『眠れる人の島』エドモンド・ハミルトン/中村融編(創元推理文庫)★★☆☆☆

 〈SF〉編の『反対進化』がそこそこ面白かったこともあって期待してたんですが……。〈怪奇幻想〉編とはいいつつ、ほとんどが〈秘境冒険〉編でした。カバーイラストは幻想的ですごくいいんですけどね。収録作は幻想的というより神話的なこってり味ファンタシー。

「蛇の女神」(Serpent Princess)★☆☆☆☆
 ――ペルシア湾に臨む神殿の遺跡。碑文を発見したその夜、考古学者のマックリンは、封印を解くよう求める女神の夢を見た。

 秘境冒険もの。本書収録作は基本的にこのタイプ。神殿、美(少)女、神々、ジャングルや山々etc……。香山滋の作品もそうだけれど、わたしは基本的にこの手の作品が苦手なので点が辛くなる。別世界+美女にひと目ぼれ+カタストロフィ。

「眠れる人の島」(The Isle of the Sleeper)★★☆☆☆
 ――沈没したメアリ・D号の生き残りギャスリンがたどり着いた島には、一人の少女がいた。自分もこの島もすべてが眠れる人の見る夢だという。

 これも秘境冒険もの。「眠れる人の島」というアイデアこそ奇想なのだけれど、小説の内容自体は「蛇の女神」と大差ない。

「神々の黄昏」(Twilight of the Gods)★☆☆☆☆
 ――故郷に戻ったエリックが山の上で体験したのは、北欧の神々の世界だった。エリックは神の世界から地球に落とされた英雄だったのだ。

 これも秘境冒険ものの変形。あるいは著者得意のスペースオペラ北欧神話が題材。〈SF〉編収録のスペースオペラは面白かったから、本篇も面白いはずなのだけれど、本書収録作は全体的に似たタイプの話ばかりなので飽きてしまうのは否めない。

「邪眼の家」(The House of Evil Eye)★★★☆☆
 ――邪眼に襲われ衰弱する息子を救ってほしい。依頼人に頼まれたデール博士は、邪眼の持ち主ミオーネ家に向かったのだった。

 秘境探検もの中心の本書にあって、『怪奇小説傑作集1』あたりに入ってるようなクラシックな怪奇小説。ゴーストハンターものだそうです。何はともあれ舞台を変えただけで大筋は変わらない秘境ものの中では光ってる。

「生命の湖」(The Lake of Life)★★★★☆
 ――億万長者の頼みによって、クラークは不老不死の水を求めてアフリカに向かった。原住民や死の山から逃れてたどり着いたのは、山奥にある都市であった。

 これも秘境冒険ものなのだけれど、本書の半分近くを占める中篇であることもあって“冒険”にも筆が割かれている。そのおかげで読んで面白い作品になっています。本書中で唯一、〈SF〉編にもあるような明朗な活劇が楽しめる。クライマックスあたりは『荒野の七人』のようでもあります。あるいは『ONE PIECE』とか『ドラゴンボール』とかの仲間と一緒の冒険もの。
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