『古書収集家』グスタボ・ファベロン=パトリアウ/高野雅司訳(水声社フィクションの楽しみ)★★★☆☆

 『El Anticuario』Gustavo Faverón Patriau,2010年。

 入院中の友人ダニエルが犯した(と称する)フリアナ殺しの謎を、友人で語り手でもあるグスタボがダニエルとの対話や古書会メンバーへの聞き込みを通して、真相に迫る(気があるんだかないんだか……)。

 そこに病院内で起こった事件も加わり――。

 この「聞き込み」をはじめとしたとエピソードというのが幻想小説のショーケースのような、奇怪なものばかり。箱に閉じ込められて四十四日間の断食をした手品師と、それを越えた女性。死んだ囚人の皮膚で紙を作る研究をおこなっている外科医。医学部に必要な人体を売買する医学生と売人たち。兵士の心臓を食べた犬と、虐殺される村人たち。

 どうせ謎なんて解かれないのだろうと期待などせずにいると、終盤になってそうしたエピソードの一部が伏線らしきものであったと判明する、人を食った作品です。

  


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