帯に「あふれんばかりの豊かな語彙で訳された」とあったので、いかにも大衆小説らしい猥雑として雑然とした感じを期待していたのだが、見事に裏切られた。ところどころで小難しい漢字を使っているだけの翻訳であった。文章自体が下手だとかいうのではない。ただ、ディケンズの文章って、もっとひねこびた感じで訳した方が面白いんだよね。喩えるなら森村たまき訳のウッドハウスみたいな感じかなあ。
小池滋版の落語調はやりすぎといやあやりすぎで、幾多の訳があるうちの一つであるからこそ許される大技ではあるのだけれど、息の長い原文のリズムを活かしつつ不自然でない日本語にするというときに、この話し言葉で訳すというのは有効だと思う。
作品自体は名作です。なんというかもうこの変わりっぷりがよすぎ(^_^)。単純にいい話に終わらず、なんかすがすがしいのは、この大げさな変わりようのおかげだと思います。ディズニー映画ばりに、踊り歌いながら騒いでるイメージを受けました。ミュージカル的というか、ジングルベルの鳴り響くなか、腕を広げてくるくる周りながら「わあ! はーっ!」と叫んでいるのがまざまざと目に浮かびます。この第5節を読んで、ああ、クリスマス・ストーリーなんだな、というのをしみじみ実感しました。
並はずれた守銭奴で知られるスクルージは、クリスマス・イヴにかつての盟友で亡きマーリーの亡霊と対面する。マーリーの予言通り3人の精霊に導かれて、自らの辛い過去と対面し、クリスマスを祝う、貧しく心清らかな人々の姿を見せられる。そして最後に自分の未来を知ることに。(裏表紙あらすじより)
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