『ガタカ』(GATTACA,1997年,米)★★★★★

 イーサン・ホークジュード・ロウユマ・サーマンほか。

 遺伝子によって地位や将来が左右される近未来の地球。建前上は遺伝子による差別は禁止されてはいるが、あくまで建前。そんな時代にビンセント=アントン(イーサン・ホーク)は遺伝子操作ではなく、“愛によって”生まれてきた。疾患などの劣性遺伝子を持ったビンセントは宇宙飛行士にはなれない。遺伝子操作により生まれてきた弟アントンにはいつも体力勝負で負けてばかり。けれど宇宙飛行士になる夢はあきらめてはいなかった。ビンセントは、優秀な遺伝子を持っているものの事故により将来を断たれたジェロームジュード・ロウ)の身分を買い取り、宇宙開発会社に入社するのだった……。

 ほんの数年前までは、21世紀とは“未来”でした。でも“未来”である2005年現在の地上では、車が空を飛ぶこともなければ、家に召使いロボットがいるわけでもない。その一方で、指紋や瞳孔による本人確認システムは実用化され、中には導入している企業もある。この映画に描かれた近未来とは、ほんの目と鼻の先なのだ。おとぎ話でもSFでもない、リアルな近未来。

 けれどこの「DNA関連以外はほとんど現代」のリアルな近未来という設定、狙ったものなのか、杜撰さなのかは微妙なところ。

 というのもこの映画、細かいところであらが目立つ。なんで警察は初めから証拠を見つけられないんだとか、刑事の正体がそれって出来すぎだろうとか、いくら徹底してもこの方法で他人になりすますのは無理だろうとか、まあいろいろ。でもいい映画。

 可能性は初めから決められているものではなく自分で切り開くものだというまっとうな主張を、さわやかでありながらシリアスに、かつ切ない雰囲気でまとめている。

 可能性を自分で開くビンセントに対し、可能性を自ら断ったジェロームという好対照。なぜかジェロームの方により魅力を感じてしまうのは、単なる判官贔屓か、はたまたジュード・ロウの演技力か。ジュード・ロウは『A.I.』のロボット役もしていた。屈折してるけどまっすぐって役が似合う。一方のイーサン・ホークはひたすらまっすぐって役がこれまた似合います。
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