『S-Fマガジン』2018年6月号No.727【ゲームSF大特集】

 特集は小川一水柴田勝家とゲームライター2人の小説と、エッセイやガイド、それにスピルバーグのインタビュウ。そもそもがスピルバーグ監督のゲームSF映画『レディ・プレイヤー1(Ready Player One』に合わせた企画だそうです。
 

「SFのある文学誌(58)チャペックのロボット、リラダンのアンドロイド」長山靖生
 

「書評など」
『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジーは副題とおりの作品集。宮内悠介『ディレイ・エフェクト』『超動く家にて』の2冊も。『スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選』は創元SF文庫のアンソロジー日本ファンタジーノベル大賞が復活したそうですが、大賞を受賞した姉村将彦『隣のずこずこ』がかつてのような幻想小説路線なのか後期のようなファンタジー路線なのか気になるところ。近藤史恵『震える教室』はホラー作品。
 

「ひとすじの光」小川哲 ★★★★☆
 ――京都大賞典後のスペシャルウィークの気分だった。大敗して「もう終わった」と言われた馬だった。僕ももう終わったのだろうか。会社から独立して小説を書いているが、反応は良くない。なぜか僕は知っていた。スペシャルウィークがイギリスのサラブレッドの血を引くことを。長野の牧場主・間宮昌次郎が独自の血統理論を編みだし、レースに勝てる馬を生産することに執着していた。

 競馬の話かと思ったら小説の話になり、やっぱり競馬の話になり、最終的にはどちらも実は生き方の話であったことがわかります。「馬は草食動物だから」という謎かけの答えは最後に明らかになりますが、語り手に曾祖母の記憶が入り込んだ理由や、馬と人ともども女系が絶えて男系が残った理由など、読み解けない部分も残りました。
 

「沼樹海のウィー・グー・マー(前篇)」瀬尾つかさ
 ――教授の失脚とともに職と住居を失ったケンガセンは、地球とコロニーの間の調停官に任じられた。コロニーの有人船が墜落した沼樹海の村人は、救助隊の立ち入りを拒否していた。ケンセガンは再会した地球人の少女ヨルを助手に、現地に乗り込んだ。

 2012年2・3月号に掲載された「ウェイプスウィード」の続編だそうです。6年越しの続編なので、前作のことはほとんど覚えていませんが、ブログを読み返したら、後編で盛り下がってしまったと書かれていました。前作が生物の細かい設定を描写していたのに対して、本作は文化面を描こうとしているのでしょうか。
 

「十二月の辞書」早瀬耕
 ――南雲が高校時代のガールフレンドから受けた依頼。『プラネタリウムの外側』スピンオフ(袖惹句)
 

「サはサイエンスのサ(255)性淘汰の逆転劇」鹿野司
 孔雀の雌が雄を選ぶ基準が羽の美しさではなかっただなんて、ほんと数年前の常識なんて変わってしまう世界です。
 

「NOVEL & SHORT STORY REVIEW」東茅子
 2016年受賞作レビュー。ノヴェラ部門のショーニン・マクガイア「どのハートも異世界への道(Every Heart a Doorway」は、「登場人物全員が異世界の存在を当然と思っているが、本当は心にトラブルを抱えた精神の逃避行動かもしれない」という、ヒューゴー・ネビュラ・ローカス賞を受賞し世界幻想文学大賞ティプトリー賞の候補となった作品。ショート・ストーリー部門のアマル・エル=モータル「ガラスと鉄の季節(Seasons of Glass and Iron)」は、「ある理由から鉄製の靴を七足履きつぶさなければならない女性(現在四足目の途中)が鋭いガラスの山の上にじっとたたずむ娘と出会う」というイメージが鮮烈な、同じく三賞を受賞し世界幻想文学大賞の候補になった作品。
 

大森望の新SF観光局(61)シーシュポスの神話――英訳版『皆勤の徒』拾い読み」
 英訳版は大絶賛のようです。
 

筒井康隆自作を語る(7) 筒井康隆完結記念(前篇)」筒井康隆×日下三蔵
 

  


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