「お化けオニ」コッパード、「緑魔術」ジャック・ヴァンス(『別冊奇想天外10 SFファンタジイ大全集』より)

 かなり豪華なラインナップなんだけど、とりあえずなかでも気になったのを二篇まず読んでみた。

「お化けオニ」A・E・コッパード/荒俣宏(Bogey Man,A. E. Coppard)★★★☆☆
 ――むかしむかし、シーラという名のかわいい娘が教母さまといっしょに暮らしていた。あるとき、教母さまが扁桃腺をはらして床についた。咽喉がふくらんできて首飾りがプッツリ切れてしまった。「これをいれる箱があったらねえ」糸屋に出かけたときふと見ると、窓敷居に黒い箱がおいてあった。

 教訓めいていながら教訓がすり抜けてしてしまい結局なんだかよくわからなくなってしまう。これがコッパードだ。ただし小人・悪魔なんてものがそのまんま出てくるところなどはコッパードにしてはめずらしい。荒俣宏の無意味に凝った文体は、クセが強い。
 

「緑魔術」ジャック・ヴァンス/米村秀雄訳(Green Magic,Jack Vance)★★★☆☆
 ――ハワード・フェアは大伯父の形見を物色している際に、ノートを見つけた。「紫および緑魔術の大系は、善でも悪でもなく、むしろ我々自身の基本世界に対する白および黒魔術の世界の関係と同様のものである」緑魔術の大系だって?

 ジャック・ヴァンスにしてはイマイチ。魔術が当たり前のように使えたり、ゴーレムを操って緑魔術の妖精世界に偵察に行かせたりするあたりの、何とも言いようのないズレ方こそさすがだけれど、肝心の緑魔術というのが単なる妖精の国だものなあ。しかも妖精の知恵を身につけてしまったがために、人間界では退屈し、妖精界では無知な人間という自分を恥じるというのもありきたり。
 

  『SFファンタジイ大全集』


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