「My Hundredth Tale」「Ring the Bell of Heaven」「Nixey's Harlequin」A.E.Coppard

「My Hundredth Tale」★★★☆☆
 コッパード自身を思わせる小説家ジョン・フリンが問わず語りに語る、幼い頃の思い出、自分にとっての書くという行為、恋、恋、恋。『The Collected Tales of A. E. Coppard』収録作のうち、「The Cherry Tree」「The Presser」にもジョン・フリン(John Flynn)が登場する。おそらく作者の分身なのでしょう。しかしこのジョン・フリン、やたらと恋多き男です。
 

「Ring the Bell of Heaven」★★★★★〜★★☆☆☆
 ――「晩鐘が日没の訪いを告げる」。ポスターにしるされた惹句にブランフォード少年は心躍らせた。意味はよくわからないが何か予感がしたのだ。父にねだって観劇した演し物は夢のような作品だった。

 子供の頃に見た演芸場の演し物が忘れられなくて、俳優になろうとする少年の物語。少年の目から見た第一部の演し物がきらきら輝いて見える。ほんものの魔法の呪文をかけられたよう。どきどきした。第二部はサーカス団員になった少年とその挫折。第三部・第四部は、宗教に目覚めた少年と布教&恋とそのまた挫折。三つの別の物語が組み合わされたと思った方がいい。だんだんと辛気くさくなっていくのが残念。第一部はピカ一。“悪魔裁判”の様子がどこか“鼠裁判”とか“虫裁判”みたいでおかしい(笑わせようとしてるわけじゃないんだろうけど)。
 

「Nixey's Harlequin」★★★★☆
 ――わたし、トマス・ウィルソンが恋心をいだいていた女性が殺された。遺された日記には何人もの男の名前が書かれていた。だが日記に書かれたトマス・ウィルソンはわたしのことではない。同姓同名の別人だ。そのことだけはみんなに伝えたい。わたしにはそんな勇気はない。

 「Nixey's Harlequin」とは、裁判所まで証人(?)を運ぶバスの名前。Nixeyさんのハーレクィン号。コッパード特有の宗教的人生的懊悩が表だって吐露されていないぶん、ちょっと幻想的で静穏な雰囲気のいい作品。
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 The Collected Tales of A. E. Coppard

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 出版社が違うところを見ると、wilder 手持ちの本とは収録作も違うかもしれない。


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