『探偵は友人ではない』川澄浩平(東京創元社)★★☆☆☆

『探偵は友人ではない』川澄浩平(東京創元社) 不登校の少年と幼なじみの中学生を中心とした日常の謎と瑞々しい感性が印象深かったデビュー作『探偵は教室にいない』の続編です。ですが、どうしちゃったの……というくらいに出来が悪くなっていました。正確に…

『BUTTER』柚木麻子(新潮文庫)★★★★★

『BUTTER』柚木麻子(新潮文庫) 木嶋佳苗事件をモデルにしたという、これまでの柚木作品のイメージからはまったく想像できない内容紹介に、戸惑いを感じずにはいられません。 蓋を開けてみればいつもの柚木印ではありました。週刊誌記者の町田里佳は、友人…

『夏の花・心願の国』原民喜(新潮文庫)★★☆☆☆

『夏の花・心願の国』原民喜(新潮文庫) 原民喜というと原爆文学というイメージしかありません。編者の大江健三郎も一作家一テーマという持論によって戦後作品だけを採用しています。わたしの持っている『新潮文庫20世紀の100冊』というシリーズはカバーに…

『犯罪者書館アレクサンドリア~殺人鬼はパピルスの森にいる~』八重野統摩(メディアワークス文庫)★★★☆☆

『犯罪者書館アレクサンドリア~殺人鬼はパピルスの森にいる~』八重野統摩(メディアワークス文庫) 日常系を得意としてきた著者による第三作目は、裏社会(というより架空世界)を舞台にした謎解きものです。 父親の残した六千万円の借金のかたに身柄を買…

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960) 『Rester groupés』Sophie Hénaff,2016年。 パリ警視庁迷宮捜査班シリーズ第二作です。ユーモアミステリみたいな副題はどうにかならなかった…

『南風吹く』森谷明子(光文社文庫)★★★★☆

『南風吹く』森谷明子(光文社文庫) 俳句甲子園を題材にした『春や春』の続編――というか、同じ大会を舞台にした別高校の話です。 本書の方がドラマ性もあって楽しめました。 過疎の島なのでまずは出場人数が集まらないところからスタートするのですが、短歌…

『ミステリマガジン』2023年3月号No.757【ジョルジュ・シムノンの世界】

『ミステリマガジン』2023年3月号No.757【ジョルジュ・シムノンの世界】 なぜか『メグレと若い女の死』の新訳が刊行予定だったのは、なるほど映画化されたからでした。次いで『サン・フォリアン寺院の首吊人』、『メグレと超高級ホテルの地階』も新訳刊行予…

『紙魚の手帖』vol.08 2022 DECSEMBER【読切特集「冠婚葬祭」】

『紙魚の手帖』vol.08 2022 DECSEMBER【読切特集「冠婚葬祭」】「倫敦スコーンの謎」米澤穂信 ★★★☆☆ ――小佐内さんからメッセージが届いた。〈スコーンを見ます〉。放課後、小佐内さんに先導されて喫茶店に向かった。「それで、何があったの」「スコーンがお…

『星降り山荘の殺人』倉知淳(講談社文庫)★★☆☆☆

『星降り山荘の殺人』倉知淳(講談社文庫) 各章の冒頭に著者の説明書きがあり、それが一種の読者への挑戦のようになっていました。ここに伏線があります、とか、この人は犯人ではありません、とか。そして当然のごとく、それが【ネタバレ*1】にもなっていま…

『不安な童話』恩田陸(新潮文庫)★★★★☆

『不安な童話』恩田陸(新潮文庫) 二十五年前に夭逝した画家で童話作家の高槻倫子の展覧会。語り手の万由子は絵を見て既視感を覚え、自分が刺し殺される幻覚を見て気を失ってしまいます。 絵を見て知らないはずの記憶が甦ってくるという、クリスティを髣髴…

