『紳士同盟』ジョン・ボーランド/松下祥子訳(ポケミス1788)★★☆☆☆

 シブイ映画のシブイ原作を出す〈ポケミス名画座〉。ちょっと好きなシリーズなのだが、さすがにこの作品は古くさすぎかな。古き良き、ってほどおっとりもしてないんだよね。

 ふだん本を読むときにはそれほど視点を気にしたりはしない方なんだけど、こりはさすがにひどかった。二人の人間が話しているときに、突然話相手に視点が移るからねー。魂乗り移ったのかと思ったよ(^^;。

 サスペンスもあんまりない。この手の話は、キモである計画が(1)奇想といっていいほど面白いか(2)地味だけど実現可能なほど緻密で計画的か、のどちらかでなくてはならないと思うんだけど、地味で且つどうってことないんだよなぁ。。。それぞれの得意分野ってのも生かし切れてないように思うし、誰が誰だが区別つかないし、副主人公級だったレインジャーホープすら途中からその他1になっちゃうし。要するにキャラクターにしても話の筋にしても平板なのだ。

 残念ながらこの作者は小説がド下手なのだね。もっと面白くてもいい題材なのにもったいない。

 ただ、紳士の仮面をかぶった(?)一行が、最後に門の方へ駆け出したっていうシーンは、キャラが立ってないしみんな番号で呼ばれてるしでもともと顔が見えないだけに、なんだかそこだけ不条理小説みたいでよかったよ。安部公房みたい。

 しかし裏表紙あらすじにしろ解説にしろ、この作品の「イギリスらしさ」をアピールしてるのが腑に落ちない。それじゃあまるで、ほかの国民は人を殺しまくるし規律はなってないし責任も取らないみたいじゃないか。瀬戸川猛資氏も『夜明けの睡魔』で「イギリス魂」がらみで本作をあげていたけれど、あれは映画版の方だった。たぶん映画版は「ジョンブル魂が横溢」なんだろうなと思ふ。

 名誉ならざる事情で退役した元軍人たちのもとに次々と奇妙な郵便物が届く。半分に切った紙幣と一冊の犯罪小説、そして次の日曜日にロンドンのカフェへ出頭すべしという指示――こうして九人の元軍人が集合した。彼らを招集したのはヘムリングソン元少佐。そして彼は一同に驚くべき提案をする。この十人で白昼堂々の銀行襲撃を行なおうというのだ。獲物は一人最低でも十万ポンド! 最初は半信半疑だった男たちも、緻密な計画と訓練につきあううちに団結を深める。そして決行の日……ジョンブル魂が横溢する異色強盗団の顛末を描く傑作犯罪小説。(裏表紙あらすじより)

 『The League of Gentlemen』John Boland,1958年。
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紳士同盟
ジョン・ボーランド著 / 松下 祥子訳
早川書房 (2006.6)
ISBN : 4150017883
価格 : ¥1,050
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