『透明人間の納屋』島田荘司(講談社ミステリーランド)

 「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」というのがキャッチコピー。てことはジュブナイルかあ。それに御手洗ものじゃないしなあ。

 なんて思っていたのですが、書店で実物を手にとった瞬間、買おう!と決意していました。

 一部布装。変形箱入り。ページを開くと扉と目次ページには半透明の箔押し印刷(蛍光塗料っぽい)!

 一読。全然少年少女向けじゃない。人間くさすぎ(どろどろ)。でもそれは言い方を変えれば人間ドラマということなので、『異邦の騎士』とか『奇想、天を動かす』とかが好きな人にはお勧めです。

 この作品には二つの〈透明人間〉トリックが出てきます。印刷所の真鍋さんのトリックと、人間消失トリックです。前者のトリックは、真鍋さんという人物の人柄を象徴する、この作品を成り立たせるになくてはならないトリックでした。たとえトリック自体は他愛ないものだとしても。

 問題は人間消失トリックです。一歩間違えれば「ネタバレ*1になりかねないような大胆なもの(ギャグすれすれという意味で)。でもこの時期にこのトリックを読めたことを嬉しく思います。こういう形の〈最先端〉もあるんだなあと。時代が違えばまさに「ネタバレ*1」だったでしょう(いや「ネタバレ*1」を批判しているわけじゃなくて)。

 そしてまたこのトリックは見方を変えるとまさに少年少女向けだったりもするんです。だってこれほとんど海野十三とか江戸川乱歩テイストじゃないですか。

 人によっては「子供だまし」だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、全体として良かったです。

 

 ※余談ですが、冒頭、砂浜で星を見ているシーン、泡坂妻夫さんの「ルビーは火」を連想ました。あれも名作です。




 

 

 

 

*1どんどん橋、落ちた

 


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