『仏蘭西太平記 鮮血の華』デユーマ/宮崎夢柳訳(『明治翻訳文学全集 新聞雑誌編26』より)

 デュマ『ジョゼフ・バルサモ』の翻訳である櫻田百衛『西の洋血潮暴風』の続編に当たります。新聞からの影印本なので読みづらくってしょうがありません。取りあえず緒言と第一回を読みました。

 緒言によると、櫻田死去のため自分が続きを書いたとのこと。また、暴力革命はよいことではないので反面教師にしてほしくてこの作品を紹介する、とあります。

 冒頭を書き出して見ます。(「に」「ハ」「は」「す」「ネ」はそれぞれ「爾」「ハ」「者」「春」「子」の変体仮名。「○」は判読不能。原文では人名には棒線、地名には二重線。総ルビですが読みづらいもの以外は省略しました)。

  

 茫々として又た茫々たり遠水を隔てヽ東に望めバ山岳半は雲根の暗きにはさみ迢々として更に迢々たり長途を踏んで西に顧れバ家郷悉く烟樹のふかきに沒す孤館こくわん宿るとき雨聲うせい夢を驚かし片帆へんぱん去るところ江色こうしょくうれひを含む前程ゆくて遙けき旅の空驛馬の鈴や渡船の棹朝な夕なに路を急ぎ都城みやこの方へと志ざしつヽ徒歩たど一個ひとり少年わかうどハ是れなんギルベルトと呼びすものも此のギルベルトを如何なる人かと尋ねるにまだ幼少の時分より佛蘭西の都城から數十里遠くへだたりしバーラジユークと云へる土地に年久しく住居すまゐする貴族タベルネーの家に傭はれ休むときなき苦使勞役くしらうえき天の與への自主自由も衣食の爲に失ひて唯々諾々の憐れむべき境遇に起臥し不平不満のその中にも光陰ハ人を待たず春と去り秋と暮れいつとなく成長して早十八才となりし折柄主人タベルネーハ朝廷の召に應じ娘アンドレーを伴ひて都城巴里へ移轉せしかバギルベルトハいとまを得て獨りバーラジユークに殘り居りその身漸く束縛の羈絆を脱けし自主自由錢あるうちハ先づ飲むべし醉ひてハ大聲たいせいくわい○呼ぶ豪放磊落を極めしも盡るに速き書生の嚢裏のうり遂にハ此處其處に三圓五圓負債さへ出來るほど迫り來りし貧困が却つて平生の心志を励まし……

 

 なぜかジルベールが主人の留守を幸い飲み食いしたことになっています(^_^;。しかもこのあと「近所隣りの家々へ暇乞ひ」をしてから出立してるんですよ。

 文字がつぶれててとんでもなく読みづらいので、読み終えるのはいつになることやら……。

 『明治翻訳文学全集 新聞雑誌編』26、ほか
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