「My Favorite SF」(第5回)梶尾真治
アーサー・C・クラーク『太陽系最後の日』。『SFマガジン』創刊号で読んだというのがえらい。
「押井守『立喰師列伝』とは何か」
押井守監督の最新作は――何だかすごいことになってる。実際に見てみないと文章と写真だけでは想像もつかない。
「『立喰師列伝』の正しい鑑賞法」友成純一
『攻殻機動隊』『イノセンス』はサイバーパンクであり、『立喰師列伝』はサイバーパンクの到達点だそうである。押井守は好きだがサイバーパンクSF小説は苦手、というわたしにはなんともはやな結論である。
「あれから10年――『新世紀エヴァンゲリオン』の残したもの」前島賢
言うほど「一般層からの支持」なんかなかったと思うけどなあ。一般人も名前を知ってる、ってだけの話で、一般人で実際に見てる人なんて皆無だったと思う。
『怨讐星域』第一話「約束の地」梶尾真治★★★★☆
――瞬時で意識を取り戻した。人声がする。男がマサヒロに話しかけた。日本人だ。太陽のフレア化から逃れるために、地球人は急ごしらえの物質転送器で“約束の地”にジャンプし始めた。何もないその地で、見知らぬ外敵に脅えながら新たな文明を築こうとしていた。
月刊誌の連載だから――と思って読んだのに、次回掲載は八月号と書かれてあった……Σ(゚口゚;。今号の内容を忘れちまうじゃないか……。
見どころはたくさんあるわけで、地球の最後に対する感傷・政治モデル、家族や人間関係の機微、新天地でのサバイバル、襲いかかる地球外生物etc...わたしがいちばん楽しめたのは、けったいな惑星生物たち。別段クリーチャー好き・怪獣好きではないのだけれど、妖怪好き・幻獣好きの心をくすぐる動物たちでありました。
「ナガサキ生まれのミュータント」鼎元亨(第1回日本SF評論賞・選考委員特別賞受賞作)★★★★☆
――『ペリー・ローダン』シリーズにはおかしな名前の日本人が登場する。果たしてこの名前は電話帳から適当に拾っただけなのか。検証してみると、特定の地域に滞在していた特定の人物が浮かび上がってくるのである。
4月号の選評にて選考委員から「誤読」という“誉め言葉”を頂戴していた作品。面白いですよねこういうの。学術論文ではない文芸評論ならではの面白さ。
「フォクシーガール」田中哲弥★★★☆☆
――菜々美がお金目当てに添田と喫茶店に入ろうとすると、完全武装した男たちが現れた。途端に爆発が起こり、添田の鞄から狐の子どもが飛び出した。咬まれた菜々美はスーパーヒーローに。間違えて攫われた恭平を救うべく、菜々美は立ちあがったのだった!
うぅ。つらい。ラノベにはついていけません。けっこうSFしてる人らしいので、他の作品を読んでみようかと思います。ラノベテイストでないやつ。
「おまかせ!レスキュー」95 横山えいじ
「私家版20世紀文化選録」89 伊藤卓
映画『青い凧』、篠田節子『斉藤家の核弾頭』、猫十字社『小さなお茶会』
「デッド・フューチャーRemix」(第51回)永瀬唯【第10章 ジュール・ヴェルヌ、ルナティクス 第8射】
晩年のヴェルヌにあったのは「発明への夢である。政治ではなく技術そのものによる世界の変革である」。ヴェルヌの社会派小説家としての側面に光を当てた『詳注版 月世界へ行く』や、『八十日間世界一周』が信用の物語だ、という鹿島茂氏の評論を思い出しました。そういえばヴェルヌは“SF”作家ではなかったのだ。しかし「変節」以前の作品の方がセンス・オブ・ワンダーに満ちあふれているというのは皮肉ではある。
「SFまで100000光年 33 博士の異常な数式」 水玉螢之丞
元祖ファミコンの話。懐かしい。ていうかやりてー。
「詩とダンス」加藤龍勇《SF Magazine Gallary 第5回》
詩とは言葉、ダンスとはコミュニケーション、のことだと思う。丸いスカートのダンサーたち。獣のスカートで歩く(走る)女たち。
