『ステーションの奥の奥』山口雅也(講談社ミステリーランド)★★★★☆

 山口雅也というと、創元推理文庫のおじさんマークをパンク・マークにあしらった文庫版『キッド・ピストルズの慢心』を思い出した(というかあれは山口雅也ではなく装丁の京極夏彦with Fiscoの仕業なんだろうけど)のだが、本書は〈ミステリーランド〉のコウモリ・マークを借用(?)。

 ミステリとしてはそれほど難しいものではなくって、一つの事実が明らかになった瞬間、すべての謎の真相が芋蔓式に立ち現れる。ある程度ミステリを読んでいるおおかたの大人の読者なら、その一つの事実が明らかになった時点で、探偵役の推理や関係者の告白を待つまでもなくほぼ真相を知ることができると思う。

 とはいえ山口氏ならではの架空世界ミステリとしてなかなかよくできている。現実と微妙に違う東京が描かれているのはなぜなのかと思っていたら、そうきたか。

 展開や謎で読ませるタイプの作品で、それ自体は別段問題ないんだけれど、せっかくの少年探偵風なのだから、キャラクターや冒険もののわくわく感で読ませるところにもうちょっと力を入れてくれていてもよかったかな、とは思いました。

 なーんか本分の最後に本を読むことを推奨したり、あとがきも優等生的だったりと、子どもを意識しすぎた感があるのが残念。あとがきなどはもっと“濃く”てもよかったのに。

 小学六年生の陽太は吸血鬼に憧れていること以外はごく普通の小学生。そんな陽太には一風変わった叔父がいる。名前は夜之介。陽太の家の屋根裏部屋に居候している物書きだ。そんな叔父と甥が、ある日テレビで「東京駅」が大改築されることを知り、夏休みの自由研究のテーマに選ぶことになる。取材のためさっそく「東京駅」に向かったふたりだったが、迷宮のような駅構内の霊安室で無残な死体を発見してしまう!さらに、その日の夜中、宿泊していた東京ステーション・ホテルの夜之介叔父の部屋で密室殺人事件が発生! しかも叔父の姿は消失していた。連続殺人事件なのだろうか? 夜之介叔父はいったい? 陽太は名探偵志望の級友留美花と、事件の謎を解くべく奔走する……。(函裏あらすじより)
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 『ステーションの奥の奥』
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