『メグレと若い女の死』ジョルジュ・シムノン/北村良三訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1188)★★★☆☆

 『Maigret et la jeune morte』Georges Simenon,1954年。

 物語の骨子は『メグレと殺人者たち』と大して変わらない。メグレの捜査により、死者の肖像がくっきりと浮かび上がってくる作品である。その手の作品としてはやや二番煎じか。ただし本書の場合、そこに“無愛想な刑事”ロニョンがからんでくる。やはり味がある。

 メグレものにはリュカやジャンヴィエやラポワントやトランスらオルフェーブル河岸の刑事たちや、コメリオ判事といった準レギュラー陣が揃っているのだが、正直言ってみんなキャラ的にはメグレ夫人に勝てない。ラポワントが準主役になる『モンマルトルのメグレ』みたいなのは別にして、あくまで捜査陣の一人だから仕方ない。

 ところがロニョンというのはいわば部外者だから、この人が出てくるのにはそれなりの理由があるというか、印象に残る程度の重要な役どころで登場することが多いのだ。コンプレックスが強すぎてちょっと歪んじゃってるところがいい(^_^)。

 女は雨に濡れた歩道に頬をつけて横たわっていた。片方の足に靴はなく、安物のイブニング・ドレスは大きすぎ、三月だというのにコートもつけていない――メグレには、これが複雑な事件になりそうな予感がした……。都会にひとり出てきて、借物のドレスを着て死んだ若い娘とメグレの推理。充実期に書かれた、作者の代表作。
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