ウィアード・テールズ 恐怖と冒険の王国】「『ウィアード・テールズ』――ある雑誌の歴史と、表紙画家たちの横顔」 パルプ雑誌のカバーワークの良さはよくわかりません。 「パルプ・ホラーが映しだすもの」牧原勝志 「レッドフック街怪事件…

『ハコヅメ』18、『スインギンドラゴンタイガーブギ』5、『紙一重りんちゃん』1、『勇気あるものより散れ』1

『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』(18)泰三子(講談社モーニングKC) 時系列的には『別章アンボックス』の続きです。西川係長とカナがいなくなったことは、さらっと触れられていました。如月部長がけっこうガチで川合に気があるようで驚きます。牧高の変態…

『S-Fマガジン』2021年10月号No.747【1500番到達記念特集 ハヤカワ文庫JA総解説PART2[502〜998]】

『S-Fマガジン』2021年10月号No.747【1500番到達記念特集 ハヤカワ文庫JA総解説PART2[502〜998]】「ハヤカワ文庫JA総解説 PART2 [502〜998]」 「『日本SFの臨界点』編纂の記録2021」伴名練 中井紀夫・新城カズマ・石黒達昌の短篇集について。オ…

桜庭一樹氏と鴻巣友季子氏の書評をめぐるやりとりについて

ここ何日かで急に「読み」がどうこうという話題が増えたので何だろうと思ったら、鴻巣友季子氏が朝日新聞に寄稿した『少女を埋める』評に対し、作者の桜庭一樹氏が反論しているということのようです。 桜庭氏の最初の反論がTwitterだったこともあり、情報が…

『伊藤くんA to E』柚木麻子(幻冬舎文庫)★★★★☆

『伊藤くんA to E』柚木麻子(幻冬舎文庫) 自意識過剰で自信家で傍若無人で共感力がなく野心家で――というキャラはこれまでの柚木作品にもいないわけではありませんでしたが、女から見たそんな男が登場しているのが本書の特徴で、とにかく気持ち悪い!頭おか…

『幻影の牙』戸川昌子(双葉文庫)★☆☆☆☆

『幻影の牙』戸川昌子(双葉文庫) 1970年初刊。 ミステリではなく経済小説でした。詐欺師でもある漁色家の男が美容院業界に狙いをつけて、狙った女と金をモノにしようとするという話なのですが、びっくりするほどつまらない内容でした。 この手の話の常とし…

『黒いアリバイ』ウィリアム・アイリッシュ/稲葉明雄訳(創元推理文庫)★★★★☆

『黒いアリバイ』ウィリアム・アイリッシュ/稲葉明雄訳(創元推理文庫) 『Black Alibi』Cornell Woolrich,1942年。 『黒衣の花嫁』『黒いカーテン』に続く〈ブラックもの〉の第三作です。 目次が被害者名になっており、『黒衣の花嫁』『喪服のランデヴー…

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ トム・ストッパードIII』トム・ストッパード/小川絵梨子訳(ハヤカワ演劇文庫42)★★★☆☆

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ トム・ストッパードIII』トム・ストッパード/小川絵梨子訳(ハヤカワ演劇文庫42) 『Rosencrantz and Guildenstern are dead』Tom Stoppard,1966年。 シェイクスピアの本篇ではハムレットの陰謀(?)の犠牲…

『猟犬』ヨルン・リーエル・ホルスト/猪股和夫訳(早川書房 ポケミス1892)★★★☆☆

『猟犬』ヨルン・リーエル・ホルスト/猪股和夫訳(早川書房 ポケミス1892) 『Jakthundene』Jørn Lier Horst,2012年。 ポケミスでは2作目となるノルウェーの作品で、ドイツ語からの重訳です。スウェーデンと違ってノルウェー語翻訳者って育っていないのか…

『パリ警視庁迷宮捜査班』ソフィー・エナフ/山本知子・川口明百美訳(早川書房ポケミス1943)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班』ソフィー・エナフ/山本知子・川口明百美訳(早川書房ポケミス1943) 『Poulets grillés』Sophie HÉNAFF,2015年。 裏表紙のあらすじには「「フランスの『特捜部Q』」と評される」と書かれていますが、どこでそう評されているのか…

『名探偵の密室』クリス・マクジョージ/不二淑子訳(早川書房ポケミス1946)★★☆☆☆

『名探偵の密室』クリス・マクジョージ/不二淑子訳(早川書房ポケミス1946) 『Guess Who』Chris McGeorge,2018年。 テレビの探偵番組で人気の探偵と五人が死体とともにホテルの一室に閉じ込められ、三時間以内に五人のなかから犯人を見つけ出さないとホテ…

『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』末吉里花・文/中川学・絵(山川出版社)★★☆☆☆

『じゅんびはいいかい? 名もなきこざるとエシカルな冒険』末吉里花・文/中川学・絵(山川出版社) 泉鏡花の絵本でお馴染みの中川学が絵を担当している絵本です。 地球の危機に対しこざるが或る兄妹を世界各国の合理産業の現場に連れ出して見せて、エシカル…


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