『びっくり館の殺人』綾辻行人(ミステリーランド)★★★★☆

 クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、「リリカの部屋」で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に! あれから10年以上がすぎた今もなお、事件の犯人はつかまっていないというのだが…。

 まずはタイトルに大笑い。館ものの正式な第八作だそうです。やってくれます。もうこれだけで★5つあげてもいいくらい、わたしとしては大満足です。

 で、内容はというと、綾辻氏にこんなにストーリーテリングの才があったの!?(失礼<(_ _)>)というくらい、ぐいぐい読ませます。これは、表向きが謎解きものとか犯人当てとかの形式を取っていないというのが大きな原因でしょう。単純だけど大胆な仕掛けは素晴らしいし、どこまでもフェアかつ秀逸なミステリなのですが、あくまでもうわべは少年たちの“一夏の冒険”もの(一夏じゃなく一年ですが)のような体裁を装っています。

 子どもたちはきっと本書をわくわくしながら読んで、最後にミステリならではの破壊力を味わって病みつきになるのだろうし、大人は大人でなまじリーダビリティが高いだけに、伏線に気づかずすらすら読んじゃうんでしょうね。

 館に集まった人たちがいろいろ言い合ったり素人探偵談義をしたり、というのが館シリーズの醍醐味なんだよ、という方がもしいらっしゃるなら、残念ながら本書にはそういう場面はありません。言い方を変えればつまり本書には、ヒントになるようなセリフや推理をしてくれる登場人物がいないというとこになるわけで、純粋に作者と読者の知恵比べができる作品だといってもいいでしょう。

 七戸優氏の挿画も、古き良き“探偵小説”の匂いがぷんぷんでいい味だしてます。
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