「The Poor Man」A. E. Coppard

「Poor Man」とは「貧乏な男」であり「心貧しき男」であり「哀れな男」のこと。

 コッパードの複雑な宗教観がよくあらわれている作品。

 牧師の忠告にもかかわらず、飲酒も賭事も密猟もやめようとしない男はやがて……。

 心から忠告をする牧師に向かって、「おれたちは貧乏なのに教会だけはいつだってものが溢れている」「酒を飲むのは楽しむためじゃない。臆病だからだ。怖さを忘れたいだけなんだ」「金持をやめようと思えばいつでもやめられる。でも貧乏と縁は切れないし、向こうからも切ってくれない」と叫ぶシーンが印象的。

 だからといって密猟していい理由にはならないんだよね。一面は正論なんだけれど半分は言い訳。やがて神の罰がくだるのです……。

 でも。すべてが終わったあとで、「貧しきものに必要なのはおごることではなく悔い改めることだ」と主人公が独白するあたり、非クリスチャン的には納得いかん。わたしなら悪魔に魂を売るね。こんなことがあったなら。この改心シーンの直前に、「かつて聞いた話を思い出した。耳も聞こえなくなり、口もきけなくなってなお回心しなかった男。」という、とてつもなく印象的なフレーズがあるのだが、わたしはモロこの「回心しなかった男」タイプ。

 不信心者も“神の存在は信じている”という了解が前提にないとピンと来ない。
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