『特盛!SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話』大森望 ★★★☆☆

 むか〜し『SFマガジン』に連載されていたコラムを一冊にまとめたもの。著者のまとめ方がうまいのかわたしが前評判を真に受けすぎたのか、思っていた以上に翻訳に関わる話が多かったです。

 素人翻訳やってる身としては、視点を固定して代名詞を省略するという方法は、誰に言われるでもなくいつのまにかおこなっていたのだけれど、改めてプロのテクニックの一つだときっちり言われるとホッとする。「彼が彼女に手渡した」とかを「彼からもらった」とかにするのは結構ためらいや後ろめたさがあったのだ。主語を勝手に変えちゃっていいのかな、とかって。

 会話の改行は情けないことに初耳でした。わたしは今まで原文通りにやってました。いや確かに違和感はあるので、閉じカッコのあとを一文字分空けたりして。そっか改行していいんですね。――というわけで、翻訳講座としてもちゃんと役に立ってます。

 翻訳技術だけじゃなくて、副題にもあるとおり翻訳業界についての話も多いので、プロの翻訳家になりたいという人にも役に立つ(かもしれません)。

 SF初心者にとっては、SFガイドとしても役に立ちます。というかそっちがメインかな。大森さん自身が訳した作品とか、知り合いが訳した作品の話がぽろぽろ出てくるので読みたい本もたくさん出てきます。

 大森氏の他の著作と同様に、ちょっとごった煮の感は否めないけれど、それだけに、どんな人が読んでも必ず一か所くらいは面白い部分があるんじゃないかと思います。
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特盛!SF翻訳講座
大森 望著
研究社 (2006.3)
ISBN : 4327376965
価格 : ¥1,890
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