『タイムマシンの旅』エーゴン・フリーデル/垂野創一郎訳(エディション・プヒプヒ 〈ビブリオテカ・プヒプヒ〉第5巻)★★★★☆

 『Die Rreise mit der Zeitmashine』Egon Friedell,1946年。

 ウェルズの「タイムマシン」後日譚です。

 未来から戻り、過去に旅立ったまま戻って来なかったタイムトラベラーは、その後どうなったのか――? そのことが気になった語り手のエーゴン・フリーデルが、関係者に問い合わせたところトラベラーの友人から知らされたのが、本文の内容ということになっています。

 未来から一九〇五年に戻ったタイムトラベラーのジェームズ・モートンは、友人から次の行き先を聞かれて、到着地が安全かどうかわからない過去なんて論外であり、自分は一八四〇年にカーライルの演説を聞きに行く――と答えて友人を失望させます。ところがその後、友人の許にモートンから無線が届き、「事故が起こった。僕は無事だが二度と会えないだろう」という不可解な内容が記されていた。請われるままに、タイムマシンの小型モデルに数値表やウラン鉱を入れて送るが……。

 時間を「運動」と捉え、未来には行けるのに過去に行けなかったり、過去に向かう途中でタイムマシンが消えてしまったり、さまざまな異なる未来を見たりすることを、その考え方ひとつですべて説明してしまうのが非常にわかりやすい時間旅行ものでした。

 タイムトラベラーが「旅行中」と掛け札をしておくセンスにニヤリとします。

 ウェルズと同じく歴史家でもあった著者が、ウェルズと書簡のやり取りをして「創造」についてたしなめられたりと、外枠も不必要に凝っていました。

 


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