『ミステリマガジン』2006年3月号 No.601 創刊601号記念特大号 ★★★★★

 創刊601号記念特大号とは言っても、1/3は毎年恒例の年度翻訳ミステリ回顧&ベスト3なので、実質的には残り2/3が「クラシックミステリ特集」てな感じでしょうか。

 各ジャンルの希少短篇や傑作短篇に、それぞれのジャンルについての解説及び収録作品解題が付されているのだけれど、これがみなさん結構投げ遣りというかなんというか……。そもそもジャンル分けについて語ることほど難しくかつ不毛なことはないわけで、みなさん巧妙に(?)語るのを避けているせいでだらだらしたエッセイみたいなものが多いのが残念。ですが収録されている短篇は、さすが50年600号の重み粒ぞろいの傑作です。

「オールタイム・ベスト発表!」

 長篇部門:
1.『長いお別れ』チャンドラー[bk1amazon
2.『火刑法廷』カー[bk1amazon
3.『そして誰もいなくなった』クリスティーbk1amazon
4.『さむけ』ロス・マクドナルドbk1amazon
5.『幻の女』アイリッシュbk1amazon
6.『薔薇の名前エーコbk1amazon
7.『利腕』フランシス[bk1amazon
8.『八百万の死にざま』ブロック[bk1amazon
9.『Yの悲劇』クイーン[bk1amazon
10.『死の接吻』レヴィン[bk1amazon]/『赤い収穫』ハメット[bk1amazon]/『時の娘』テイ[bk1amazon

 アンケートによる十五年ぶりのオールタイム・ベストだそうです。順位だけ見るとどうってことありませんが、『長いお別れ』が二位の『火刑法廷』61点に倍以上の差をつけて145点で一位というのが気持ち悪いです。確かにいい作品ではありますが、あまりにも点数の開きが大きすぎてて。純粋に人気投票、好きな作品を選んだってことなんでしょうね。だって同じチャンドラーなら、評論家の方が選ぶとすれば完成度の高い『高い窓』『さらば愛しき女よ』あたりを評価しそうなものですが、作品としての評価よりも好き嫌いで選んだということなのでしょう。『マルタの鷹』ではなく『赤い収穫』、『三つの棺』ではなく『火刑法廷』が選ばれているのは、歴史的評価よりも面白さを評価しているという点でまっとうなアンケート結果といえそうです。健全健全。

 二十位の『ストリート・キッズ』ウィンズロウ[bk1amazon]はこれからスタンダードになっていきそうです。

 短篇部門:1.「南から来た男」ダール[bk1amazon
2.「特別料理」エリン[bk1amazon
3.「ジェミニー・クリケット事件」[bk1amazon
4.「おとなしい凶器」ダール[bk1amazon]/「妖魔の森の家」J・D・カー[bk1amazon
6.「九マイルは遠すぎる」ケメルマン[bk1amazon
7.「ガブリエル・ゲイルの犯罪」チェスタトンbk1amazon
8.「待っている」チャンドラー[待っているamazon
9.「アルセーヌ・ルパンの逮捕」ルブラン[bk1amazon]/「誰でもない男の裁判」A・H・Z・カー[bk1amazon]/「ブレッシントン計画」エリン[bk1amazon

 『チョコレート工場の秘密』[bk1amazon]が映画化されたダールや100周年のルパンあたりは今年ならではでしょうか。「南から来た男」の第一位はできすぎ?。好き嫌いでいうなら「獄中のルパン」だし。前回アンケートでは短編集部門で全滅だったハードボイルド系短篇がランクインしているのが目を引きます。著名作ばかりのラインナップにあって、ほぼ無名に近い「誰でもない男の裁判」と「ガブリエル・ゲイルの犯罪」は大健闘! たとえば各作家の短篇に関していえば、それほど差はないと思うんです。「待っている」のかわりに「ベイ・シティ・ブルース」や「赤い風」でもいいし、「特別料理」や「ブレッシントン計画」のかわりに「決断の時」でもいい。「南から来た男」や「おとなしい凶器」のかわりに「味」でもいい。「誰でもない男の裁判」も、いわば短篇集『誰でもない男の裁判』から表題作を代表として、みたいな意味合いで選んだのでしょう。だけど「ガブリエル・ゲイルの犯罪」は!? これは純粋にへんちくりんというか、ベスト10のなかでも異彩を放ってます。そりゃあたしかに傑作です。大傑作です。でも他のチェスタトン作品をさしおいてこれ!? いや納得はできるんですが、でもけったいな……。こんな傑作が絶版だなんて!というレジスタンスだと見た。

