『UFO大通り』島田荘司(講談社)★★★★☆

「UFO大通り」★★★★★
 ――UFOを見たというおばあちゃんがいた。その隣家で不審死の男性遺体が発見された。会いに行ったところ、その男性の死後、UFOだけでなく宇宙人の戦争も目撃したという。宇宙服姿で光線銃を撃っていたというのだ。

 以前に『メフィスト』で読んだことがありました。再読してみると、やっぱり見せ方がうまいな、と思います。すべてを「UFO」でまとめ上げてしまうのは強引と言えば強引なんだけれど、それを要所要所にまぶしていく見せ方は、はやりうまい。

 「江ノ電で殴ったのです」「課長の下は次長かな」といった御手洗の人を食ったユーモアも健在。キャラクター小説として読むならこういうところが嬉しい。ミタライものや少年時代ものにはない魅力です。

 本書には二篇が収録されていますが、どちらかと言えば本篇の方が往年の御手洗ものっぽい。石岡も刑事も読者も、みんな御手洗に振り回される。「傘を折る女」の方は、とっぴな言動に振り回されるというよりは鋭い指摘に唖然とするという感じ。

 二篇ともネタが同じなのはわざとなのでしょうが、意図はわかりませんでした。
 

「傘を折る女」★★★★☆
 ――私がラジオの深夜放送を聞いていると、こんな話があった。雨の夜、傘を自動車に轢かせている女性を見た、というのだ。これは、結果を魔法のように突きつけるのではなく、御手洗が思考の過程を見せてくれた事件でもあった。

 これも『メフィスト』で読んだものの再読。こちらは「UFO大通り」と比べるとミステリー的にも御手洗のキャラクター的にも地味な作品です。ただし以前に書いたように、とんでもない女キャラが登場します。最恐ホラー。

 蓋然性の積み重ねによるこの手の「九マイルは遠すぎる」ものというのは、どこかで強引なというか発想の飛躍が必要で、そこが気になってしまうといえば気になってしまう。
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