『ネジ式ザゼツキー』島田荘司(講談社文庫)★★★★☆

 解説を佳多山大地氏が書いていたので期待して買ったのに、たいしたことは書いてなかった。

 辰巳四郎氏が亡くなったことを改めて思い知りました。めちゃくちゃ好き、というほどではなかったのだけれど、今回のカバー装画を見てみると偉大さを思い知らされます。似て非なるもの。かっこわるい。菊池信義とか鈴木成一とか、同じようなデザインばかり濫発しているよう(にわたしには見える)人たちも、似て非なるものを見せられて初めてその偉大さがわかるのだろうか。

 読み返してみるのは何度か目だけど、やっぱり御手洗とハインリッヒの会話ってつじつまのあってないところがあるように思う。そんな話はじめて出てきただろ、とか、それさっき言ったことと違うの、的なことが多かったような。『ネジ式』は近年の作品中ではできのいい方だから、そういう点には目をつぶっているんだけど、最近(といってもここ十年くらいですか)の島荘にはそういう書き漏れみたいな部分が多すぎる。もしやボケ?

 ラストが甘ちゃんだけど、まあそれは昔からでしょう。嬉しいのは、こういう無茶苦茶な謎自体が実はひさしぶりなんですよね。幽霊がどう、とか、不可能犯罪がどう、とかじゃなく、型にはまらない奇想天外な謎。こういう謎を発想できるかという時点で、まだ誰も島荘に追いついてない。というかそういう謎をこしらえようという発想自体がないんでしょうね。本格ミステリとしての出来うんぬんというのはおいといて、いま日本でいちばん奇っ怪な小説かもしれない。

 記憶の一部を失った男が書いた奇妙な童話。ネジ式の関節を持つ妖精、大きな蜜柑の樹上にある村…。妄想としか思えない男の話から、御手洗が導き出した真相とは? 御手洗潔が童話に秘められた殺人事件に挑む。
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ネジ式ザゼツキー
島田 荘司〔著〕
講談社 (2006.10)
ISBN : 4062755327
価格 : ¥920
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