『アンナとロッテ』(2002,オランダ・ルクセンブルク)★★★★☆

 アンナとロッテは双子の姉妹。両親が死んでしまい、二人は親戚に引き取られることに。アンナはドイツの農家にもらわれ、ロッテはオランダの名家に引き取られるのだった。お互いに嫌悪し合っている引き取り手のせいで、アンナとロッテは手紙をやりとりすることもできない。大きくなったアンナはメイドに、ロッテは大学に進学。やがて再会できた二人だったが、ヨーロッパには戦争の影が差し始めていた……。

 現在と過去を交互に挟み込む手法自体はよくあるが、こういうのは珍しいかもしれない。だって現在での再会シーン、何十年かぶりに会ったのだと思うじゃん。ところが過去ですでに再会済み。おや、と思って現在に切り替わると、アンナから逃げるロッテ。おやおや、と思いきや、過去の確執が徐々に明らかになって……。

 幼い頃には一人がどうかするともう一人も異変を感じていた。やがて確執が生まれてからの二人と対照的。確執というのも違うんだけど。誰を憎んでいいのかわからない、憎むべき相手がいないということはままある。たとえば戦争。怒りのもっていきどころがないとどうにかなってしまいそうで、そんなときに矛先が向けられるのが一番身近な人間なのだ。終盤近く、アンナは「私は悪いことはしていないのだから許しは請わない」と言う。それをいうならロッテにだって、許すようなことは何もないのだ。アンナを憎んでいたのではなく、憎しみの矛先がアンナに向けられていただけなのだから。だからちゅうぶらりん。憎しみは宙に浮いたまま、消えることも増すこともなく何十年も過ぎた。

 双子だけど性格はまったく違って――というのは実際にもよくあるけれど、本編の場合は完全に環境によるもの。自分たちではどうにもならない外からの運命によるもの。だけどロッテに子どもが生まれてからあとの二人の運命は、自分たちで選んだものなんだよね。きっかけは里親とか住んでいる国とか戦争とかの境遇だったにしても。そしていちど間違ってしまうと、間違った時間を取り戻せないことがわかっているがゆえに、間違っていると悟っても認めようとしない。認めたくない。間違っていた時間が無駄だったとは思いたくないから。下世話に言えば意地っぱり。傷が消えるなんて嘘。でも傷が癒えないなんてのも嘘。運命に流されながらも、しっかりと生きてゆく二人のたくましい姿に心が洗われました。
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アンナとロッテ
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