『S-Fマガジン』2010年2月号No.647【創刊50周年記念特大号PART2 日本SF篇』

 ボリュームはある!けれど、いつもとおんなじ面子なので、未読の作家と好きな作家と気になる作家だけ読むことにしました。意外ととんがってるのが少なくてものたりない。
 

『零號琴(1)』飛浩隆 ★★★☆☆
 ――都市をまるごと覆う巨大楽器の秘密とは!?

 これまで読んだ飛作品とは作風ががらりと異なって、キャラ度が濃い。いまのところ、スケールが大きくて何となくすごそう、という感想で、これからどうなるか。

「フェイス・ゼロ」山田正紀
 ――人形浄瑠璃人間国宝が夢見た究極の表情とは? そしてそれが実現したとき……。
 

「問題食堂」椎名誠
 ――定食屋「いたみや」の常連であるおれの前にそいつは身の程知らずにも現れたのだ!
 

「ロボ」瀬名秀明 ★★★☆☆
 ――ぼくはウィニペグに向かった。自然史家となった、かつてのロボット画文家に話を聞くために。

 シートン動物記を下敷きに、変異ウイルスに侵された牛の群れと狼を観測する研究家……というあたりまではよかったのだけれど、ロボットと愛着のあたりから説明くさく青くさくなってしまいます。
 

「マグネフィオ」上田早夕里 ★★★☆☆
 ――昏睡状態の夫の内面を知るために、妻の取った選択とは――。

 病気・装置・手術といった脳がらみの部分はSFしてて面白いのに、過剰な愛情を持った人ばかり出てきて気持ち悪いのが残念。
 

「僕と彼女の微妙な関係」吾妻ひでお
 

「航空宇宙軍史 ザナドゥ高地」谷甲州
 ――男はタイタンのザナドゥ高地を再訪する――航空宇宙軍史、十五年ぶりの新作登場。
 

「小指の思い出」牧野修
 ――そこは老人だけの島。朦朧とした記憶をたよりに、妄執に駆られた男が一人訪れる。
 

「SF小僧の花嫁」とり・みき

大森望の新SF観光局」(10)

「SFまで100000光年 77abcd つぶやき人の秘密、ほか」水玉螢之丞

「SF Magazine Gallery II(8)」加藤直之「時の塔2」

「『アバター』公開記念ジェームズ・キャメロン・インタビュウ」
 

「SF BOOK SCOPE」
神林長平トリビュート』日本ファンタジーノベル大賞小田雅久仁『増大派に告ぐ』、遠田潤子『月桃夜』

ライトノベルでは中村恵里加『ぐらシャチ』があらすじから内容がよくわからないのでかえって気になる。瀬尾つかさ『円環のパラダイムは、「クラークやクレメントといった作家が見せたビジョンを、ティーンの活躍の中に描いた意欲作」だそうです。

牧眞司おすすめはティーヴ・エリクソン『エクスタシーの湖』長山靖生おすすめは武田雅哉『中国乙類図像漫遊記』。「乙類」というのは何というか「キッチュなもの」とかそんなような意味らしい。
 

「確かな自己、固定・変換・解放」神林長平 ★★★★☆
 ――とある惑星で発掘された〈国家〉と呼ばれる人工物。そこに隠された真実とは?

 発掘された統治マシンと、意識を解放してくれと依頼した美女の謎が、会話の応酬でテンポよく徐々に明らかになってゆきます。キャラクターが苦手なんだよなあ。
 

「古の軛」林譲治
 ――彼はなぜ、ストリンガーの死体を食べたのか!?
 

『怨讐星域』(13)「減速の蹉跌」梶尾真治 ★★★★☆
 ――宇宙船を減速する手段が失われ、ノアズ・アーク計画は瓦解しかかっていた。

 今回はひさびさにSFっぽい。真相も含めて。
 

「議論の余地はございましょうが」新城カズマ ★★★★☆
 ――夏の参議院選挙に立候補した田楽政樹候補。しかし、その街頭演説の背後では?

 今回も過剰なまでに現実を取り込んでいますが、これまでの作品と比べて語りが平易で(選挙演説という型を用いている分)読みやすかった。
 

路面電車で行く王宮と温泉の旅一泊二日」北野勇作 ★★★☆☆
 ――私は路面電車でこの街に帰ってきた。王宮と温泉で知られる懐かしいこの街に。

 ああ、カメリじゃなかった。。。
 

「囚人の両刀論法」小林泰三
 ――古典的命題「囚人のジレンマ」の、究極的解決法とは?
 

「カッパの王」田中啓文
 ――正彦がカッパを目撃した日から、周囲ではさまざまな超常現象が起きて――
 

「SENSE OF REALITY」「暗闇のスキャナー」金子隆一/「「突然“キレる”子どもたち」香山リカ
 五十年でショウジョウバエに人為的に進化を引き起こせる!?
 

「MAGAZINE REVIEW」〈F&SF〉誌《2009.6/7〜2009.8/9》橋本輝幸

堺三保アメリカン・ゴシップ(4)」

「SF挿絵画家の系譜(47)司修大橋博之

「サイバーカルチャートレンド(8)GPL大野典宏

「おまかせ!レスキュー Vol.140」横山えいじ
 

メトセラとプラスチックと太陽の臓器」冲方丁 ★★★★☆
 ――メトセラ第一世代を妊娠した我が嫁は、プラスチックの夢を見るように――

 メトセラとは長生子の謂い。プラスチックの夢とはなんじゃらほいと思っていたら、なるほどそういうところに着地するのか。
 

「アリスマ王の愛した魔物」小川一水
 ――小国の王子アリスマおは醜悪で身体も弱かったが、恐るべき算術の才があった。
 

「エデン逆行」円城塔 ★★★★★
 ――わたしには祖母が六人ある。わたしが祖母その人なのでそうなっている――。

 という袖のコピーは単なるこけおどしのレトリックではありません(たぶん)。なんだかわからない円城作品だったけれど、今回のは分冊が遺伝子で螺旋がDNAか何かだということくらいはわかった。わからなくても楽しいのでそれでいいけど。
 

SFマガジンの早川さん」coco
 

「地球から来た男」山本弘
 ――その密航者は、いまどき抗老化処置も受けていない非近代的な男だった。
 

「気まぐれな宇宙にて」森岡浩之
 ――「ポジション」の発見は人類に新たな宇宙時代をもたらした。ただしちょっと歪な。
 

「夢」菅浩江
 ――SFが好きな僕はよく言われる。「夢を見ろ」あるいは「夢ばかり見るな」と。
 

「コンビニエンスなピアピア動画」野尻抱介
 ――プロジェクトは地方のコンビニから始まった――星雲賞受賞短篇の姉妹篇登場

 野尻抱介はSF部分はいいんだけれど、出てくる人間がなあ。。。
 

西島大介

 こうやってまとめて読んでみると、わたしはSF臭いキャラが苦手なんだなということがようやくわかりました。
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 『SFマガジン』2010年2月号


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