「MEDIA SHOW CASE」渡辺麻紀・添野知生・福井健太・丸屋九兵衛・編集部
『ナイト・ウォッチ』って映画化されてたのか。ビアス「アウル・クリーク橋の一事件」の映画化『ふくろうの河』[amazon]がDVD化されるそうだ。これが楽しみ。
「火の星から飛んできたあの子たち」タカノ綾
著者にしては比較的ストーリーのある作品、だと思う。タカノ綾の漫画は、とめどなくふくらむイメージだけが先行すると思っていたけれど、そうかもともと漫画化じゃなくアーティストだったのか。インタビュー&タニグチリウイチによる評論付。
「西島大介インタビュウ 西島大介☆サクセスの秘密」西島大介×大森望
「大森望サクセスの秘密」のおかえしとばかりに西島大介インタビュー。気の置けない仲なのでしょう。大森氏が冷たく突っ込み、西島氏が思いをうまく言葉に出来ずに(一見)ヘンなことをしゃべる。不思議なインタビューだ。佐々木敦による評論あり。
「SF BOOK SCOPE」石堂藍・千街晶之・長山靖生・他
『ラス・マンチャス通信』でファンタジーノベル大賞を受賞した平山瑞穂の新作『忘れないと誓った僕がいた』[bk1・amazon]が出た。
ゼナ・ヘンダースン『ページをめくれば』[bk1・amazon]は面白かった。ノーマン・ベロウ『魔王の足跡』[bk1・amazon]は幻の不可能犯罪もの。やっぱり気になる。
「日本SF全集[第三期]第十五巻 野阿梓 その2後期」19 日下三蔵
「SF挿絵画家の系譜」(連載2 武部本一郎)大橋博之
誰もが知ってるバローズ『火星』シリーズのイラスト作家。奥さんの「デジャー・ソリスは私なの」のひとことが楽しい。
「サはサイエンスのサ」136 鹿野司
使い捨てパソコンだそうだ。ケータイで低音質の音楽聞くなんてのも初めは冗談にしか聞こえなかったしなー。
「センス・オブ・リアリティ」金子隆一・香山リカ
狂牛病の原因は究明されていないのだということを忘れていました。
読者がひといきで読んでくれる字数が250字って……。
「転職」曽田修《リーダーズ・ストーリイ》
――わたしは運転席に腰を下ろした。何億光年彼方の星の様子が覗けるサイバースコープの発明者だ。今は星間バスの運転手をやっている。
こういうのをオチという。こういう発想ってSFでは古典的なのだろうか? わたしは虚を突かれた。うまいうまい。
「近代日本奇想小説史」(第47回 大衆小説の芽生えと奇想小説の関係)横田順彌
佐々木邦『いたづら小僧日記』が紹介されています。新学社文庫版は持っているけれど、漢字を開いてしまっているので別物みたいだ。やはりオリジナル通り「乃公《おれ》」とか「最初《はじめ》」とかいう表記で読みたい。やがて『いたづら小僧日記』の系譜作品は、社会の裏事情を暴露するものへと変化してゆき、それが〈吾輩〉ものと合体して、新たな奇想小説が生まれたそうな。
「MAGAZINE REVIEW」〈アシモフ〉誌《2005.10/11〜2006.1》深山めい
それほど面白そうなのがなかった。残念。
「小角の城」(第4回)夢枕獏
「罪火大戦ジャン・ゴーレ」(第16回)田中啓文
「女神の箱庭」森奈津子★★★★☆
――笛が好きなジンタはオトコオンナのオシマの家によく出入りしていた。村では年若い男女が一緒に過ごすことを禁じている。レンという若者が、笛を習いにくるという名目でジンタの姉ミヤコを見つめていた。やがてミヤコは婚礼期に入り、婿入りすることになった。自らも恋に目覚めていたジンタは、そこで不可解な事実を目にした……。
ユートピア&ジェンダーSF。なにかほとんど性に対する悪意すら感じるような話。ちょっと昔の小田舎のような雰囲気がいい。ジェンダーSFではあるけれど小難しく考えずに牧歌的で切ない恋愛ものだと思って読んでもいい。
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