「海外作家からの祝辞」

 「ジャンル別ベスト短篇」の〈犯罪小説〉の項を読むにつけても、祝辞にある「ミステリ」とか「犯罪小説」という単語が原文ではどうなっていたのか気になります。祝辞を寄せたメンバーは凄いけれど、祝辞ですからとーぜん内容は他愛もないものです。

「現代本格の行方」「『容疑者Xの献身』は本格か否か」二階堂黎人/『容疑者Xの献身』は難易度の低い本格である」笠井潔

 ずうっと以前に我孫子武丸が『本格ミステリ・ベスト10』で、『死の蔵書』を「本好きにはたまらない」と評した書評家たちをぶったぎっていたのと基本的には同じ。「本好きにはたまらない」ような内容の本でないにもかかわらず、古本が出て来る小説というただそれだけで「本好きにはたまらない」とお題目を唱え続けた書評家の姿勢を問題にしていたわけですが。本稿もかいつまんでいえば、本格ミステリではない『容疑者Xの献身』を「本格ミステリの傑作」と評すのはいかがなものか、という内容。我孫子論が、“書評家を評論する”という、評論のパロディみたいになっていたのに対して、二階堂の文章は見えづらい。相変わらず説得力ないし。

「ミステリアス・ジャム・セッション第58回」真梨幸子

 見た目が小泉喜美子みたいで何となく期待してしまう。ものすごくしっかりとした創作方針を持っている方である。想像するに真保裕一みたいな感じかな? 好き嫌いや評価は別にして、まず読ませる作家。

「ミステリマガジン601号史」年表

 総目次ではなくピックアップしているとはいえ、やはり錚々たる掲載作です。年表の横の軸にタイトルがないから、長篇タイトルは原書出版なのか邦訳出版なのかよくわからん。

「未亡人ポーチ」ジャック・フィニイ小尾芙佐訳(The Widow's Walk)【ジャンル別ベスト短篇「サスペンス」】

 唾でも吐きかけてやりたい。あのひとがわが家に現れるまでは、アルもあたしも気楽なものだった。どこにいても四六時中、姑の存在を肌に感じていた。そう、あたしはあのひとをころそうとしているのだ。

 新保教授いわく、中の上ということですが、悪くありません。通常掲載されている新作の多くが中の下以下であることを考えれば、充分に傑作です。やっぱりフィニイというとファンタジー系のイメージがあるので、全然フィニイっぽくはないですが。釘の音が絞首台を建てる音に重なる場面は“ショック”ですね。それまでのサスペンスがひとまずクライマックスを迎え、あとにあるのは絞首台への道。やるかやられるか。絞首台に昇るのは、あたしかあのひとか、です。

 新保教授の解説。『ミステリ・ハンドブック』にも引用されていた、ヒチコックによるサスペンス・スリル・ショックの話がここにも引用されています。出典は小泉喜美子サンだったのですね。

「冷蔵庫の中の赤ん坊」ジェイムズ・M・ケイン/田中小実昌訳(The Baby in the Ice Box)【ジャンル別ベスト短篇「犯罪小説」】

 あれはいわば、ある男とそのワイフが一匹の虎と馬とびごっこを始めたんだ。猫を持ち込んでからデュークとルーラの間がまずくなった。猫を見世物にして儲けようって魂胆だ。山猫、山ライオン、そしてとうとう虎をつれてきてから、なにもかもまずくなってしまった。

 『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』[bk1amazon]の前身短篇。コミマサ訳で再録です。犯罪小説というよりもほとんど奇想小説といっていいようなぶっとんだ内容だと思います。ま、どんな内容であれ、いい女と新しい男と嫉妬に狂った愚かな男さえ出てくれば犯罪小説になるのです。昼ドラもびっくりのサービス精神旺盛な骨肉相食む泥まみれの争い模様に、語り手がちょっとセンチメンタルな味付けをしてくれています。

 小鷹信光氏による作品&ジャンル解説。どうも英米には「ミステリ」や「犯罪小説」を指す言葉がないらしい、というか英語の「crime fiction」とは日本語でいう「ミステリ」全般という概念に近いようです。これはなかなか興味深い指摘。紹介されている作品では、『エドガー賞全集』が意外と面白そうでした。シャーリイ・ジャクスン「悪の可能性」、ジョン・フィル・フォード「留置所」など。『犯罪文学傑作選』も。

