『辞書にない「あて字」の辞典』現代言語セミナー

 講談社+α文庫。 タイトル通りの辞典です。 ↓古い訳を読んで、「漁夫《すなどりびと》」とか「常緑樹《ときわぎ》」とかいうルビについつい感嘆してしまい、ぱらぱらと再読してみました。


 泉鏡花は「豊肌」と書いて「ぽってり」と読ませる、だとか、志茂田景樹西村寿行はふたりとも「はしる」を「疾る」と書いていたり、だとか、漱石は「仮病」を「偽病」と書いてるけどこのあて字の方がよっぽど「仮病」の何たるかを表わしてるな、とか、読んで楽しい辞典です。


 ところが楽しむだけにしか使えないかというとそうでもなく、ちゃんと辞典としても使えるんです。どういう使い方かというと、類語辞典としてけっこう重宝してます。たとえば「こんがらかる」をひくと――「混絡かる/困絡かる/交錯かる/紛糾る」などなど。最初の二つは音を活かした文字通りの「あて字」ですが、後ろの二つは意味を活かした「類語」だったりするんですよね。


 おもしろいのは芥川の「老若各」で「おのおの」、露伴烏黒」で「まっくろ」、尾崎紅葉勃起々々」で「むくむく」、鴎外「四阿屋」で「キオスク」(そりゃ確かにキオスクには「あずまや」って意味もあるんだろうけど、現代の目から見ると何だかなあ)……。 

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