『シャーロック・ホームズの冒険』特別編

●オリジナル(「正典」)の雰囲気よりはかなりユーモア色が強いので、ホームズファンというよりはワイルダーファン向け。ではあるけれど、随所にシャーロキアン的ネタが織り込まれているあたり、ホームズファンにも充分に楽しめます。マイクロフトが貧相なのがちょっと残念。

ワイルダー作品はもともと伏線を大事にしているものが多いだけに、ミステリ映画としてもしっかりしている方だと思います。依頼人との話の中でさらりと銅の指輪に触れているところなどは、うまいなぁと感じました。

●見終わってからふと連想したのですが、ホームズのマイペースぶりにいちいちツッコミを入れるワトスンというこの映画の探偵コンビ像は、ドイルの原作というよりは、島田荘司氏の御手洗と石岡コンビに似ていたかも。

これぞ特典映像!です。どうでもいいような特典映像付DVDが多い中、このDVDの特典は買って損なし、まぎれもない特典映像です。クリストファー・リーのインタビューはともかくとして。

 まず編集担当者へのインタビュー。撮影当時、ワイルダー作品らしいおしゃれなラストシーンを監督に提案してみたけれど、まったく相手にされなかった、なんてエピソードは(彼のアイデアが果たしておしゃれなのかどうかは別として)ワイルダーファンにはうなずけます。「完璧な人などいない」、「それはまた別の話」等々……。カットされたシーンについて話してくれているのも嬉しい。

 次いで、公開用にカットされてしまった幻のシーン4篇。さすがに全シーンは残っていないので、ほとんどはスチールと台本と音声を切り張りしたものなのですが、最後の一篇「裸のハネムーン・カップル殺人事件」は映像がまるごと収録されています。残念ながら音声は残っていないようなのですが、日本人にとっては英語音声をヒアリングするよりも英語字幕を読む方が内容を理解しやすいんじゃないかと思うのでかえってよかったかも。このシーンを見ると、映画全体がもともと持っていた雰囲気というのが伝わってきます。かなりコメディ色の強い楽しい雰囲気の映画だったようです。全篇見てみたかった。
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