『S-Fマガジン』2016年4月号No.714【ベスト・オブ・ベスト2015/デヴィッド・ボウイ追悼特集】

「変わり続けた男の物語 Goodbye, David Bowie 1947-2016」
 ブレイク作「スペイス・オデッセイ」とアルバム3作と映画『地球を売った男』をSF作品と見なして解説&追悼したミニ特集。
 

overdrive円城塔

「烏蘇里羆《ウスリーひぐま》」ケン・リュウ古沢嘉通

「電波の武者」牧野修

「熱帯夜」パオロ・バチガルピ/中原尚哉訳(A Hot Day's Night,Paolo Bacigalupi,2015)★★★★☆
 ――シャーリーンが太陽パネルをはずすのをルーシーも手伝っていた。それが取材を受ける条件だった。

 ベストSF2015上位作家特集。『神の水』スピンオフ掌篇ですが、本篇を知らなくても楽しめます。ぎりぎりで生きる人たちの生きざまがかっこいい。
 

「スティクニー備蓄基地」谷甲州

「七色覚」グレッグ・イーガン山岸真

「二本の足で」倉田タカシ ★★★★☆
 ――ダズルとゴスリムはキッスイの部屋を訪れた。〈シリーウォーカー〉と呼ばれる人の形をしたロボットを利用した詐欺があとを絶たない。キッスイは某国からその調査を依頼されていると言う。そしてついに犯罪者は本物の人間にも詐欺プログラムを埋め込んだらしい。

 ベストSF2015上位作家特集。人間なのかAIなのか――。SFではすでに古典の域に入る命題です。これまで読んだことのある作品では、対象となるAIがあって、そのAIが本当の人間らしいかどうかが問われていました。この作品の場合、対象となるのは人間であって、人間の自覚的な詐欺なのかAIのプログラムなのか――というのが面白いところです。
 

「書評など」
◆映画『オートマタ』は、「SFファン向けの見どころしかない」「このジャンルの先行作の成果を、無数に取り入れている」。映画『あやつり糸の世界』は、1973年のドイツ「幻のSF映画」の劇場公開。

三島浩司『ウルトラマンデュアル』SFマガジンで連載している円谷プロとのコラボには興味がなかったのですが、今月号に載っているインタビューを読んだら非常に面白そうでした。

◆あとは宮内悠介『アメリカ最後の実験』、マーク・ホダー『月の山脈と世界の終わり 大英帝国蒸気奇譚3』、ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』、カレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』など。
 

「世の中はよい爺さんと悪い爺さんでつくられていた」椎名誠ニュートラル・コーナー
 

「『ウルトラマンデュアル』刊行記念 三島浩司インタビュウ」香月祥宏
 侵略者ヴェンダリスタ星人とウルトラ戦士どちらかが先に到着するまでの間、ひとり地球を守るウルトラ聖女を、政府は建前上ヴェンダリスタ星人と同じ「侵略者」と位置づけ、ウルトラ聖女も地球の意向を汲んでそこを「光の国の飛び地」として侵略宣言した――というあらすじが無茶苦茶おもしろそうな作品です。
 

「(THEY CALL ME) TREK DADDY 逆襲のスタトレコロジー」丸屋九兵衛
 今回は『スタートレック』そのものではなく、そのパロディ映画『ギャラクシー・クエスト』について。アラン・リックマンへの追悼として。スタートレック抜きで単独で面白い傑作映画です。
 

「ランキングで振り返るSF出版70年」高橋良平×塩澤快浩

 

「NOVEL&SHORT STORY REVIEW」七瀬由惟
 リンダ・ナガタ『レッド(The Red: First Light)』『トライアル(The Trials)』『ゴーイング・ダーク(Going Dark)』。危機が迫ると頭のなかに声が聞こえる特殊能力を持つシェリー少尉が、その能力のおかげで基地を救い、期せずしてヒーローになってしまったところからスタートする、「まるで一話完結の連続テレビドラマを観ているかのようなところが面白い」ミリタリーSFです。翻訳してほしいなあ。
 

「やせっぽちの真白き公爵(シン・ホワイト・デューク)の帰還」ニール・ゲイマン小川隆

 デヴィッド・ボウイ特集。もともとは2004年に、天野喜孝がボウイ夫妻を描くという企画のために書かれたものだそうです。
 

「「スター・ウォーズ」と現代のスペース・オペラ映画(後篇)」添野知生
 まだ『フォースの覚醒』が公開されていない頃に書かれた前篇に続いて、観賞後に書かれた後篇です。
 

「SFのある文学誌(45)ファンタスチカ・ジャポニカ序説」長山靖生
 1910年代1920年代の「象徴主義耽美派、高踏派、白樺派、さらにはモダニズムや新興芸術派などを大きく括る傾向」を、SFやファンタジーの文脈で捉えなおそうとするような、野心的な試みです。
 

「近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(26)大正末期のジュヴナイル奇想小説」横田順彌
 国枝史郎のジュヴナイルなど。
 

『幻視百景(1)』酉島伝法
 新連載。
 

  


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