古本を整理していてついつい読み耽ってしまうというお決まりのパターンで読み返してみる。
これって『空想非科学大全』じゃん。って思った。ヴァン・ダインが書いた「探偵小説二十則」てのは完全にヴァン・ダインの驕りから生まれた「〜しなさい」という〈規則〉なんだけれど、ノックスさんのは洒落ですね。
「ヒーローはたった数分で地球を守らねばならない!」――もちろんこんな規則を誰かが決めたわけじゃなくって、空想科学のヒーローにはなぜかこういう設定が多いなあ、というのを抜き出して検証した作品なわけですけど、まったく同じことがノックスの十戒にも言えるんじゃないかと思う。
ノックスは法則を決めたのではなく、既作品から法則を抜き出したお洒落でお茶目なおじさんにすぎないのだ。
「探偵小説には、中国人を登場させてはならない」――ノックス自身が「なぜなのか定かではない」と述べているこの珍法則も、怪しい中国人が登場する駄作がそのころ多かったことを茶化して法則化しているのだとしたら納得できる。
「ワトスン役の知能は、読者の平均的知能より低くなければならない」――ワトスン役が頭悪すぎ、とはよく聞かれる批判ですが、ノックスさんは批判はせずに、これが「空想探偵小説」の法則なのだー、とつっこんでくれたのでした。
50年早すぎましたね、ノックスさん。
鮎川 哲也編
光文社 (1997.3)
この本は現在お取り扱いできません。
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