『死刑執行人の苦悩』大塚公子(角川文庫)★☆☆☆☆

『死刑執行人の苦悩』大塚公子(角川文庫)★☆☆☆☆ 前書きも何もなくいきなり本文が始まります。なぜ本書を書くにいたったのかという動機も何もないため、スタートから取り残されてしまいました。 取り残されたところに、死刑執行が秘密裡におこなわれるのは「…

『幻想と怪奇』12【イギリス女性作家怪談集 メアリー・シェリーにはじまる】

『幻想と怪奇』12【イギリス女性作家怪談集 メアリー・シェリーにはじまる】「A Map of Nowhere 11:メアリー・シェリー「変化」のジェノヴァ」藤原ヨウコウ 『新編怪奇幻想の文学1 怪物』より、とあります。よって今回は本文は無し。 「イギリス怪奇小説・…

『鹿の王 水底の橋』上橋菜穂子(角川文庫)★★★★☆

『鹿の王 水底の橋』上橋菜穂子(角川文庫) 『鹿の王』の続編です。とは言っても片方の主人公であったヴァンやサエたちは登場せず、ホッサルとミラルたちの話になります。 前作で結局は袂を分かったかと思われた清心教祭司医の真那とは、その後も良好な関係…

『鹿の王 全4巻』上橋菜穂子(角川文庫)★★★★☆

『鹿の王 全4巻』上橋菜穂子(角川文庫) 戦いに敗れ奴隷となっているヴァンが眠っていると、岩塩採掘場に狼か山犬のようなものが襲ってきました。咬まれた者たちは全滅し、なぜかひとり生き残ったヴァンは匿われていた赤子を連れて逃げ出します。 古王国の…

『短編ミステリの二百年 1』モーム、フォークナー他/小森収編(創元推理文庫)★★★★☆

『短編ミステリの二百年 1』モーム、フォークナー他/小森収編(創元推理文庫) 『The Long History of Mystery Short Stories vol.1』2019年。 江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集(世界短編傑作集)』の続編とも姉妹編とも補遺編とも言うべきアンソロジー…

『週刊文春エンタプラス+』

『週刊文春エンタ+』熊倉献「ピザと踊れ」目当てに購入。『ルパン三世VSキャッツ・アイ』配信を1月27日に控えての、北条司インタビューと書き下ろしポスター付き。『トリリオンゲーム』『Dr. STONE』『アイシールド21』の原作者・稲垣理一郎インタビュー。…

『S-Fマガジン』2023年02月号No.755【AIとの距離感】

『S-Fマガジン』2023年02月号No.755【AIとの距離感】「AI絵本 わたしのかきかた」文:野﨑まど/絵:深津貴之、「メイキング・オブ・AI絵本」深津貴之 当然ですがAIといってもSF小説に出てくるような完全自律型ではなく、人間が細かく条件を入力…

『風柳荘のアン』モンゴメリ/松本侑子訳(文春文庫)★★★☆☆

『風柳荘のアン』モンゴメリ/松本侑子訳(文春文庫) 『Anne of Windy Willows』L. M. Montgmery,1936年。 村岡花子訳では『アンの幸福』のタイトルで知られたアン・シリーズの第4作ですが、書かれたのは『炉辺荘のリラ(アンの娘リラ)』よりあとの晩年…

『傷痕』桜庭一樹(文春文庫)★★★☆☆

『傷痕』桜庭一樹(文春文庫) 巻末の参考文献を見てもわかる通り、マイケル・ジャクソンをモデルにしたキング・オブ・ポップを取り巻く人々をめぐる連作長篇です。マイケルは日本に移植され、ザ・タイガースとフィンガー5を思わせる「セクシーな青年たちに…

『悪魔のような女』ボアロー、ナルスジャック/北村太郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『悪魔のような女』ボアロー、ナルスジャック/北村太郎訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『Celle qui n'était plus』Boileau-Narcejac,1952年。 映画『悪魔のような女』の原作。シャロン・ストーンによるリメイク版に合わせての文庫化だったようで、表紙や袖…

