『見えない世界の覗き方――文化としての怪異』佛教大学文学部編(法藏館)★★★★☆

 佛教大学で行われたシンポジウムの模様(講演と座談会)をまとめた、民俗学入門書。京極夏彦小松和彦、有田和臣、斎藤英喜、山極伸之、司会八木透

 もとが講演だからそんな専門的なものではないのだけれど、民俗学といえば柳田國男で止まってしまっている人間としては、たいへんためになる書籍だった。

 妖怪とは本来は「妖しいモノ」ではなく「怪しむコト」であったという京極氏、妖怪(怪異)における文化と時代のコードと「翻訳」について話す小松氏、名前・言葉・真実がいかに不確定なものかを語る有田氏、「いざなぎ流」専門家の斎藤氏、仏教と空想物語について山極氏。

 論文と違って会話がもとになっているから、各々の文体の違いがもろに出ていてそこがまず面白かった。小松氏や山極氏はわりと研究者や教授らしいごく普通の文体なんだけれど、有田氏はもっとくだけた普段の会話っぽいし、斎藤氏は本当に好きなあまり興奮しているのかわかりやすくしようとするあまりなのか何か説得力がない(^^;。

 小松氏の、「幽霊」に当たる語がない部族の話は面白かったなあ。世界は、この世は面白い、と心から思える。鬼の民話の話は、山極の仏典の話にも通ずるし、有田氏の話にも通じる。有田氏は科学の話もしていて、学問はすべてつながっているんだということが実感される。文学論でもあるし。

 まえがきで、人文系の学科を人文学科に統合したなんて書かれていたから、最近の流行りで文化系学科をつぶしただけだと思ってたんだけど、本書を読むかぎりでは、さまざまなジャンルを横断している印象を受けたので、この大学にかぎっては文字どおり統合なのかもしれない。複数学科を一つにまとめるということのメリットが感じられるシンポジウムだった。

 『見えない世界の覗き方』
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