凶悪犯に腹をめった刺しにされて一年間休職したローガン・マクレイ部長刑事が復帰早々に遭遇したのは、寒風吹き荒ぶ水路に浮かぶ、幼児の無惨な死体だった。あまりにむごい光景にローガンの傷ついた内臓はよじれそうだった。これをきっかけにしたように、街では幼児が次々に姿を消す。おぞましい連続殺人鬼が徘徊しているのか? 警察は批判の矢面に立たされ、さらには内部の何者かが情報を新聞社にリークしている。いきなり捜査の最前線に投げ込まれたローガンは苦戦を強いられるが……英国ミステリ界に颯爽と登場した新星、堂々のデビュー作。(裏表紙あらすじより)
ぶ厚いけど一気に読める。すべてが解決される出来すぎの結末も気にならない。エンターテインメントの見本のような作品。映画みたい、とかドラマみたい、と言うのがぴったりする。できのいい警察サスペンス&スリラーを連想すれば遠からず、です。
刑事のローガンはすべての制服警官を知っているわけではありません。だから初めて会ったときの印象で勝手に名づけたあだ名を使って呼び続けたりしています。だけど職員を番号で呼ぶ頭の悪い某派遣会社みたいに不愉快な感触を受けないのは、ローガンをはじめとする登場人物の視線が優しいから。嫌な奴なんてギャングや犯人の一人を除けばほとんど登場しません。心ならずも人を傷つけたり殺したりしてしまう人たちすらも、人間くさくてどこか愛おしい。著者の登場人物に対する、人間に対する、暖かい視線を感じます。
誘拐された息子を捜して雨の中をさまよい歩くラムリー氏、失踪したリチャード・アースキンを取り巻く愛情、精神を病んだごみ拾いロードキル……。
鼻持ちならない人権派弁護士サンディ・モア・ファカースンにさえ見せ場が用意されています。本音なのか詭弁なのかはわからないけれど。
上司や同僚やライバルまでいちいちキャラが立っていて、なんだか家族みたいに身近に感じる。
すごく優しいんだけれど人情小説みたいに湿っぽくならないのがいい。
サイコな連続幼児殺人犯を追う捜査小説としてももちろん◎。
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