リニューアル後の二号目。ジュヴナイル・ミステリ特集。
「インタビュー 上橋美穂子の世界で遊ぶ」
最近急激にブームになってるみたいですね。ミステリは、ファンタジーより読んでいるかも、だそうです。
「紫の鳥の秘密(前編)」エラリイ・クイーンJr./駒月雅子訳(The Purple Bird Mystery,Ellery Queen Jr.,1965)
――「ゴルフ道具は引っ越し屋さんに預けなかったんだよ!」「そうだと思ったよ」ジュナは言った。「門のところで会ったとき、きみはもうクラブを持ってたから。あのとき引っ越しトラックはまだ到着してなかった」「わあ、なんだかきみ、探偵みたいだね」
クイーンJr.名義のジュヴナイル代作長篇の一部。中・後編は次号以降。ジェームズ・ホールディングの作らしい。
「幽霊ジェームズ」池井戸潤★★★★☆
――その家を格安で買えたのは、幽霊が出るからだった。二階にある海の見える一室を「自分の部屋にしたい」といったのはレイだ。理由は簡単だ。そこには幽霊がいたからである。外人の幽霊だった。歳はまだ若い。なにかの理由で天国にいけなくなってしまったのだ。
ジュヴナイルということもあってか、謎解きや意外性よりも、子どもが「自分で調べること・考えること」を学ぶ傾向が強い、ジェントル・ゴースト・ストーリー。現代人が大人向け雑誌用に書いただけあって、一番フツーに読みやすい。
「エッセイ/創作で必要なことは、だいたい教室で学んだ」はやみねかおる
指導案の構成・書き直しは小説につながる?……というお話。
「エッセイ/すべての謎が解ける快感を見よ」北上次郎
上橋美穂子作品について。一般にはファンタジーとして扱われている上橋作品のミステリとしての読みどころ。
「モンキー・パズル」エドワード・D・ホック/木村二郎訳(The Monkey's Clew,Edward D. Hoch,1978)★★★☆☆
――霊長類研究室のノーラは、チンパンジーの檻の前にかかっている表示盤を指さした。「これを押すことで、コミュニケーションを取れるように、チンパンジーのマックスを訓練したのよ」
まあホックなんで、ジュヴナイルだとかどうだとかは関係なく、ホックです。あくまでSFミステリや異世界ミステリではない、というのがポイントだろうか。当たり前のことを失念してしまう、一種の盲点ものと言えなくもない。
「消えたサファイア」エドワード・D・ホック/木村二郎訳(The Stolen Sapphire,Edward D. Hoch,1978)★★★☆☆
――トミーは学校の科学祭に展示するヘビを届けに行った。そこには鉱物展示の一部として、高価なサファイアも置いてあった。
猿とか蛇とか(^^;。こちらはアリバイものというか、消去法の端正なミステリ。
「五つの不吉な盗みの謎」ロバート・アーサー/小林啓明訳(The Mystery of the Five Sinister Thefts,Robert Arthur,1963)★★★☆☆
――「どうしたの? 事故でもあったの?」蛇遣いのマダム・ウィニフレッドの蛇ベルが盗まれたのだ。大男の靴、小人の杖、カウボーイの投げ縄、サーベルの剣に続いて五つ目の盗難だった。なんの価値もないものをどうして盗むのだろう。
ヒッチコック劇場風(?)にヒッチコックのナレーション入りのジュヴナイル。これぞミステリというか、リアリズムのかけらもないミステリならではのロジックが冴えます。きっかけとなる手がかりも推理クイズみたいでわかりやすくていい。子どものころ読んでたらきっとはまってたとおもう。
「エッセイ/幻のジュヴナイル・ミステリを探って」松坂健
ここ何年かで未訳作品の紹介もぞくぞくと進んでいますが、中島河太郎『推理小説ノート』リストに掲載の唯一のジュヴナイル・ミステリについて。
「大人が読んでも面白いジュヴナイル・ミステリ」森英俊
ロデリック・ジェフリーズ『ダン警部の24時間』が面白そう。タイトルからわかるとおりタイム・リミットもの。誘拐された息子を助けたくば明日の裁判で偽証しろと脅迫されたダン警部。裁判までに息子を助け出すことができるのか!?
ジュヴナイル特集はここまで。
「監督インタビュー 映画『リトビネンコ暗殺』」
情報の制限かぁ。ベタにリアルだな。
「迷宮解体新書 第2回」門井慶喜
「私の本棚 第2回」松坂健
ご本人はいろいろおっしゃってますが凄い蔵書です。
「私もミステリの味方です 第2回」向井万起男
「独楽日記」佐藤亜紀(第2回 人生を誤ったひとのためのバルカン・ビート)
またチクリと余計なことを言ってらっしゃいます(^^)。
「新・ペイパーバックの旅 第23回=ゴールド・メダルの最初の百冊」小鷹信光
「書評など」
◆『MM9』、『ラナーク』、『ナツメグの味』など前からチェックしていたもの以外には面白そうなのがなかった。
◆いくら映画が専門だからって、ミステリ専門誌なのに映画で初めて京極夏彦を知るってのにびっくりしました。〈異世界としての戦後〉というアイデアは個人的には嫌いじゃない。それがうまく映像化されているかどうかは別の話だけど。
◆DVDが面白そうだな。アレック・ギネスの『カインド・ハート』[amazon]、時代劇サスペンス『天狗飛脚』。amazonで確認したら、ユニバーサル・セレクションということでピーター・セラーズの作品もDVD化されていた。おやシャーリー・マクレーンの映画もある。これは出費がかさみそう。bk1の新刊入荷案内みたいに、DVDの新作情報がわかるわかりやすいサイトってないのかな。
「追悼 菅野圀彦」深町眞理子・千田宏之
『ミステリマガジン』元編集長。
「ミステリ・ヴォイスUK 第2回 リーバスの引退」松下祥子
「スコットランドのある国会議員が、リーバスをやめさせないために警察官の退職年齢を(中略)引き上げようと提案した」ってのも、軽いジョークだと思うんですけどね。日本だとたかがUFO発言がなぜか大ごとになってしまうんですよねえ。。。聞き流せよおまえら_| ̄|○ あとはハリポタ作者が次はミステリに挑戦するとかしないとかいう噂が。
「日本映画のミステリライターズ 第18回」石上三登志
「ヴィンテージ作家の軌跡 第58回」長井明
「ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか? 第118回 誤導としての叙述トリック」
うが。紹介されてる連城作品を未読なので、ネタバレが怖くて今月は最後まで読んでません。
「夜の放浪者たち――モダン都市小説における探偵小説未満 第38回 稲垣足穂「瓶詰奇談」」野崎六助
「座談会連載 第2回 『新・世界ミステリ全集』を立ち上げる」北上次郎・新保博久・池上冬樹・羽田詩津子
しかしこれ、ほとんど作家の名前とタイトルを挙げているだけという、無茶苦茶な企画だなあ(^^;。面白いからいいんだけど。シンポ教授が決めることになった(のか?)短篇集のラインナップが楽しみ。
「クライム・コラム#298」オットー・ペンズラー
へえ〜。ノーマン・メイラーと死刑囚ジャック・アボットの保釈の話なんてまったく知らなかったよ。検索してみても日本語ではほとんどヒットしない。まあメイラー自体が忘れ去られてるってことか。
「ゴールデンアップル」真梨幸子(連作短篇『ふたり狂い』第5回)
『ポルトガルの四月』第05回 朝暮三文
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