『星のカギ、魔法の小箱』小谷真理 ★★★★★

 さして都会に住んでいるわけでもないので、大手の文庫や雑誌ならともかく、単行本が発売日とともに書店店頭に並ぶということは少ない。そんなわけだから、購入をためらっているものなら大型書店で確認するのだけれど、初めから買うと100%決めているものについては実物も見ずにさっさとネット書店で注文してしまいます。でも届いてみて驚いたのは今回が初めてかも。

 薄いっっっ! 北村薫『ミステリ十二か月』[bk1amazon]の姉妹編で。同じく1890円で。というイメージがあったものだから驚いてしまいました。今の勢いを考えれば、ファンタジーものが売れない、ってことはないだろうから、これは北村薫という“小説家”と小谷真理という“評論家”の違いなのかなぁと悲しくもなり。紹介されている本の数自体は、50冊と60冊で本書の方が多いんですけどね……。オールカラーということを考えれば値段的には妥当です。北村本が豪華すぎるのだ。

 閑話休題

 もともと子ども向けに連載されていたものではありますが、選定作品の幅の広さや的確で(ときに意外な)ポイントを押さえた紹介文など、どんな年齢の方でも楽しめます。

 目を惹かれたところを、既読・未読の作品からそれぞれ一つずつピックアップしてみると――

 既読『海底二万里』[bk1amazon]:「彼の描き出す海は、新奇な驚異に満ちあふれた異世界のようにロマンティックですが、なによりも潜水艦の雰囲気がとてもお洒落なんですよね」

 何よりも冒険に酔いしれていたから、お洒落かどうかなんて思ってもみませんでした。今度読み返すときはそんなところにも注意してみようかな。潜水艦だけじゃなくって、気球とか、ロケットとかも。

 未読『グリーン・マイル』[bk1amazon]:「こわいことばっかり書いている作家なのに、どうしてそんなに人気があるの?(中略)読んでみれば、わかります。なにしろとっつきやすいし、ハラハラドキドキ、筋書きが変化にとんでいるから、やめられません」

 「とっつきやすい」ってのが(笑)。確かにその通りなんですが、なんか笑っちゃいました。理由の一番目に書かないで下さいよ。。。それはともかく小谷氏の一番好きなのがこの『グリーン・マイル』なのだそうです。

 何度読んでも苦手なラヴクラフトさえも読み返してみようかな、なんて思ってしまう、驚異の案内書なのでした。
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