『アフタヌーン』2013年2月号

 今回は恒例の四季賞ポータブル付。そして『無限の住人』最終回。

『こたつやみかん』1「今、なんどきだい?」秋山はる
 新連載。とはいっても読み切り版の続きに当たるようです。『オクターヴ』の著者による落語まんが。今のところまだよくわかりません。

げんしけん』83「人生補完計画」木尾士目
 進路に悩む大野さん。コスプレCDを出してみればと後輩たちにそそのかされ、田中さんに相談したところ……。大野さんのこんなシリアスな表情は久しぶり?いや初めてかも。あ、こんな顔してたんだ、とハッとしました。そして斑目先輩が衝撃の一言。

無限の住人』最終幕「卍と凛」沙村広明
 ただただ百琳にこれからのことを話し続ける凛。これからの自分の旅は用心棒のいらない旅だ……と語るが……。卍は斬られても死なないだけじゃなく長生きもするのだという設定自体を忘れていたので、最終回にはびっくりしました。最終回にしては静かで少し寂しいですが、不死身とはそういう寂しいものなのだと思えばどこか納得できました。

『たくのこ』2「白い微笑み」、3「曇り時々雨」花輪園人
 お兄ちゃんから「似合ってるぜ その前歯のアクセサリー」と歯についた黒ゴマのことをからかわれた。/それはチャンネル争いから始まった。リモコンを押した姉は、弟に衝撃の事実を告げる。「お前はロボットだったのじゃ」。ときどき見える素の兄弟っぽさが微笑ましい。お兄ちゃんのどうでもいい最後の一言がツボるんですよね、この人の漫画は。

おおきく振りかぶって』96「秋季・地区大1回戦 10」ひぐちアサ
 武蔵野と西浦、一進一退の攻防が続く。首を振って投げた球を打たれ、ギクリとする三橋。榛名の失投である真ん中ストレートを狙う西浦ナイン。第一巻で「四つも!?」と驚かれてから、いつの間にかというかようやくというか、三橋の四つ目の変化球の話になっていました。

ヒストリエ』79「帰途の一戦」岩明均
 トリバロイ軍の急襲を受け、重傷を負ったマケドニア王。エウメネスは戦況を見定め、馬を駆る。

宝石の国』3「ダイヤモンド」市川春子
 硬度10のダイヤモンドのもとを訪れたフォス。だがダイヤは自分などよりボルツの方が……と卑下するばかり。そのとき月の住人が襲って来た……。順次新キャラ登場。ボス級かと思われたダイヤモンドが早くも登場。ボルツ・ダイヤモンドという上がいるからというような、鉱物の特徴を写した人となりが面白い。三半という呼び名はフォスフォフィライトの硬度のことだったんですね。

BUTTER!!! バター』31「なんでなんで」ヤマシタトモコ
 誰と誰がセンターになるか、先輩たちの前でオーディションをする夏たち。結果が決まったあと、夏がぽつりとつぶやいたネットの嫌がらせのことを聞いた端場くんは……。夏は相変わらず肝心なところで引っ込み思案。そして端場くんの、かっこいいけどこういう極端なところは、やっぱりオタクぽいなァと思ったり。

「箱庭の巨獣」田中雄一
 生態系が破壊され巨大生物があふれる地獄となった地上。「巣」にこもった人類は、選ばれた者が女王獣と融合して巣を守る巨獣になる。弱い巨獣のいる巣は滅びる。僕は巨獣候補に選ばれてしまった……。読み切り作品。巨獣の造形がすごい。グロテスクで且つ哀れ。表情なんてないはずなのに、顔つきに意味を読み取ってしまう。目的と手段、平和を求めるために強さを求める――極端に走ることの怖さは、いつの時代のどんなシチュエーションにも共通する普遍的な愚かさにまみれています。

『天の血脈』10 安彦良和
 ロシア兵にロシア語で抗議するハナ。トラブルになりかけたところを救ったのは、嬉田教授の機転だった。

四季賞ポータブル 2012秋】

「思春期シンドローム」赤星トモ
 「おれとつきあってみる気とかあったりする?」なんじゃそりゃ……断ったら「俺も!」とでも言うつもりか? 保険か? あるあるネタでもない、日常エッセイとも違う、でも思春期の「ああ、何かわかる」瞬間を切り取った短篇集。一番好きだったのは、気づいたら夜の教室に一人きりだった「孤独」。間抜けにも見える状況を、「16年間生きてきてこんなに孤独を感じたことはありません」と書けるセンス。誰のせいでもないだけに孤独感がいや増します。

「解体ザナフ」丈山雄為
 ザナフは好きになった人を生きたまま切り刻まずにはいられない。生を呪い続けながら、静かな日々を送っていくつもりだった。その少女に出会うまでは……。描写力はあるけれど表現力がない、そんな感じでした。きれいごとを繋ぐ橋渡しがないのでラストシーンに至る説得力が皆無です。

「彼女の鉄拳」恵三朗
 実家から届いた人型お掃除ロボットは、パンツ一丁で過ごす変態のマゾだった。これはわたしには面白さがまったくわからなかった作品です。選考コメントでは「画面構成力」「すべてを絵で見せるその力」「キレッキレのアクションシーン」「高い作画技術」……等々、プロから見て漫画としての絵が上手い漫画のようです。

 


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