『われ生きたり』金嬉老(新潮社)★★★★★


 「金嬉老元服役囚 女性を脅し逮捕」(北海道新聞 2000年9月4日)

 「金嬉老が身元引受人僧侶と『絶縁』していた!」(週刊文春 2000年1月20日新春特別号)

 本書を読んで感銘を受けたわたしにとって、この二つのニュースは正直に言ってショックだった。しかし考えてみると、わたしが金嬉老のことを、そして差別のことをどれだけ知っていたというのだろう。

 金嬉老事件が起こったのはわたしが生まれるかなり前のことだ。事件のことを知ったのは、ビートたけし主演のドラマがきっかけだった。本書を読んだのも、そのドラマの影響があると思う。だから本書を読んでいる時、知らず知らずのうちに、実際の金嬉老を、ビートたけしが演じた金嬉老のイメージに重ねていなかっただろうか。わたしは金嬉老の手記を読んでいるつもりで、単に以前に観たドラマのイメージを頭の中でなぞっていただけなのかもしれない。そんな読み方は、著者にとってもビートたけしにとってもとても失礼な読み方だろう。上記のような事件があった今だからこそ、もう一度本書を読み直して、本当の金嬉老を、そして本当の差別・差別との闘いを考え直してみたいと思う。おそらく金嬉老は、未だ闘い続けているのだ。
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 われ生きたり 
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