『幽霊を捕まえようとした科学者たち』デボラ・ブラム/鈴木恵訳(文藝春秋)★★★☆☆

 『Ghost Hunters』Deborah Blum,2006年。

 相当にものたりない。

 ものたりなさの主たる原因は何かといえば、本書が「幽霊を捕まえようとする科学」の本というわけでもなければ、「幽霊を捕まえようとした科学者たち」のかつての研究を現代科学で再検証するのでもなく、タイトルの通り「幽霊を捕まえようとした科学者たち」の伝記(というかエピソード集)でしかないからです。

 タイトルの通りなんだから文句をいうのは筋違いなんでしょうけど、なんだか釈然としません。

 その科学者が科学的にどういうアプローチをしたか、というのが掘り下げられるでもなく、何だかこれでは「科学者が立ち会った/携わった」というくくりで集めたオカルト話みたいでした。

 解説や前書きのたぐいもないので、著者の立ち位置や本書の成立事情が見えにくいのもわかりづらさの一因です。

 でもたぶん、この本はどちらかというと、オカルト批判でもオカルト研究でもなく、科学者に対する批判や発問なのかな?と感じました。「オカルトを科学的に検証する」こと自体を否定するという、非科学的な態度を取る科学者に対するメッセージ。本当に科学的であろうとすれば、検証もせずに否定するなんてあり得ないことなのに。

 ただし本書の科学者たち、検証した結果ころりと信じてしまう人たちも多いようで……。普通なら科学って、Aという条件で実験した結果が○でも、Bという条件で実験した結果が×なら――というふうに考えるものだと思うんだけどなあ。

 そういう意味ではどっちもどっち、もうそろそろ真に科学的な態度で臨むべき、ということなのかもしれません。――という意味で、科学者には刺激的な本なのかもしれませんし、オカルト側ではなく科学側から出たということに意義があるのかもしれませんが、一般人にとってはそこらのオカルト本とあんまり大差ないような気もするのですが。
 

  『幽霊を捕まえようとした科学者たち』
 [bk1][amazon][楽天


防犯カメラ