『Der Groß-Cophta』Johann Wolfgang von Goethe

 カリオストロ伯爵を題材にしたゲーテの戯曲『大コフタ』。いつか読みたいと思っていたのですが、フランス語訳版『Le Grand Cophte』を見つけたので読んでみました。

 主要な登場人物はロストロ伯爵、侯爵夫妻、侯爵夫人の姪、参事会員、騎士。

 ロストロ伯爵がカリオストロ、侯爵夫妻がラ・モット夫妻、姪がニコル、参事会員がロアン枢機卿、また舞台に姿は見せませんが公妃がマリ=アントワネットに当たります。

 伯爵は精神的な鍛錬と高揚を謳うインチキ新興宗教の親玉のように描かれていて、心酔する参事会員や騎士に向かって、自分の言うとおりに精進すれば精神的指導者・大コフタに会わせてやる、と説きます。もちろん大コフタとは伯爵自身にほかならないのですが、そこははったり。全員を部屋から追い出したあとで、こっそり食卓の食事を口にして、飲まず食わずでも生きられるふりをするような筋金入りのペテン師です。

 古い知り合いの侯爵夫人は伯爵がペテン師だということを知っており、伯爵が公妃に気に入られれば何かと好都合だと見て見ぬふり。さらに参事会員が公妃に横恋慕しているのを利用して、高価な首飾りを騙し取ろうとする、こちらも筋金入りの悪党です。姪に公妃の恰好をさせて参事会員を騙すというのは、現実の首飾り事件でお馴染みのシーンですね。

 本篇ではさらに、姪と侯爵が不倫をしていること、ロストロ伯爵が姪を利用しようとすること、騎士と姪がいい感じになりそうなこと、といった独自の展開がつけ加えられていました。(※もっとも、ロストロ伯爵が女性を霊媒として利用すること自体は独自のものではなく、実際には内縁の妻ロレンツァがその役でした。)

 最後には実は騎士が密偵だったことが明かされて全員お縄、参事会員は国外追放を命じられ、姪は本人のたっての希望で修道院に入れられます。伯爵は逮捕されてもなお、「俺には奇跡が起こせるんだぜ」「じゃあ起こしてみろ」「おまえらの見ている前では起こしたくねーよ」とうそぶくやんちゃっ子でした。

  


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