『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎(幻冬舎文庫)★★★★☆

『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎(幻冬舎文庫) 恋愛を中心とした、各短篇に共通する人物の登場する連作短篇集です。 「アイネクライネ」(2007)★★☆☆☆ ――僕が今どきネットではなく街頭アンケートをおこなっているのは、奥さんと娘さんに逃げら…

『驚愕遊園地 日本ベストミステリー選集』日本推理作家協会編(光文社文庫)★★★☆☆

『驚愕遊園地 日本ベストミステリー選集』日本推理作家協会編(光文社文庫) 2010~2013年のあいだに発表されたミステリー短篇のなかから選ばれたアンソロジー。麻耶雄嵩による木更津もの「おみくじと紙切れ」目当てで購入しました。作家自選(の二作から編…

『敗者の告白』深木章子(角川文庫)★★☆☆☆

『敗者の告白』深木章子(角川文庫) 解説にもあるとおり、一人【ネタバレ*1】でした。この仕掛けは大がかりであればあるだけ無理が出てきますね。原典は短篇だからこそのスマートさなのだと思います。さすがに【ネタバレ*2】がいないと危なっかしくて実現は…

『わしらは怪しい探険隊』椎名誠(角川文庫)★☆☆☆☆

『わしらは怪しい探険隊』椎名誠(角川文庫) 久しぶりに読み返しましたが、いま読むとキツイ。。。昭和だなあ。 まったく中身のない内容を説明的な饒舌体で延々と紡いでゆくスタイルは、いま読むと一部のラノベにも通ずるような気もします。 SFマガジンに…

『塵クジラの海』ブルース・スターリング/小川隆訳(ハヤカワ文庫FT)★★☆☆☆

SF

『塵クジラの海』ブルース・スターリング/小川隆訳(ハヤカワ文庫FT) 『Involution Ocean』Bruce Sterling,1977年。 サイバーパンクの雄ブルース・スターリングのデビュー作。〈プラチナ・ファンタジイ〉の一冊です。 スペース・オペラとサイエンス・フ…

『麻雀放浪記(一)青春編』阿佐田哲也(角川文庫)★★★☆☆

『麻雀放浪記(一)青春編』阿佐田哲也(角川文庫) 戦後直後、語り手である18歳の阿佐田哲也青年は、仕事もないまま日々を暮らしていましたが、戦時中に工場で知り合った工員・上州虎に誘われて、博打の世界に足を踏み入れます。 第一章、サイコロ賭博のチ…

『影のオンブリア』パトリシア・A・マキリップ/井辻朱美訳(ハヤカワ文庫FT)★★★☆☆

SF

『影のオンブリア』パトリシア・A・マキリップ/井辻朱美訳(ハヤカワ文庫FT) 『Ombria in Shadow』Patricia A. McKillip,2002年。 2003年度世界幻想文学大賞受賞作。〈プラチナ・ファンタジイ〉の一冊です。 いわゆるファンタジーらしいファンタジーで…

『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆

『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆ 自作朗読CD付き。 各種媒体に発表された短めの書評が中心となっているので、通常のエッセイ集だと思って読むと統一感もないし、内容的に物足りなさを感じる文章もありました。 それはそれとして。 北村薫の文章をいつか…

『ミステリマガジン』2023年1月号No.756【ミステリが読みたい!2023年版】

『ミステリマガジン』2023年1月号No.756【ミステリが読みたい!2023年版】 ものの見事に知らない作品ばかりで驚きました。ミステリマガジンは書評欄も含めて毎号読んでいるはずなのに。自分のアンテナの感度の低さに呆然とします。『同志少女』は本誌で冒頭…

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Hound of the Baskervilles』Arthur Conan Doyle,1901年。 ドイルが「最後の事件」でホームズを殺してから「空家の冒険」で復活するまでのあいだに書かれた長篇作品で、「最後の事件」以…


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