『アネモネ探偵団1 香港式ミルクティーの謎』近藤史恵(角川つばさ文庫)★★★★☆

 近藤史恵による児童ミステリ。「つばさ文庫」というのは少女向けレーベルのようです。

 学長一族の兄弟げんかのせいでお嬢様学校と男子校に分断された私立中学校。仲良し三人組の女優の娘(智秋)、警視総監の娘(巴)、著名な学者の娘(あけび)は学年一の美少女。光紀の両親はエジプトに出張中で、光紀はカメラマンの叔父と二人暮らし。そんなわざとらしい設定がいかにも児童書らしくて微笑ましい。

 カツアゲされているところを、正義感の強い智秋に助けられた光紀と時生。そのお礼に、今度智秋たちから頼みごとをされたときには引き受けるという約束をする。その後、智秋が車に連れ込まれそうになる誘拐未遂事件が発生するものの、母を心配させたくない智秋は事件のことを母には伝えなかった。だがほんの偶然から光紀たちは、神社の境内で誘拐犯一味が打ち合わせをしているのを聞いてしまう。すでに誘拐未遂が起こっているとは露知らず、智秋を心配させまいとする光紀は、女優である母の写真撮影に同伴した智秋を追って、カメラマンである叔父にくっついて香港に向かう。自分たちだけで智秋を守るために……。

 当然といえば当然ミステリ度は薄いのですが、タイトルにもなっている香港式ミルクティーを、ある古典的な犯罪手法とからめてくるあたりが鮮やかです。誘拐される側の少女と防ぐ側の少年の視点を取ることで、サスペンスをかもしだし、誘拐の目的であるホワイに目が行かないようになっていました。

 近藤史恵作品らしく美味しそうな料理も登場。両親不在で叔父が料理しないのでやむなく作った「まずまず」の腕の料理男子……のはずが、終盤で意外な特技を発揮! 女子のハートをがっちりしていました(^^。

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