「鬼やんまの翅の下なる少年期 水平に網かまえていたり」吉川宏志

 鬼やんまは地面すれすれを飛びます。だからこそ「水平に網かまえて」いるわけです。北杜夫氏のエッセイによると、氏は「地面をするように飛ぶ」鬼やんまをステッキで叩き落としていたそうです。http://www.pippo.jp/tombo/kita/

 「鬼やんまの翅の下」には少年の世界があります。それはどこよりも広く高く深い。その世界にいる子どもであれば、網を水平にかまえるだけでよい。けれど大人にとってそこは、網を垂直に高く伸ばしても、あるいは深く降ろしても、絶対に届かない遙かな世界です。

現代短歌の鑑賞101
小高 賢編著
新書館 (1999.5)
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