『別冊文藝春秋』2008年1月号

プリンセス・トヨトミ万城目学
 ――会計検査院第六局副長松平元の身分は、公務員である。受験した全四万人のなかでの、トップ合格者だった。「どうしてウチに入ったのか?」と訊ねられ、「検査がしたかったからです」と簡潔に答えた。

 連載第一回。初めて読むが(『鴨川ホルモー』というタイトルのセンスで見限った)、ラノベなのか。用意していたネタを演じるみたいな会話はやめてほしいな。。。
 

「少年少女飛行倶楽部」加納朋子
 ――飛行クラブの活動内容。空を飛ぶことを目的とする。1、あくまでも「自分自身が」飛行することを旨とする。2、当然ながら、「落下」は「飛行」ではない。3.航空機やヘリコプターなどでの飛行は除外される。……

 そうか風船おじさんを知らない世代が出てきても不思議はないのだよな、と妙なところで溜息。さて飛ぶんでしょうか、飛ぶのを夢見る学園小説なのでしょうか、続きが楽しみです。これも新連載。
 

「うぐいす夏子、最後のさえずり」松井雪子
 ――「最後の一個です」と言うだけで、迷い顔の客には、まちがいなく売れていく。この手の女は、ある日鏡を見たときに、老けた、と驚愕し、すでにオバサンなのにオバサンになりたくないと心乱れ、カウントダウンがはじまった花の命を惜しむべく、今日からお洒落をしようと心に決めるが、若い頃からの積み重ねがないから似合うものもわからず、とりあえずデパートに駆け込んでくる。

 こういう饒舌な一人語り文体って、上手な人が書くとほんと面白い。OLの日常も人間ウォッチャーの観察日記に早変わり。ウォッチの対象に他人だけじゃなく自分も入っているから好感が持てるのだ。新連載。
 

「読書、あるいは優雅なる孤独」角田光代×桜庭一樹
 なんだか不思議な組み合わせだけど、角田さんが『八日目の蝉』というサスペンスっぽいものを書いたらしい。ミステリーをまったく知らなかったというのもすごいなあ。たいてい子ども向けの全集にはホームズあたりは入っているもの。いやでも児童文学のシリーズや全集が何種類か置いてあったウチが特殊なのかも。
 

「ドラゴン姥桜」田丸公美子(第一章 楽して子供を東大に入れる法)
 前半は皮肉も効いてて面白かったけど、後半はただの親バカ、果ては卒業(親の)文集に書いた間延びした文章をそのまま引用て。
 

『時砂の王』小川一水インタビュー
 邪馬台国を舞台にした、さかさまの「タイムパトロールもの」だそうです。
 

「0時限 3限め 雪の日」今日マチ子
 短篇漫画8本掲載。ふわふわともシュールともちがう、心温まる作品群です。オチのある漫画としては「慎重派」がいちばん好きです。「プレゼントの話」からいくつかは連作ですね。著者のホームページもありました。ここ http://diary.jp.aol.com/juicyfruits/

「にょっ記」穂村弘
 辞典といえば『新明解』がすっかり有名になってしまいましたが、さすが昭和9年、あなどりがたし。そのまんま清水義範のパロディみたいなところが素敵です。
 

「猫の一年」金井美恵子
 だめだ……。もはやこういう文体を読んでも何かのパロディみたいに感じてしまってまともに読めない自分がいる。。。

「多加志と比呂志」北村薫
 
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  『別冊 文藝春秋』2008年 01月号
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