『大泥棒と結婚すれば』ユードラ・ウェルティ/青山南訳(晶文社〈文学のおくりもの〉22)

 晶文社の海外文学シリーズ。ということで期待したのに期待はずれ。

 その名のとおり大泥棒と結婚した話なんだけれど、たとえば泥棒にさらわれた純粋な娘が機知によって窮地を乗り切り真心によって泥棒を改心させる、みたいな話では全然ない。O・ヘンリーの「赤い酋長の身代金」みたいなのとも違う。なんかけっこうどろどろと極悪な話である。

 ユーモアと人生の皮肉。民話風というか『本当は恐ろしいグリム童話』って感じだろうか。ヒロインが清廉ではなく嘘つき、だけど美人。継母がヒロイン以上に嘘つき、そして醜い。世の中はけっきょく顔と智恵、とでもいいたげなオハナシ。

 もっとピカレスクにしてくれたら面白かったと思うんだけど、中途半端にお伽噺調の、澄ました顔で“これは皮肉ですよ”みたいな書き方が好きになれなかった。

 『The Robber Bridegroom』Eudora Welty,1942年。

 18世紀後半、恐ろしい豹や鰐やインディアンが、わがもの顔に歩きまわっていた頃のこと。美しい少女ロザモンドは、ある日森の中で追いはぎにあった。素敵な紳士と大泥棒――ふたつの顔をもつジェイミー・ロックハートのしわざだ。二人の奇妙な恋物語をめぐって、優しい父親と意地悪な継母、稀代の悪党ハープ兄弟、頓馬な若者とその6人の妹たち、そして伝説の英雄マイク・フィンクまで登場して、物語は一気にクライマックスへ。
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  『大泥棒と結婚すれば』
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