「■」Joyce Carol Oates

 ほんとはタイトルは黒い長方形なんですが、変換できん。

 タイトルにひかれて読んでみた。幼い日の記憶によぎる黒い影■――読者の前にはそれが黒い影=伏字という形で示される。読んでいる人間にも、語り手と同様に目の前に■が現われる、というわけ。伏字をも文字として使う、という発想が面白い作品。その手法が単なる小手先の実験などではなく、必然なのだ。

 幼い日の記憶――思い出そうとすると目の前に■がよぎり、どうしても思い出せない記憶がある。日曜日に遊びに行ったお金持ちのおじさんの家は、見たこともないほど大きく立派で美しかった。自動で開く扉、ピンクに輝く車寄せ、たくさんの窓……なのに中に入ると狭く肌寒い。おじさんの様子も何か変だ。いとこのオードリーやおばさんは、おじさんを怒らせないよう戦々兢々としている。海に行こうと言い出したおじさんの機嫌を損ねないように、水着に着替えていると……。




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