「別荘の怪事件(別墅之怪)」「頭飾りの宝石(王冕珠)」「断指団ふたたび(断指余波)」「怪しい下宿人(怪房客)」「レポート(試巻)」「地獄の扉(地獄之門)」程小青

 はっきり言ってバカミスの宝庫です。

「別墅之怪」★★★☆☆

 犯人はなぜ幽霊を出したのか?というのがこの手の話の眼目なのに、真相がそのまんまだということに脱力。どの話も雰囲気はいかにもホームズっぽくていいんだけどね。。。→このサイトに「拙訳」あり。

 依頼人の別荘で、幽霊や火の玉の噂が絶えないのだという。ついには勇猛な見張りまでもが泡を食って逃げ出してしまった。まさか本当に幽霊はいるのか……?
 

「王冕珠」★★★☆☆

 これは変わり種。犯人に仕掛ける罠はお馴染みのものだが、そのあとに一ひねりある。そのひねり方が珍無類。困ったもんだ……。盗品を隠す時間的余裕がなかったことから隠し場を推理する手際は、一応のところ論理的。

 祝宴の最中、仏壇の珠玉が紛失した。現場に居合わせた霍桑は、犯人に罠を仕掛けるのだが……。
 

「断指余波」★★★☆☆

 結婚した包朗が久しぶりに霍桑の下宿を訪れるところからスタートする。こんなところまでホームズものである。「断指団」という長篇を踏まえたものらしいが、これはそういう話があったという程度の知識でもまったく問題ない。ただし、発端やサスペンスこそ魅力的だが、真相は尻すぼみにもほどがある。霍桑の機知が光っているといえばいえるけど。。。

 包朗の妻の弟が霍桑のもとを訪れた。いつの間にかポケットに切断された指が入っていたのだという。かつて捕らえられた断指団が復讐に来たのか……? だがなぜ妻の弟に? 包朗は汗を拭おうとポケットにハンカチを探った。するとなかから一本の指が! 二人ともその日は電車に乗っていた。ではそのときに? そこで霍桑が帰ってきた。どうやら断指団復活の噂はあるらしい。ついには霍桑のポケットからも指が現われた。
 

「怪房客」★★☆☆☆

 相変わらずくだらないというか、そのまんまの真相です。怪しい下宿人がやっぱり怪しかったという、ある意味で驚愕の真相! いやむしろ怪しさ倍増。最後に霍桑が教育について一席ぶつ、啓蒙小説っぽいところがこの話の眼目なのでしょうが、それにしてもけったいな作品でした。霍桑がおしゃべりなお婆さんが苦手だったり、包朗に捜査を命じておいて自分もこっそり捜査してたりと、ホームズらしさがそこかしこに見えます。

 依頼人のお婆さんは、アパートの借家人が犯罪者なのではないかと疑っていた。教員と名乗っているが、合わない服を着て、昼過ぎに起きて深夜に帰宅するという。人と話さないし、いつも鞄を大事に抱え、夜な夜な硬貨を数え、壁の隙間に目張りをしている。先日は台所からナイフが消え、また現われた。包朗が件の借家人を尾行してみたが、まかれてしまった。霍桑は意外な真相を口にするのだが……やがて、ついに殺人が!? 刑事たちは下宿人を捕まえたが……。
 

「試巻」★★☆☆☆

 またもバカバカしさ満点の真相が待ち受けています。いくつか霍桑ものを読んだ人なら、この真相は見当がつくでしょう。動機の面から思いつくままに学友を疑う包朗に対し、機会の面から一人一人検証していく霍桑の手法は、たとえ真相がバカバカしかろうともミステリとして論理的といえばいえるのですが。

 霍桑と包朗の大学時代の話です。包朗の書きあげたレポートが、ちょっと目を離した隙になくなってしまった。包朗は霍桑に相談した。そう言えば以前にちょっとトラブった学友が入って来たが……いや、近づいたのは三人いた。
 

「地獄之門」★★☆☆☆

 毎度お馴染みの脱力する結末。タイトルの意味は霍桑が最後にぶつ説教のなかで明らかにされます。この種のジャンルを形成しているくらいの有名な型なのですが、ミステリとしては論理の抜け落ちただけの、幽霊は実は枯尾花だった的な作品です。これまで読んだところでは、霍桑ものは、そのまんまの真相か、または意外な真相を狙ってずっこけた作品か、に大別されるような気がします。本篇も意外といえば意外なのですが、見事にすべりまくっています。

 妻が霍桑からの手紙を手渡した。緊急の用件だ。「今夜九時、男を尾行してくれ」筆跡は霍桑のものだ。私が言うとおりにしていると、警官に通報されてしまった。「強盗か?」私はげっそりとして家に戻った。霍桑によると、子どもが誘拐され、身代金の要求があったのだそうだ。
 

 たぶん「怪房客」と「試巻」は英訳あり↓。
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