帯の惹句には「『作家論』論」とある。ははあ、なるほど本書の内容をぴたりと言い当てていると思います。
単なる作品・作家の再評価とかそういうんではなくって、当時の批評家たちの言説とブームを論じることで、その作家・作品の特徴自体がすっきり浮かび上がってくるんですよね。で、その特徴の何がブームを誘発させたのか、を考察した時代論でもあるし、〈特徴〉そのものを時代に目くらましされずに正しく考察しなおした作家論でもある。
ただの批評に対する批評ではともすれば揚げ足取りにすぎないんだけど、ちゃんとそこから見えてくるもの(時代と作家の本質)があるのです。
やはり村上春樹を論じたゲーム批評が圧巻かな。まあ正直、俵万智とか上野千鶴子とか林真理子とか立花隆とか村上龍とか田中康夫とかは格好の題材というか、本書のような作品を書こうとしている人にはうってつけの人たちという気もするので。この人たちの作家論・時代論なら、あるいは斎藤美奈子でなくても書けたかもしれない。(もちろん他の作家論も、陳腐かいうわけではなく、読みごたえはあります)。
でもね。村上春樹とその時代をここまで的確に論じてくれる人はなかなかいないと思う。