「蠅取り紙」ダシール・ハメット木村二郎訳(Fly Paper)【ジャンル別ベスト短篇「ハードボイルド・私立探偵小説」】

 それは道を踏み外した令嬢を探すという仕事だった。完全に姿を消してしまった娘から父親のもとに電報が届いた。「千ドルほどを送金してちょうだい」おれは現金を受け取って指定のアパートのボタンを押した。ドアを開けたのは細身の男で、令嬢の友だちだという。

 ハードボイルドは「大人の小説」であると主張する人たちからはあまり高い評価を得られないかもしれないが、やはりハメットこそがハードボイルドの生みの父であり育ての母だと実感する一篇。マーロウは「しっかりしていなければ生きていけない。優しくなければ生きてる意味がない」と言ったけれど、チャンドラー以後まさにその言葉通りの道を歩み始めてゆくジャンルにあって、優しさもしっかりも持ちながらそれを押し殺した文体は始祖固有のものです。優しさも老練さも口に出して語る必要はありません。事件に関わった人々が優しさも狡猾さも持ち合わせた生きた人間である以上、事件を描写するだけでどちらも伝わってくるのだから。

 ジャンル&作品解説は木村仁良。ジャンル解説の内容は、ご本人も書いているとおり、「ハードボイルドって本当は何なの?」の繰り返し。でも繰り返さざるを得ない現状があるというのもきっと事実なのでしょう。ちょっとずれるけど上に引いたマーロウのセリフ。郷原宏ギムレットには早すぎる』[・]でも指摘されているとおり、「しっかり(hard)」とは「抜け目ない/非情な」という意味であって、しっかり・ちゃっかりという意味の「しっかり」なのだけれど、検索してみたらそもそもちゃんと引用している人自体が少ない……。「強くなければ」とか「タフでなければ」とかが圧倒的。ああなるほどこれが現実なのね。

「手がかりのC」ローレンス・トリート/常田景子訳(C as in Clue)【ジャンル別ベスト短篇「警察小説」】

 デッカー警部補がかけつけた殺人現場には、ロブスターが一匹残されていた。唯一の目撃者……。

 なぜかロブスターに詳しいバンクハートとか、鰐の剥製を部屋に飾るデッカー警部補とか、短いながらも個性的な捜査陣が登場して楽しませてくれる。こういうところが警察小説の魅力の一つです。この短編だけでは、いつまでも記憶に残るというほどの強い印象を残してはくれなかったけれど、長篇『被害者のV』も読んでみたいところ。長谷部氏の解説はまあいいでしょう。

「不健全な死体」アントニイ・バークリー/武藤崇恵訳(Unsound Mind)【ジャンル別ベスト短篇「本格ミステリ」】

 モーズビー主任警部に電話がかかってきた。「これから自殺します。青酸を飲んで」 あわてて駆けつけたモーズビーを待っていたのは、ストリキニーネが原因で死んだ男の死体だった。

 青酸自殺を予告しながらストリキニーネで死んだ男。という魅力的な発端から始まるこれぞ本格ミステリ。といいつつも、解明されるというより想像されるという形でしか真相が明らかにならないのがバークリーの面目躍如!?

 森英俊による解説はエスニック本格とかパラレル本格とかヘンな方向に走ってる。グラディス・ミッチェル『月が昇るとき』なんかは発売以来読もうかどうしようかずっと迷っていた作品だし、個人的にはヘンな話の方が好きではあるんだけど。

「空飛ぶ追い剥ぎ」リリアン・デ・ラ・トーレ/宮脇孝雄訳(The Flying Highwayman)【ジャンル別ベスト短篇「歴史・時代ミステリ」】

 ジョンスン博士とボズウェルがサー・ジョンに会いに行くと、追剥ぎに襲われたという男が現れて……。

 このジョンスン博士とボズウェルというコンビがどうにもピンと来なくて、いままでにこのコンビが登場もしくは言及されている作品で面白いと思ったものが一つもありません。日本でいえば誰になるんでしょうかねえ。芭蕉曽良の探偵コンビとか……。面白くなさそう。例えば平賀源内が探偵役って言われればすごく面白そうだし(実際十蘭作品にあるわけですが)、イギリスにももっとほかに誰かいそうなものなのですが。ミステリ的にも歴史風俗的にもたいした話ではありません。解説で触れられている平井呈一訳『消えたエリザベス』を読むべきなのでしょう。クリスチアナ・ブランドの歴史ミステリ『Heaven knows who』も翻訳されてほしいものです。

