『ネジ式ザゼツキー』

 いまさらながらに読みました。いくら年末は忙しいからと言って、島田荘司さんの新作長篇を積ん読にしていたのはただごとではない。

 最近の島田作品はタイトルが即物的だからちょっと残念、てところもあったんだけど、本書は発売予告の時からわくわくしていた。(読み終えてみれば本書のタイトルも、『アトポス』や「IgE」と同じ意味において即物的ではあるのだが。)


★良いところ

石岡&御手洗コンビ解消後、片方のみの出演作の中で、初めて心から面白いと断言できる作品ではないだろうか。コンビものの『山の手の幽霊』や『ロシア幽霊軍艦事件』は面白かったし。要するにわたしは、子供時代の御手洗譚や石岡(駄目人間バージョン)譚があまり好きではないようだ。

・以前よりアンチ島田荘司派からも好評を博していた、作中作の面白さは健在。暗くて怖い作中作が多い中で、本書のは活劇でありファンタジックだ。そういう意味では『水晶のピラミッド』を面白いと感じた人に勧められる。


★残念なところ

 本書全体の印象は『眩暈』を彷彿とさせる。だが『眩暈』では、古井教授と御手洗という、頭のいい二人によるディベートという形で推理が進められていった。その論理の応酬がスリリングで楽しかった。一方本書では、御手洗が一方的に推理し、ハインリッヒはいてもいなくてもどっちでもいい。その結果、『眩暈』では「論理×論理=幻想」という一粒で二度おいしい構図だったものが、本書では「幻想+解答=本格ミステリ」というすっきりとわかりやすい構図に変わった。
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ネジ式ザゼツキー
島田 荘司著
講談社 (2003.10)
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