『16分署乗取り』トマス・チャステイン/後藤安彦訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1382)★★★★☆

 初めのうちこそ、インテリスノッブ臭いゲスト主人公の犯罪者が鼻につくのだが、ひとたび事件が起こってしまえば止められない面白さ。

 悪党どもの化かし合いに、あろうことか警察が利用されてしまうわけだが、倒叙コンゲーム小説と警察捜査小説を同時に楽しめるようなこの趣向がうまく成功している。もともとは「カウフマン警視シリーズ」の一篇らしいが。

 どうやって計画を成功させるのか。緻密に練り上げられた犯罪計画に、警察はいかにして立ち向かうことが出来るのか。犯罪者たちはお互いを出し抜くことが出来るのか。

 最後がきれいに収まり過ぎだが、計算されつくしたとも言えるわけで、それもまたよい。

 黒のセダンから降りたった四人の男は16分署の玄関を入り、デスクの巡査部長に居丈高な態度で名を告げた。警察内の警察と呼ばれる市警内部調査部の者で、緊急の立入り調査を行うという。ただちに署員は取調室へ送られ、巡回中のパトカーも呼び戻された。そして……一カ所に集められた署員は武装を解かれ、全員が留置場に監禁されてしまった。最後に、侵入者たちは三階の署長室、カウフマン警視のもとへ向かった……国際的な故買組織の黒幕ジュール・ベークルから与えられた計画を実行するために、ジェー・ティールは三人のプロを集めた。標的は2500万ドルの品物。一人一人に四人の部下をつけ、強奪団の総勢は十六人にふくれあがった。そして、強奪計画の成否は、16分署を手中におさめられるかいなかにかかっていた。
 分署内の詳細な間取りを手に入れた彼らは行動を開始した。おりから、管内で続発した強姦殺人の捜査に追われていた分署は、思ってもみなかった急襲のまえに、ますすべもなかった。強奪団の真の狙いは何なのか? そしてこの最大級の危機をどう乗り切るか? カウフマン警視とニューヨーク市警の焦燥はつのっていく!
(裏表紙あらすじより)

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