「シティ・オブ・ベナレス号の悲劇」アリステア・マクリーン/高岬沙世訳(City of Benares)【ジャンル別ベスト短篇「冒険小説」】

 この定期船に乗っていた百名の子どものうち八十三名もが海上で命を絶たれた。女たちは子どもを抱いて暗い海に飛び込んでいく。乗務員たちは次々に海に飛び込んで転覆したボートを立て直し、救えるかぎりの乗客を救った。ほぼ全員の頭にあったのは、子供たちのこと、それだけだった。

 いくら広い意味でもこれをミステリと呼ぶのには抵抗がありますが、それでもやはり傑作であることにはかわりありません。ただただ淡々と沈没と救出の様子を描いているだけなのですが、へたなスリラーの何倍もの緊迫感や焦燥感、熱い思いが伝わってきます。

 北方謙三水滸伝』[bk1amazon]が面白いらしい。北方版『三国志』ははっきり言って期待はずれ(期待しすぎ?)だった(だってほとんど『魁!男塾』とか『北斗の拳』の世界)のだけれど、『水滸伝』には期待します。

「スパイ」リチャード・ハーディング・デイヴィス/三木怜訳(The Spy)【ジャンル別ベスト短篇「スパイ小説」】

 私がヴァレンシアに行くことになったのはまったくの偶然だったのだが、誰もが密命で来たのだと思い込んでいた。船上で出会ったジョーンズという男はいけすかない工作員だった。

 スパイ小説というのは肌に合わない。時代が違うというのを差し引いても。解説で紹介されていた、「スパイ小説の公式」がおかしい。1.マスター・スパイは、通常、退役軍人であり、一般人を選んで、ダーティ・ビジネスに誘いこむ。2.疑いもせずに誘いこまれるのは、人間性の観察者である文筆業《ライター》とか教授で、乗気ではないが、不安を克服して使命を引き受ける。……etc...。

「黒いプディングデイヴィッド・グーディス/三川基好訳(Black Pudding)【ジャンル別ベスト短篇「ノワール」】

 足音で誰かわかった。オスカーとコーリーだ。九年前にケンを裏切った男たちが、復讐を恐れて始末をつけに来たのだ。ケンが逃げ込んだ廃墟の地下室には、顔に傷のある女だけが住んでいた。

 これがたとえば「犯罪小説」とどう違うのか、と思うのは当然の話であって、そこらへんは「犯罪小説」や「ノワール」のジャンル解説を読めばなんとなくはわかるわけです。でもまあジャンルはどうでもいいでしょう。一言でいえば本作はちょっと甘めのノワール。そもそも、ノワールが暗黒社会のリアリティを云々というのは雰囲気についての話であって、設定自体はなんじゃこりゃ的な話も多かったりすると思うんですが、そんなのが気にならないほどの迫力と魅力を持っているのこそがノワールなのだとも言えましょう。というわけで本編は正真正銘のノワール。甘くてどす黒い甘美な麻薬です。

「過去からの歌声」ロッド・スターリング/尾之上浩司訳(They're Tearing Down Tim Riley's Bar)【ジャンル別ベスト短篇「異色作家】

 レーン部長は疲れていた。勤続二十五年。ねぎらいのない社長。出世をがっつく若手。妻が死ぬときも仕事をしていて気づきもしなかった。あげくに今、会社を放り出されようとしている。同じころ、かつて仲間と騒いだティム・ライリー酒場は取り壊されようとしていた。

 説明不要の『ミステリー・ゾーン』でおなじみロッド・スターリングです。といっても『ミステリー・ゾーン』世代ではないので、ノヴェライズや『トワイライト・ゾーン』『アメージング・ストーリー』『世にも奇妙な物語』あたりから想像するしかないわけですが。

 尾之上浩司は異色作家の再評価・紹介などをしてくれるありがたい人ではあるのだが、相変わらず訳は下手だし解説はトンチンカン。

「GUN講座中級編 第12回」小林宏

 小説を読むだけの分には銃を操作するシーンが具体的に目に浮かばなくてもさほど困りはしないのですが、ナルホド翻訳者さんにとっては厄介の種なのですね。というわけで銃用語解説ですが結構面白い。

ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか? 第95回 倒叙探偵小説と叙述探偵小説」笠井潔

 前回の続きであるという以上に、本号冒頭に収録された二階堂黎人のエッセイ及び笠井氏自身のエッセイに関する解説のような役割をも担っています。

「瞬間小説 29」松岡弘一

 「タッチスイッチ」「何があったのですか」「物忘れ」「鍛錬」「泣き相撲」。「物忘れ」は落語にありそうな感じ。

「夜の放浪者たち 第15回 荒畑寒村「出獄の翌日」(後編)」」野崎六助

「MWA賞の映画誌 第44回=1997年」長谷部史親

 『スリング・ブレイド』『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』『ファーゴ』『トレインスポッティング』『真実の囁き

「英国ミステリ通信 第87回 イギリスの翻訳ミステリ」松下祥子

「ヴィンテージ作家の軌跡 第35回 レナード――デトロイトの奴ら(前編)」直井明

 やはり前回の話はこの号に続いていたんですね。

「冒険小説の地下茎 第72回 知られざる革命の物語」井家上隆幸

 坂東眞砂子『梟首の島』

「海外ミステリ情報275」オットー・ペンズラー

「今月の書評」など

 キャロル・オコンネル『魔術師の夜』はマジシャンが出て来るという時点で面白そう。マロリー・シリーズはそれほど好きではないのだけれど、余裕があれば読んでみようと思う。

 カール・ハイアセン『幸運は誰に?』は表紙から勝手にバカミスかと思っていたのだが、「痛快なお宝争奪戦」とのことで興味再来。ウッドハウス『エムズワース卿の受難録』はいうまでもなく。

 ハミルトン『眠れる人の島』はチェック。マレル『廃墟ホテル』[bk1amazon]に関していえば、『苦悩のオレンジ、狂気のブルー』[bk1amazon]が邦訳出版されていたことも知らなかったよ。えらいところから出版されてるな。これじゃ気づかんわ。

 『ケネディを殺した副大統領』。面白そうではあるのですが、邪馬台国ものと一緒でこの手の話は今後いくらでも出てきそうでもあり、読むかどうかは微妙なところ。切り裂きジャックもそうですが、もはや真実かどうかは問題じゃないですね。アメリカ人にとってはまだまだ歴史ではないのでしょうが。

 『SFマガジン』の書評で興味をそそられた『ナイト・ウォッチ』だが、風間賢二はこてんぱんですね。しかしYAになぞらえながら、「なぜ本書が本国で三百万部も売れたのかは疑問として残るが」というのは、とんちんかん。YAレベルだから売れてるのでは……?

「夢幻紳士 迷宮篇 第1回=叫び」高橋葉介

「翻訳者の横顔 第75回 体育会系?」平井吉夫

 『ドクトル・マブゼ』の翻訳者です。が基本的に社会派っぽいのが多いみたいです。

「私のベスト3 2005年」

 太田浩一曰くルパンものが「翻訳によってこうも印象が異なるとは」ということなので新訳も読んでみたい気がするけれど、氏が以前に読んだのが保篠龍緒訳なのか堀口大学訳なのかはたまたまったく別の訳者になるものなのか。偕成社ルパン全集で読んだ分には充分面白かったので。

 小山正曰くアラン・ブレナードは「現代の“ロッド・サーリング”(と言ってはホメ過ぎかもしれないが」とのことなので、「魔法の国の女王」はチェックしておきます。

 恩田陸の第二位『偶然のラビリンス』デイビッド・アンブローズは、「とても変なミステリ」としかないので内容はまったくわからないのですが、とにかく「変なミステリ」という言葉に惹かれました。

 佳多山大地のコメントは目のつけどころなんかが好きなのでチェックしてしまうのだけれど、今回はそれほどでもなかった。「クイーン生誕百周年記念」だから、といって『エラリー・クイーンの国際事件簿』を一位にするのが氏らしいといえばらしいけれど。

 日下三蔵杉江松恋らが挙げている『百番目の男』ジャック・カーリイが気になる。あとはマイクル・イネスかな。『百番目の男』は与儀明子「サイコ小説の当たり年」で詳しく紹介されていました。
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